◆ 兼題 | ||
※ 兼題は二題、内一題を選び1句を投句して下さい。 | ||
2024年3月末日〆切 | 行く春・桜 | 兼題解説 |
2024年7月末日〆切 | 夏の月・夕顔 | 兼題解説 |
2024年9月末日〆切 | 秋・菊 | 兼題解説 |
鳩の会会報121(令和6年9月末締切分) |
秋・菊 |
【Advice】 今回の収穫は少なかった。よって、ボクの愛誦句を少し紹介して参考に供します。「秋」では「一書抜けば十書傾く書架の秋(上島としえ)」「郷愁もなくよく太り妻の秋(千本木溟子)」。なお、「秋」という季題は「立秋」「秋暑し」などとは別の季題だと思う。「菊」では「生きてをれば母は百歳菊日和(石田敬二)」「俗名に方なつかしく菊手向け(下妻貞之)」などが好きです。 句の評価はABC三つの符合で評価しています。その意味するところは以下の通りです。 A:省略が利いて、抒情あきらかな句 B:季感が備わるスケッチ C:焦点定まらぬつぶやき |
B 度忘れの漢字で止まる秋便り つゆ草 「秋便り」より更によい配合を探したが思い当たらない。諧謔を含む、この実感に共鳴する。 |
B 母の歩に合わせ行くみち秋の道 蛙星 「母の歩に合わせ行くみち」に詩の 予感あり。但し「秋の道」との融和弱し。 |
B 秋立てりキール運河の風の色 鹿鳴 「キール運河」は北海バルト海運河。その地を知らぬ者にも想像をたくましくさせる両岸の緑、空や水辺の青。仕事で世界をめぐった人の句である。 |
B 秋暑し子規等船出の三津浜へ 千年 「子規等船出の三津浜へ」に詩の予感あり。但し「秋暑し」との融和弱し。 |
B 若き日の衣を仕舞ふ秋日かな 貴美 「若き日の衣を仕舞ふ」に詩の予感。但し「秋日かな」との融和弱し。 |
B ただならぬ暑さでありぬ秋迎ふ ひろし 今夏が如実だが、「秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる」(敏行・古今・秋)という如き取り合わせ(あしらい)がほしい。 |
B 南都秋夕陽に映える大甍 ひぐらし 「夕陽に映える」という形容は凡庸。 |
B 風に向く浜木綿の葉よ能登の秋 eiko 「浜木綿」は彼岸花系だから、風上に向いて咲いているのだろうか。「能登」の必然性が出ると数倍よくなるのだが。 |
B 好きじやない夫を妻とて看取る秋 真美 意味は理解可能だが、この作者がこうした句を詠む意義がわからない。せいぜい連句の付句になる程度で、発句(俳句)の格はない。 |
B 百三歳帰還兵士の逝きし秋 和子 戦後七十九年。この人が招集された年齢、帰還した年齢を想像して目が潤む。詩や文学などとは無関係に、歴史として日記に刻まれる句。 |
B 美味しさう田も果樹園も秋の色 美雪 巧むところがなく、この作者らしい素直な実感句。黄金色の稲穂、林檎や梨や葡萄の色を想像して、長く俳句を作っているとこうはならないと思わせる大胆さにビックリ。 |
B 訪ねたき人の二三人秋親し 京子 「訪ねたき人」に情があふれているから、「親し」を捨てて〈目に飛び込んでくる〉季題にしたい。 |
C 空高し白い病室秋は来ぬ エール 句の「空高し」は「天高し(秋高)」と同意で秋季。よって「秋は来ぬ」と重複。「白い病室」も強烈な描写で、全体の刈り込みが必要。御快癒を喜び、このたびはそれでよしとしましょう。 |
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B 菊咲かす不治の病を抱へつつ 海星 「不治の病を抱へつつ」に詩の予感あり。但し「菊咲かす」との融和弱し。 |
B 一遍上人歩みし坂の野菊かな 梨花 この上人ゆかりの「野菊」にまつわる、特別な史実があるのだろうが、調べてもたどり着けなかった。 |
B 小菊咲く枝折戸を押し安否問ふ 美知子 見舞いの句であろう。今夏の暑さの後だから、小菊のさわやかさは特別に違いない。 |
C 折菊や涙化粧の座敷隅 窓花 「折菊」はオレギクかオリギクか。いずれにしろ、閉じられた(意味ありげだが、読者に届かない)言葉。よって開いて(こじあけて、意味がわかるように)使うことが肝要。平明にする訓練を望む。 |
C せんせいの白黄大菊待合室 由美 「待合室」とあるからには病院と思われるが、平仮名「せんせい」や「菊」の意図がわからない。表現の刈り込みが必要とみた。 |
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