【聖五月】五月を聖母マリアを讃える月とするカトリック信仰による題。 |
◎ただ雨を見てゐる茶房聖五月 |
堀口 希望 |
陰影に富む景。 |
○娘と和解弾む会食聖五月 |
礒部 和子 |
「弾む」はいらない。 |
○スカイツリー空へぐんぐん聖五月 |
ひぐらし |
「ぐんぐん」で季題と融合。 |
○馬に乗り背を正す子や聖五月 |
梅田ひろし |
「背を正す子や」で季題と融合。 |
○水底の木洩れ日にゆれ聖五月 |
松村 實 |
「木漏れ日に」の「に」絶妙。 |
○シャボン玉ななつ七色聖五月 |
谷 美雪 |
「七色」で句になった。 |
○抱かるる子はみな天使聖五月 |
安居 正浩 |
美しき取合せ。 |
母想ひそつと花置く聖五月 |
高橋 剛 |
初心の素直さを称える。 |
聖五月ルリジシャの花青い花 |
谷地元瑛子 |
ルリジシャの説明に終わる。 |
田に映る追憶の山聖五月 |
小出 富子 |
作者の居場所はどこか。 |
水田は五月の空を独り占め |
中村美智子 |
残念、水田の句になった。 |
聖五月伝道師掲示かかげ立つ |
櫻木 とみ |
景情難解。 |
空は澄み希望に満ちし聖五月 |
天野喜代子 |
季題との映発弱し。 |
直子さん宇宙絶賛聖五月 |
天野 さら |
季題との映発弱し。 |
大空に小鳩巣立ちし聖五月 |
五十嵐信代 |
季題との映発弱し。 |
友出来て一年生の聖五月 |
金井 巧 |
季題との映発弱し。 |
さよならと遺句集の声聖五月 |
根本 文子 |
季題との映発弱し。 |
生き切つてたうたう白寿聖五月 |
水野千寿子 |
季題との映発弱し。 |
藍染の藍の深みや聖五月 |
つゆ草 |
季題との映発弱し。 |
うつむいてゆく幼子の聖五月 |
大江 月子 |
季題との映発弱し。 |
聖五月ロボットの弾く花の歌 |
吉田いろは |
季題との映発弱し。 |
朝の庭かぐはしきかな聖五月 |
西野 由美 |
季題との映発弱し。 |
乾坤の光を曳きて聖五月 |
竹内 林書 |
季題との映発弱し。 |
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【セル】セルジ(serge)。単衣着物・袴用の毛織物。肌ざわりよく初夏に持ちいる。 |
◎たたかれし記憶なき父セルコート |
小出 富子 |
景情整う。 |
◎手鏡にセルの襟足うつしをり |
松村 實 |
景情整う。 |
◎スカートに仕立て直すや母のセル |
吉田いろは |
景情整う。 |
◎セルを着て祖母の匂ひのよみがへる |
安居 正浩 |
景情整う。 |
◎母語るセルの似合ひし祖父のこと |
つゆ草 |
景情整う。 |
◎セルを着て遺影の母の老ゆるなく |
堀口 希望 |
景情整う。 |
◎セルを着て剣舞舞ひたる父なりし |
天野 さら |
景情整う。 |
◎ふれて見る父の形見のセルの服 |
谷 美雪 |
景情整う。 |
◎三越に祖母と求めしセルを干す |
大江 月子 |
景情整う。 |
◎父の着しままなりセルに手を付けず |
梅田ひろし |
景情整う。 |
○セルを着し白寿の母は背筋伸び |
礒部 和子 |
「セル着れば」「セルを着て」。 |
捨てかねしセルの衣の色薄し |
五十嵐信代 |
「色薄し」再考。 |
父の影単衣のセルの裾さばき |
水野千寿子 |
「父の影」再考。 |
セルを着て母の青春父を待つ |
米田 主美 |
「父を待つ」再考。 |
復員の父の確かなセルの紺 |
根本 文子 |
「確かな」で輪郭がぼけた。 |
川風に櫓太鼓やセルの人 |
ひぐらし |
「櫓太鼓」の句になった。 |
妻の五指形見のセルを繕ひぬ |
金井 巧 |
「五指」がうがち過ぎ。 |
風と共にまとへばセルの単衣かな |
谷地元瑛子 |
「まとへば」で不明瞭になった。 |
セルを着た父と縁日歩いた日 |
西野 由美 |
残念、縁日の句になった。 |
セルの衿ほのかに樟脳匂ひけり |
中村美智子 |
残念、説明になった。 |
寒暖の激しき風土セルはよし |
天野喜代子 |
残念、説明になった。 |
キルト地を里に探して亡母のセル |
櫻木 とみ |
季題との映発弱し。 |
季節はずれものをセルに出して売る |
竹内 林書 |
季題再考。 |
田に水を蛙の声にセル恋し |
高橋 剛 |
季題再考。 |
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【時計草】ブラジル原産の観賞用多年草。
名は花が時計の文字盤に似ることによる。新題にて難解。 |
◎時計草押絵のやうに咲きにけり |
五十嵐信代 |
「押絵」はひとつの発見。 |
怪獣が地球にゐた日時計草 |
西野 由美 |
題意不確かにて、取合せ難し。 |
玄関でたじろぎました時計草 |
谷地元瑛子 |
題意不確かにて、取合せ難し。 |
森のおくの時計草が群生し |
竹内 林書 |
題意不確かにて、取合せ難し。 |
休みの日安楽椅子に時計草 |
高橋 剛 |
題意不確かにて、取合せ難し。 |
職ひきて時計は止まる人生よ |
天野喜代子 |
題意不確かにて、取合せ難し。 |
人住まぬ家となりけり時計草 |
松村 實 |
題意不確かにて、取合せ難し。 |
過ぎし日を語る木椅子や時計草 |
堀口 希望 |
題意不確かにて、取合せ難し。 |
日が沈みスイッチオフに時計草 |
天野 さら |
題意不確かにて、取合せ難し。 |
今日もまた来るか疲れや時計草 |
ひぐらし |
題意不確かにて、取合せ難し。 |
登校の子を見守りぬ時計草 |
安居 正浩 |
題意不確かにて、取合せ難し。 |
つる重し玩具のやうな時計草 |
小出 富子 |
題意不確かにて、取合せ難し。 |
なんびとの生れ変りか時計草 |
吉田いろは |
題意不確かにて、取合せ難し。 |
日の高き路地に迷ひて時計草 |
梅田ひろし |
題意不確かにて、取合せ難し。 |
仕掛けもつ時計草に目を背け |
米田 主美 |
題意不確かにて、取合せ難し。 |
時計草を眺めて待つや来ぬ友を |
中村美智子 |
題意不確かにて、取合せ難し。 |
時計草路面電車の案内図 |
金井 巧 |
題意不確かにて、取合せ難し。 |
時計草健やかな日の捩子を巻く |
根本 文子 |
題意不確かにて、取合せ難し。 |
時計草もうじき末子の誕生日 |
水野千寿子 |
題意不確かにて、取合せ難し。 |
時計草見つけし家は今さら地 |
つゆ草 |
題意不確かにて、取合せ難し。 |
時計草寝坊助我の守り神 |
谷 美雪 |
題意不確かにて、取合せ難し。 |
時計草見ぬふりをすること多くあり |
大江 月子 |
題意不確かにて、取合せ難し。 |
花時計止めたる花を植え替える |
礒部 和子 |
季題違い。 |
御陵の森日時計の石光る |
櫻木 とみ |
季題違い。 |
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海紅切絵図 |
而してヨハネてふ名や聖五月 |
海紅 |
少女期のセルの赤きや回顧展 |
同 |
移民史の流人の如し時計草 |
同 |
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