わくわく題詠鳩の会会報 32   ホーム
鳩ノ会会報32
兼題 摂待・流れ星・衣被
歌枕見てまゐれ
(源顕兼・古事談)
【摂待(接待)】陰暦七月残暑さなかのこと。仏教で、寺詣でに限らず、ひろく飲食物がふるまわれた。
◎遠回りして一服の門茶かな 織田 嘉子 「遠回り」「一服」に情深し。
○亡き人の声にかさなる門茶かな 松村  實 面影も生きる力に。
○亡き人の話題も出でて門茶汲む 三木 喜美 右に同じ余情。
○心地よき風の摂待川堤 根本 文子 季題を自然の中に置き直した。
○いとけなき子より摂待たまはりし 堀口 希望 こうして世代を受け継がれる。
○摂待や楡の木陰にガイド嬢 吉田いろは 季題を少し逸らした手柄。
○摂待の寺に届きし童唄 中村  緑 季題を少し逸らした手柄。
○巡礼に汗ふきタオルお摂待 天野喜代子 中七素直でよろし。
○山こえし身に摂待の番茶しむ 西野 由美 素直でよろし。
○お摂待なされる方の笑顔かな 尾崎喜美子 「笑顔」がよろし。
○胸はだけ摂待の茶をいただきぬ 梅田ひろし 初五の絵柄がやや漠然。
○里山の道うねうねと門茶かな 植田好太郎 「里山」で情がでた。
○摂待の萩茶ゆつくりいただきぬ 堀 眞智子 「ゆつくり」に情。
○摂待の面をほどきて夕の風 清水さち子 「ほどきて」と凝らずとも。
○やはらぎの訛なつかし門茶かな 青柳 光江 「なつかし」は不要。
○摂待の湯茶に心のこもりゐる 天野 さら 「心のこもり」を具象に。
 玉砂利の摂待の寺雨宿り 水野千寿子 玉砂利と雨を結びたい。
 肩の荷を木陰に置きぬ門茶かな 安居 正浩 「ぬ」でも切れてしまう。
 ご婦人を連れた摂待紙一重 岡田 光生 「紙一重」難解。
 摂待や受く人行く人皆静か 大江 月子 もう少し姿を明らかに。
 行きずりのお寺で摂待麦茶嬉し 平岡 佳子 「お寺で」は不要。
 ありがたし老いの遍路に門茶かな 礒部 和子 「ありがたき」。
 摂待も行の作法で若き僧 櫻木 とみ 「行の作法」は不要。
 遍路地は心で感謝お摂待 尾崎 弘三 中七が難解。
 寺前の大釜をたいて摂待かな 竹内 林書 「寺前に大釜を焚くお摂待」
 寺奉仕古漬も並ぶ昼摂待 五十嵐信代 「も」「昼」を再考したい。
 婆さまの包む稲荷や御摂待 市川 千年 「婆さま」が利いていない。
 摂待の香の物受ける我が掌 椎名美知子 「掌」で焦点が逸れた。
 絵手紙にやかん光りてご摂待 小出 富子 絵のことにして題意が逸れた。
 声高し山門の奥の緋毛氈 米田 主美 苦吟の末に季題入れ忘れか。
 老夫婦ねじり鉢巻門茶かな 谷  美雪 上五、中七どちらかでよい。
 園児らの摂待茶会菊日和 園田 靖子 園児等が施しに出ているのか。
【流れ星】流星。秋季とするのは澄んだ空気でよく見えるから。・夜這い星として『枕草子』にでるが、季題となるのは近代になってから。
◎合宿の最後の夜や流れ星 西野 由美 至福の十七音なり。
◎旧友の便りと見えし流れ星 尾崎 弘三 今は亡き友なのであろう。
◎星飛んで何かが胸に突きささる 堀口 希望 「何かが」に微妙な味。
◎流星や二十歳のころの願ひ事 吉田いろは 諦めしこと多き人の世。
○母島にむかひて星の流れけり 松村  實 「母島」にどんな本意が…。
○母の手が父を恋ひをり流れ星 根本 文子 亡き父と、病床の母と…。
○満々と湛へししじま星流る 水野千寿子 やや形容に誇張が過ぎるか。
○アユタヤへ縁の糸か流れ星 礒部 和子 タイの知識を必要とす。
○矢のようにぴかつと消える流れ星 竹内 林書 素直でよろし。
○宇宙にも諍いありや星流る 梅田ひろし 勿論人の世の哀しみが前提。
○邂逅を待ちて見上げる流れ星 堀 眞智子 「邂逅」はおおげさなり。
○高原で大の字に流れ星浴びて 有村 南人 「大の字」は人か流れ星か。
○旅の終わりイスタンブール星流る 植田好太郎 トルコの知識を必要とす。
○星流るゲルの一夜は音もなし 五十嵐信代 モンゴルの知識を必要とす。
○去る人の背越しに消えし流れ星 櫻木 とみ ドラマのワンシーンに似て。
○地にネオン天壌無窮に流れ星 大江 月子 天壌無窮は永遠の意だが…。
○流星に見たり宇宙の落ちこぼれ 安居 正浩 諧謔を好むなり、この作者。
○流星やその一瞬に願ふ事 岡田 光生 取り合わせの絵がほしい。
○流れ星見つけて二秒のロマンかな 三木 喜美 「二秒」検証を要す。
 立山の流星毛布くるまりて 小出 富子 事実でも立山不安定。
 富士山頂流星群は絶間なく 天野喜代子 事実でも富士山不安定。
 一直線流星不気味幼き日 平岡 佳子 「幼き日」は不要。
 二人して願ひは内緒流れ星 尾崎喜美子 おそらく同じ願いだが…。
 一筋の流星こもる眼かな 市川 千年 「こもる」が難解。
 流星に一瞬なくす全心 天野 さら 「全心」という語熟さず。
 流星や時にほほえむ母のゐて 中村  緑 母の居場所わかりにくし。
 流星やコンビニを出て山の端に 椎名美知子 「山の端」捨てる方がよし。
 流れ星願ひも忘れ指を差す 青柳 光江 「指を差す」捨てれば名句。
 流星がスーッと消ゆる山の端に 織田 嘉子 素直すぎても困る。
 流るる星友は無念を喰みしめて 米田 主美 なにゆえ無念なのか。
 懸命に生きつつ寂し流れ星 清水さち子 「懸命に生きるは淋し」。
 会津路や宝の山に流れ星 谷  美雪 「宝の山」とは何か。
 辛きことあるも飛ばしぬ流れ星 園 田靖子 「辛きこと吹き飛ばしたる」
【衣被】皮付きのまま茹でた里芋。芋名月の芋はこれ。近代に定着した季題。
◎衣被貴人のごとく月に座す 櫻木 とみ 季語二つなどと難ずる勿れ。
◎衣被土産の酒を傍に 礒部 和子 おそらく二人酒ならん。
◎止まり木に雨音を聞く衣被 安居 正浩 客は彼一人ならん。
◎衣被届きし礼を絵手紙に 三木 喜美 この心優し。
◎産声の今日より満ちて衣被 根本 文子 おそらく月も出ているか。
○墨染めの袖を払ひて衣被 松村  實 人物に具象性を加味したい。
○衣被平らげてより酔ひ伏して 水野千寿子 愛すべき男よ。
○衣被実家に集ふ叔父と叔母 岡田 光生 「集ふ」理由を織り込みたい。
○手弱女の白き指先衣被 植田好太郎 全体に古き景色なれど…。
○衣被つるりと嬰の尻憶ふ 堀口 希望 実感か。「憶」にせずとも。
○衣かつぎ「おう」と笑ひて喰ひたまふ 大江 月子 敬語とする理由届かず。
○衣被り皮にも味がありにけり 竹内 林書 素直なり。
○衣被無骨なれども愛らしき 天野 さら 「無骨」「愛らし」に具象を。
○衣被卓の話題は里の月 椎名美知子 素直なり。里は郷里か。
○衣被夫収穫し調理もす 堀 眞智子 「収穫も調理も夫衣かつぎ」。
○衣被味噌で一献いかがです 有村 南人 この誘いに乗りたや。
○衣被ふるさと自慢の味噌そへて 青柳 光江 すぐいただきにまいります。
○子も妻も我も好みの衣被 梅田ひろし 仕合わせな衣かつぎなり。
○芋に似し子どもばかりよ衣被 吉田いろは 微笑むべし、愛すべし。
 祖母盛りし月見の縁側衣被 平岡 佳子 思い出の報告に終わった。
 昭和つ子おやつはいつも衣被 天野喜代子 「いつも」で嘘のなった。
 名にし負はば並べてみよう衣被 尾崎喜美子 「名にし負はば」の効果怪し。
 白色に香りをつけて衣被 小出 富子 説明に終わった。
 親芋に別れを告げし衣被 尾崎 弘三 説明に終わった。
 衣被好きと言ふ子や驚かる 西野 由美 「驚かる」が難解。
 なかなかにつるりといかぬ衣被 五十嵐信代 説明に終わった。
 新橋に七時の汽笛衣被 市川 千年 ガード下、縄のれんなど欲し。
 指先でするりと口に衣被 織田 嘉子 素直すぎても物足りなし。
 衣被湯気立つ向かうに祖母の笑み 米田 主美 素直すぎても物足りなし。
 父と母はらから遠しきぬかつぎ 清水さち子 父母、はらからを一つに。
 衣被名前の語源に激す夕餉 谷  美雪 語源そのものを表現したい。
 蒸しあげてつるりねつとり衣被 園田 靖子 「ねつとり」は汚し。
海紅切絵図
継信のこと摂待の母のこと 海 紅
流星や時はすべてを浄めしと
富士川の捨て子のことと衣かつぎ
 
「鳩の会」トップへ戻る