【摂待(接待)】陰暦七月残暑さなかのこと。仏教で、寺詣でに限らず、ひろく飲食物がふるまわれた。 |
◎遠回りして一服の門茶かな |
織田 嘉子 |
「遠回り」「一服」に情深し。 |
○亡き人の声にかさなる門茶かな |
松村 實 |
面影も生きる力に。 |
○亡き人の話題も出でて門茶汲む |
三木 喜美 |
右に同じ余情。 |
○心地よき風の摂待川堤 |
根本 文子 |
季題を自然の中に置き直した。 |
○いとけなき子より摂待たまはりし |
堀口 希望 |
こうして世代を受け継がれる。 |
○摂待や楡の木陰にガイド嬢 |
吉田いろは |
季題を少し逸らした手柄。 |
○摂待の寺に届きし童唄 |
中村 緑 |
季題を少し逸らした手柄。 |
○巡礼に汗ふきタオルお摂待 |
天野喜代子 |
中七素直でよろし。 |
○山こえし身に摂待の番茶しむ |
西野 由美 |
素直でよろし。 |
○お摂待なされる方の笑顔かな |
尾崎喜美子 |
「笑顔」がよろし。 |
○胸はだけ摂待の茶をいただきぬ |
梅田ひろし |
初五の絵柄がやや漠然。 |
○里山の道うねうねと門茶かな |
植田好太郎 |
「里山」で情がでた。 |
○摂待の萩茶ゆつくりいただきぬ |
堀 眞智子 |
「ゆつくり」に情。 |
○摂待の面をほどきて夕の風 |
清水さち子 |
「ほどきて」と凝らずとも。 |
○やはらぎの訛なつかし門茶かな |
青柳 光江 |
「なつかし」は不要。 |
○摂待の湯茶に心のこもりゐる |
天野 さら |
「心のこもり」を具象に。 |
玉砂利の摂待の寺雨宿り |
水野千寿子 |
玉砂利と雨を結びたい。 |
肩の荷を木陰に置きぬ門茶かな |
安居 正浩 |
「ぬ」でも切れてしまう。 |
ご婦人を連れた摂待紙一重 |
岡田 光生 |
「紙一重」難解。 |
摂待や受く人行く人皆静か |
大江 月子 |
もう少し姿を明らかに。 |
行きずりのお寺で摂待麦茶嬉し |
平岡 佳子 |
「お寺で」は不要。 |
ありがたし老いの遍路に門茶かな |
礒部 和子 |
「ありがたき」。 |
摂待も行の作法で若き僧 |
櫻木 とみ |
「行の作法」は不要。 |
遍路地は心で感謝お摂待 |
尾崎 弘三 |
中七が難解。 |
寺前の大釜をたいて摂待かな |
竹内 林書 |
「寺前に大釜を焚くお摂待」 |
寺奉仕古漬も並ぶ昼摂待 |
五十嵐信代 |
「も」「昼」を再考したい。 |
婆さまの包む稲荷や御摂待 |
市川 千年 |
「婆さま」が利いていない。 |
摂待の香の物受ける我が掌 |
椎名美知子 |
「掌」で焦点が逸れた。 |
絵手紙にやかん光りてご摂待 |
小出 富子 |
絵のことにして題意が逸れた。 |
声高し山門の奥の緋毛氈 |
米田 主美 |
苦吟の末に季題入れ忘れか。 |
老夫婦ねじり鉢巻門茶かな |
谷 美雪 |
上五、中七どちらかでよい。 |
園児らの摂待茶会菊日和 |
園田 靖子 |
園児等が施しに出ているのか。 |
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【流れ星】流星。秋季とするのは澄んだ空気でよく見えるから。・夜這い星として『枕草子』にでるが、季題となるのは近代になってから。 |
◎合宿の最後の夜や流れ星 |
西野 由美 |
至福の十七音なり。 |
◎旧友の便りと見えし流れ星 |
尾崎 弘三 |
今は亡き友なのであろう。 |
◎星飛んで何かが胸に突きささる |
堀口 希望 |
「何かが」に微妙な味。 |
◎流星や二十歳のころの願ひ事 |
吉田いろは |
諦めしこと多き人の世。 |
○母島にむかひて星の流れけり |
松村 實 |
「母島」にどんな本意が…。 |
○母の手が父を恋ひをり流れ星 |
根本 文子 |
亡き父と、病床の母と…。 |
○満々と湛へししじま星流る |
水野千寿子 |
やや形容に誇張が過ぎるか。 |
○アユタヤへ縁の糸か流れ星 |
礒部 和子 |
タイの知識を必要とす。 |
○矢のようにぴかつと消える流れ星 |
竹内 林書 |
素直でよろし。 |
○宇宙にも諍いありや星流る |
梅田ひろし |
勿論人の世の哀しみが前提。 |
○邂逅を待ちて見上げる流れ星 |
堀 眞智子 |
「邂逅」はおおげさなり。 |
○高原で大の字に流れ星浴びて |
有村 南人 |
「大の字」は人か流れ星か。 |
○旅の終わりイスタンブール星流る |
植田好太郎 |
トルコの知識を必要とす。 |
○星流るゲルの一夜は音もなし |
五十嵐信代 |
モンゴルの知識を必要とす。 |
○去る人の背越しに消えし流れ星 |
櫻木 とみ |
ドラマのワンシーンに似て。 |
○地にネオン天壌無窮に流れ星 |
大江 月子 |
天壌無窮は永遠の意だが…。 |
○流星に見たり宇宙の落ちこぼれ |
安居 正浩 |
諧謔を好むなり、この作者。 |
○流星やその一瞬に願ふ事 |
岡田 光生 |
取り合わせの絵がほしい。 |
○流れ星見つけて二秒のロマンかな |
三木 喜美 |
「二秒」検証を要す。 |
立山の流星毛布くるまりて |
小出 富子 |
事実でも立山不安定。 |
富士山頂流星群は絶間なく |
天野喜代子 |
事実でも富士山不安定。 |
一直線流星不気味幼き日 |
平岡 佳子 |
「幼き日」は不要。 |
二人して願ひは内緒流れ星 |
尾崎喜美子 |
おそらく同じ願いだが…。 |
一筋の流星こもる眼かな |
市川 千年 |
「こもる」が難解。 |
流星に一瞬なくす全心 |
天野 さら |
「全心」という語熟さず。 |
流星や時にほほえむ母のゐて |
中村 緑 |
母の居場所わかりにくし。 |
流星やコンビニを出て山の端に |
椎名美知子 |
「山の端」捨てる方がよし。 |
流れ星願ひも忘れ指を差す |
青柳 光江 |
「指を差す」捨てれば名句。 |
流星がスーッと消ゆる山の端に |
織田 嘉子 |
素直すぎても困る。 |
流るる星友は無念を喰みしめて |
米田 主美 |
なにゆえ無念なのか。 |
懸命に生きつつ寂し流れ星 |
清水さち子 |
「懸命に生きるは淋し」。 |
会津路や宝の山に流れ星 |
谷 美雪 |
「宝の山」とは何か。 |
辛きことあるも飛ばしぬ流れ星 |
園 田靖子 |
「辛きこと吹き飛ばしたる」 |
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【衣被】皮付きのまま茹でた里芋。芋名月の芋はこれ。近代に定着した季題。 |
◎衣被貴人のごとく月に座す |
櫻木 とみ |
季語二つなどと難ずる勿れ。 |
◎衣被土産の酒を傍に |
礒部 和子 |
おそらく二人酒ならん。 |
◎止まり木に雨音を聞く衣被 |
安居 正浩 |
客は彼一人ならん。 |
◎衣被届きし礼を絵手紙に |
三木 喜美 |
この心優し。 |
◎産声の今日より満ちて衣被 |
根本 文子 |
おそらく月も出ているか。 |
○墨染めの袖を払ひて衣被 |
松村 實 |
人物に具象性を加味したい。 |
○衣被平らげてより酔ひ伏して |
水野千寿子 |
愛すべき男よ。 |
○衣被実家に集ふ叔父と叔母 |
岡田 光生 |
「集ふ」理由を織り込みたい。 |
○手弱女の白き指先衣被 |
植田好太郎 |
全体に古き景色なれど…。 |
○衣被つるりと嬰の尻憶ふ |
堀口 希望 |
実感か。「憶」にせずとも。 |
○衣かつぎ「おう」と笑ひて喰ひたまふ |
大江 月子 |
敬語とする理由届かず。 |
○衣被り皮にも味がありにけり |
竹内 林書 |
素直なり。 |
○衣被無骨なれども愛らしき |
天野 さら |
「無骨」「愛らし」に具象を。 |
○衣被卓の話題は里の月 |
椎名美知子 |
素直なり。里は郷里か。 |
○衣被夫収穫し調理もす |
堀 眞智子 |
「収穫も調理も夫衣かつぎ」。 |
○衣被味噌で一献いかがです |
有村 南人 |
この誘いに乗りたや。 |
○衣被ふるさと自慢の味噌そへて |
青柳 光江 |
すぐいただきにまいります。 |
○子も妻も我も好みの衣被 |
梅田ひろし |
仕合わせな衣かつぎなり。 |
○芋に似し子どもばかりよ衣被 |
吉田いろは |
微笑むべし、愛すべし。 |
祖母盛りし月見の縁側衣被 |
平岡 佳子 |
思い出の報告に終わった。 |
昭和つ子おやつはいつも衣被 |
天野喜代子 |
「いつも」で嘘のなった。 |
名にし負はば並べてみよう衣被 |
尾崎喜美子 |
「名にし負はば」の効果怪し。 |
白色に香りをつけて衣被 |
小出 富子 |
説明に終わった。 |
親芋に別れを告げし衣被 |
尾崎 弘三 |
説明に終わった。 |
衣被好きと言ふ子や驚かる |
西野 由美 |
「驚かる」が難解。 |
なかなかにつるりといかぬ衣被 |
五十嵐信代 |
説明に終わった。 |
新橋に七時の汽笛衣被 |
市川 千年 |
ガード下、縄のれんなど欲し。 |
指先でするりと口に衣被 |
織田 嘉子 |
素直すぎても物足りなし。 |
衣被湯気立つ向かうに祖母の笑み |
米田 主美 |
素直すぎても物足りなし。 |
父と母はらから遠しきぬかつぎ |
清水さち子 |
父母、はらからを一つに。 |
衣被名前の語源に激す夕餉 |
谷 美雪 |
語源そのものを表現したい。 |
蒸しあげてつるりねつとり衣被 |
園田 靖子 |
「ねつとり」は汚し。 |
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海紅切絵図 |
継信のこと摂待の母のこと |
海 紅 |
流星や時はすべてを浄めしと |
同 |
富士川の捨て子のことと衣かつぎ |
同 |
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