わくわく題詠鳩の会会報69   ホーム
鳩ノ会会報69(平成27年9月末締切分)
兼題 十三夜・栗


◎長男に栗が多めの栗ごはん          酢豚
【評】事実を指摘するだけで情を醸し出すところ非凡。

○富太郎称へし栗の毬笑ふ           千年
【評】牧野富太郎ゆかり栗の前書をつけたい。

○いが栗のこけつまろびつ女坂           ひぐらし
【評】男坂と女坂のイメージの違いがポイントになる句。とすれば、「こけつまろびつ」がゆるやかな女坂に似合うかどうか、要検討。

○落栗の雨に濡れをり硬きまま           靖子
【評】「落栗の雨に濡れをり」だけで十分に詩。「硬きまま」という思い入れを捨てられるとよいのだが。

○山栗のうまし憶良も賞でしとふ           憲
【評】「とふ」が無駄。「憶良が称えた山栗を食う」とだけをいう方が上等。

○ともすると災うけし地や栗届く           山茶花
【評】「ともすると災うけし地」がまわりくどく感じられる。まず「○○から栗が届いた」とだ言ってみよう。そののち、十七音に収める工夫をしたい。

○栗の菓子入荷予定日貼る老舗           直久
【評】「栗菓子の入荷予定日貼り出さる」でよいではないか。「老舗」かどうかは読者の読みに任せて捨てよう。


◎知床の風の痛さよ十三夜           和子
【評】申し分なき句。この作者の代表句になるだろう。

◎浮舟の巻を繙く十三夜           啓子
【評】文句なく美しい句。俳句は滑稽とか、「浮舟の巻」がどんな内容かなどと野暮なことをいうなかれ。

○衷心に逝きし祖母あり十三夜           むらさき
【評】「衷心」は重たい言葉。俳句の言葉は軽く、とことん軽く。

○十三夜憂ひはあれど饒舌に           瑛子
【評】「憂ひはあれど」が曖昧で読者に届かず。

○捨てきれぬゆめ捨てぬ筆十三夜           月子
【評】こだわりの「捨てきれぬゆめ捨てぬ筆」という表現がもたつく感じ。


○しがらみも柔らかになり十三夜           ムーミン
【評】多少作者を知る者にとって「しがらみも柔らかになり」に隠す思いは想像出来るが、さらにシンプルな表現へ努力が求められる。

○十三夜波に引かるるやう歩み           ひろし
【評】「波に引かるるやう」という比喩難解にて、十三夜の効果が表面に出てこない。

○婚家もどる道はせつなく十三夜           由美
【評】字余りでよいから、「婚家」と「もどる」の中に助詞を入れよう。意味がわかることがまず大事。

○十三夜すこし欠けたる懐かしき          貴美
【評】「十三夜すこし欠けたる」だけで詩。さて残りの五文字で何を描こうか。


○十三夜座す新藁のささ湿り           泰
【評】「十三夜」と「新藁」は季重ね。それで感動の焦点がぼけてしまった。

 
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