わくわく題詠鳩の会会報88   ホーム
鳩ノ会会報88(平成30年11月末締切分)
兼題 水鳥・師走(極月)

【Advice】季題とそれ以外の部分を、混じり合わない「水と油」と考えてみてください。「水と油」をよく振れば、少しの間は混じり合ったように見えます。俳句はそのような状態です。実際に見たからといって、その季題を添えるだけでは俳句にならない。よく振るという努力をしてみてください。

◎水鳥の一羽に広き水面かな     鹿鳴
→平明でいて余韻深し。孤影という言葉を想起した。

◎敵と言ふ敵なくしづか鴨の陣     ひろし
→鴨の陣とは水上に群れをなす様子をいうが、比較的新しい言い方で秀句も少ない。それはもともと好戦的な鳥ではないからであろう。敵は人間(鴨打)くらいか。本来この句のように「しづか」なのである。

◎水鳥の進むはスクリューあるごとく     海星
→素直でよいが、「は」はいらない。

◎水鳥の親子くつつく用水路     彩也香
→鴨ではなさそうだね。「くつつく」があったかそうで、「用水路」は新鮮。

○水鳥の航跡波に上下して     直久
→描写は成立。しかし、意図がまだ伝わらない。

○浮寝鳥叶へられずに来た夢も     悠児
→表現上は「浮寝鳥」で切れている。よって、翼に首を押し込んで眠る姿に、作者の叶わなかった夢を重ねたのであろう。やや重いが品はよい。

○水鳥の恋深まりし湖上かな     むらさき
→鴨など、特定の「水鳥」にすれば更に面白い句になる。

○水鳥や大空を翔る翼秘め     ゆき
→「大空を翔る」は翼の説明なので捨ててみよう。捨てたあと、さてどうするか。


○水鳥のちよと潜りては見合ふ二羽     香粒
→「二羽」はない方が余韻あり。

△あけぼのや水鳥羽振く滴散れり     由美
→「あけぼのや」と詠嘆にするが、水鳥の羽振くのはこの時間帯に限らないから、上五と中七・下五の関係がわからない。また「滴散れり」は六拍。下五は字余りにしないように。

△水鳥と鉄橋くぐる同心円     憲
→「水鳥と」の「と」がわからなかった。鴨が同心円を動かして移動する様子は美しい。

◎歩ければ歩ければよし父師走     千年
→名句とか、秀句とかいう言葉で説明できない立派な句。天から授かった句とでも言おうか。この作者の代表句、いや師走の代表句とさえいえる。


◎リサイクル品に人たかりをり師走市     ムーミン
→安定した表現力を感じます。師走をよくとらえています。

◎極月と落款に書し筆納め     智子
→作者は書家であることを踏まえると、実によくわかる句。さて、如何なる名品が完成したか。

○極月や母にせがみし深紅色     瑛子
→「極月」と「深紅色」を結べばサンタさんが思い浮かぶが、誤解かもしれない。前書が必要な句。


○極月やまだ手帳には余白あり     真美
→あたりまえのような気がするが表現は整っている。

○折込の目玉に迷ふ師走かな     美雪
→「目玉商品」を「目玉」と略して理解できないことはないが、読者にために、やはり「目玉商品」のまま工夫するほうがよい。

○喪のハガキ思ひ出添へて出す師走     和子
→素直な点を称えたい。

〇師走来て師の墓参る弟子五人     直子
→師走を扇の要にするために、「師走かな」「師走来る」などとして下五に移動することを学ぼう。

△ずんどうのスープふつふつ春待月     ひぐらし
→「ずんどう」難解。名店か何かの名前か。とすれば前書が不可欠。下五の字余りは音楽性を損なうので「十二月」にするか、「春待月」のままなら上五か中七に。

△杖あそぶ街はや師走静かなり     山茶花
→「静か」は師走の本意(イメージ)から逸れるゆえ再考。

△葱の横つくし芽生えし師走かな     静枝
→「葱」「師走」は冬、土筆の芽は春。実際は師走に春が兆していることはあるよね。だから、季重ねでもよいのだが、そのためには修練が必要だね。


 
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