【野分・秋台風】野分のまたの日こそ、いみじうあはれにをかしけれ。立蔀・透垣などの乱れたるに前栽どもいと苦しげなり(枕草子)。 |
◎野分あと姿よき枝拾ひをり |
中村 緑 |
懐かしき景情。 |
◎焚き付けを浜辺に拾ふ野分あと |
吉田いろは |
懐かしき景情。 |
◎目にかかる髪をはらひて野分行く |
小出 富子 |
行かねばならぬことあるゆえ。 |
◎雲水の丸き眼鏡や野分雲 |
ひぐらし |
禅僧雲に異ならず。 |
◎馬小屋の灯ともり野分雲 |
松村 實 |
馬を不安にさせぬように。 |
○端然と作務にしたがふ野分かな |
堀口 希望 |
「端然と」とは美しき。 |
○里山の下生え崩し野分去る |
中村美智子 |
「下萌え崩し」。 |
○野分雲公園墓地の閉門す |
谷地元瑛子 |
一転して墓地は孤独に。 |
○濁流に阿修羅の棲みし野分け跡 |
木村千恵子 |
野分即ち阿修羅とみた。 |
○プランター二つ転がる野分晴れ |
根本 文子 |
誰にも心当たりあり。 |
○阿夫利嶺の尖り際立つ野分晴れ |
渡辺 壽子 |
誰にも心当たりあり。 |
○野分あと空に明るき日の流れ |
梅田ひろし |
誰にも心当たりあり。 |
○吹き溜る木の葉匂ふや野分あと |
清水さち子 |
誰にも心当たりあり。 |
○野分あと野球部の声ひびきくる |
西野 由美 |
誰にも心当たりあり。 |
野分けして大杉折れる音ひゞく |
礒部 和子 |
誰にも心当たりあり。 |
夕野分格子稲田をなでて去る |
椎名美知子 |
誰にも心当たりあり。 |
野分して干せるシーツを吹き返し |
三島 菊枝 |
誰にも心当たりあり。 |
雲一天べうべう奔りをる野分 |
柴田 憲 |
誰にも心当たりあり。 |
武蔵野に木の実を落す野分かな |
天野喜代子 |
誰にも心当たりあり。 |
さよならも愛も唐突野分かな |
宮 沢子 |
技量が露出せり。 |
一日を裏返したる野分かな |
安居 正浩 |
技量が露出せり。 |
野分月雲したがへて遊びたり |
大江 月子 |
技量が露出せり。 |
独り身に日はさんさんと野分けあと |
五十嵐信代 |
よき主題だが要推敲。 |
列島を敬遠されし野分殿 |
天野 さら |
主題曖昧なり。 |
野分立ち片耳ふさぎケイタイす |
千葉ちちろ |
主題曖昧なり。 |
野分晴れ心の葛藤乗り越えて |
三木 喜美 |
主題曖昧なり。 |
行き合ひの空きつぱりと野分後 |
水野千寿子 |
主題曖昧なり。 |
窓野分キルトの糸の切れがちに |
櫻木 とみ |
主題曖昧なり。 |
減反の田畑の荒れや野分あと |
金井 巧 |
主題曖昧なり。 |
野分去る大丈夫ヨと母の声 |
尾崎喜美子 |
素直なれども。 |
鳴く鳥の野分去つたと我に告げ |
尾崎 弘三 |
素直なれども。 |
野分晴源氏に逢へそな枳殻邸 |
谷 美雪 |
素直なれども。 |
百日紅野分に舞ひて地面染め |
平岡 佳子 |
素直なれども。 |
盟友が野分のごとく逝きにけり |
有村 南人 |
素直なれども。 |
野分だつ都心屋上田んぼかな |
市川 千年 |
場所は面白いが。 |
野分後に今朝は2倍のウォーキング |
岡田 光生 |
二倍のわけは何? |
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【鳥兜(頭・甲)】中国原産の薬用、切り花用の濃紫の花。有毒植物。形状能の冠物「鳥兜」に似る。 |
◎若き日の毒ある言葉鳥頭 |
金井 巧 |
効き目怪しき毒であったが。 |
◎紫は疑ひのいろ鳥頭 |
安居 正浩 |
それは誘惑の色でもあった。 |
◎とりかぶと毒はしみじみ濃紫 |
根本 文子 |
「しみじみ」で詩になった。 |
◎山親爺射止めた花よ鳥頭 |
礒部 和子 |
ヒグマも鳥頭好きとは…。 |
○鳥頭しつかと居場所をもつ私 |
清水さち子 |
取り合わせに存在感あり。 |
○純情をとほす闘ひ鳥頭 |
吉田いろは |
上五・中七抽象的なれども。 |
○ふるさとの罪持ち帰る鳥兜 |
宮 沢子 |
上五・中七抽象的なれども |
○廃鉱の山にさみしく鳥兜 |
千葉ちちろ |
「さみしく」不要なり。 |
○朝富士の藍映しけり鳥兜 |
堀口 希望 |
よく似合うなり。 |
○熊避けの鈴音忙し鳥頭 |
ひぐらし |
よく似合うなり。 |
○稜線にはや日のいりて鳥兜 |
松村 實 |
よく似合うなり。 |
秘するもの持ちて奇麗な鳥頭 |
小出 富子 |
素直なれども。 |
近づいて言はれて分かる鳥頭 |
岡田 光生 |
素直なれども。 |
紫の妖しき色や鳥頭の花 |
尾崎 弘三 |
素直なれども。 |
紫の冠不気味鳥かぶと |
平岡 佳子 |
素直なれども。 |
魔性ひめる鮮やかな藍鳥頭 |
天野 さら |
素直なれども。 |
山あひの夕闇蒼し鳥頭 |
有村 南人 |
素直なれども。 |
富士裾野紫の花鳥頭 |
天野喜代子 |
素直なれども。 |
毒あれど紫清しかぶとばな |
三島 菊枝 |
素直なれども。 |
持ち帰りたくなる惑ひ鳥頭 |
市川 千年 |
素直なれども。 |
トリカブト紫紺の花の清くあり |
椎名美知子 |
素直なれども。 |
鳥頭ときには狂つてみたきかな |
梅田ひろし |
素直なれども。 |
鳥頭いよいよ幽き紫紺かな |
柴田 憲 |
素直なれども。 |
木漏れ日に紫怪し鳥頭 |
三木 喜美 |
素直なれども。 |
熊狩るといふには清し鳥頭のはな |
尾崎喜美子 |
主題曖昧なり。 |
迷ひから覚めてありがと鳥頭 |
谷 美雪 |
主題曖昧なり。 |
山の宿散歩のゲタの鳥頭 |
水野千寿子 |
主題曖昧なり。 |
鳥兜黒装束にて烏どの |
大江 月子 |
主題曖昧なり。 |
鳥頭はづして鷹匠鷹の目に |
櫻木 とみ |
主題曖昧なり。 |
夫往きぬ単身赴任とりかぶと |
西野 由美 |
主題曖昧なり。 |
鳥頭雨の粒ふと紫に |
中村 緑 |
主題曖昧なり。 |
霧の山紫うすき鳥かぶと |
五十嵐信代 |
主題曖昧なり。 |
とりかぶと初書きなれば愛憎を |
谷地元瑛子 |
主題曖昧なり。 |
鶏兜紫紺極めし峠道 |
木村千恵子 |
主題曖昧なり。 |
鳥兜怨みの色を今もなほ |
渡辺 壽子 |
主題曖昧なり。 |
狂言の附子で名を売る鳥頭 |
中村美智子 |
狂言「附子」なしでは難解。 |
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【敬老の日・老人の日・年寄の日】九月十五日(昭和四十一年開始の国民の祝日)。平成十五年からは九月第三月曜日。 |
◎家族みな敬老の日に集まりし |
尾崎 弘三 |
これ正真正銘の名句なり。 |
◎賑やかに小豆炊きけり敬老日 |
五十嵐信代 |
「炊く声」。 |
◎新しきパジャマの母や敬老の日 |
尾崎喜美子 |
「敬老日」。 |
◎姑逝きて敬老の日がらんだう |
椎名美知子 |
「敬老の日の」。 |
◎みどり子の眼の澄みて敬老日 |
松村 實 |
自画像ならん。 |
◎朝湯好きペンキ絵も好き敬老日 |
堀口 希望 |
自画像ならん。 |
○孫の背追つかけ暮れる敬老日 |
中村美智子 |
自画像ならん。 |
○幾霜や老人の日もあるが儘 |
柴田 憲 |
自画像ならん。 |
○ベレーでも被つて行くか敬老日 |
梅田ひろし |
自画像ならん。 |
○敬老の日の賑はひにとけ込めず |
金井 巧 |
自画像ならん。 |
○敬老日知らんぷりしてやり過す |
水野千寿子 |
自画像ならん。 |
○母逝きて敬老の日が見つからず |
根本 文子 |
実情ならん。 |
○黒髪の後ろめたさや敬老日 |
宮 沢子 |
実情ならん。 |
○母生きてゐるだけで希望敬老日 |
有村 南人 |
実情ならん。 |
○敬老の日市よりルーペが届きけり |
礒部 和子 |
哀れと滑稽とあり。 |
○敬老と浮かれず語れ戦争を |
平岡 佳子 |
哀れと滑稽とあり。 |
○年寄りが席譲り合ふ敬老日 |
ひぐらし |
哀れと滑稽とあり。 |
○敬老といふも翁の無頓着 |
清水さち子 |
哀れと滑稽とあり。 |
○二千万越えし老人敬老の日 |
天野喜代子 |
哀れと滑稽とあり。 |
○敬老日我も名簿に名を連ね |
三島 菊枝 |
哀れと滑稽とあり。 |
○祝別のひたい拭き合い敬老日 |
谷地元瑛子 |
敬老ミサにおける祝福のさま。 |
○敬老日父母に供へんお赤飯 |
木村千恵子 |
「供へる」。 |
○敬老を見舞ふ娘とウォーキング |
岡田 光生 |
「敬老の客の」。 |
まだ先と思ひ続けん敬老の日 |
天野 さら |
素直なれども。 |
支えるも支えらるるも敬老の日 |
三木 喜美 |
素直なれども。 |
今日ありておのれに讃す敬老日 |
大江 月子 |
「讃す」再考。 |
敬老日指定し小包わびしさも |
櫻木 とみ |
哀し。 |
飯こぼし愚痴こぼされる敬老日 |
千葉ちちろ |
汚し。 |
江戸小紋紗の羽織召し敬老日 |
西野 由美 |
主題曖昧なり。 |
門毎に芙蓉の花や敬老日 |
吉田いろは |
主題曖昧なり。 |
敬老日孫の写真のあかんべい |
安居 正浩 |
主題曖昧なり。 |
そつと来て敬老の日に手鏡を |
小出 富子 |
主題曖昧なり。 |
敬老の日ひよつとこみたいな絵が届く |
谷 美雪 |
主題曖昧なり。 |
敬老の日や仙人の日もあらむ |
市川 千年 |
主題曖昧なり。 |
敬老日杖つく母のやゝ早し |
中村 緑 |
主題曖昧なり。 |
敬老日話それぞれ父と母 |
渡辺 壽子 |
主題曖昧なり。 |
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海紅切絵図 |
電線に野分の音のとりすがる |
海 紅 |
鳥甲長女ばかりを厳しうす |
同 |
敬老の日のなき歳時記を愛す |
同 |
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