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◎生業をもの書きとして目刺焼く 啓子
→申し分なし。やや古風に見えるのは「目刺焼く」という季題の本意のせいであろう。
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◎母の忌や市に目刺を買ひにゆく 貴美
→「市に」がよく出た。これでイイノダ。
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○あの頃は良かつたと言ひ目刺焼く 酢豚
→目刺には過去のすべてを思い起こさせる力がある。
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○日を入れて海幸色の目刺かな 千年
→「海幸色」という言葉は抽象的でイメージしにくい気がする。いっそのこと「海幸彦の目刺かな」の方が、そんな目刺は存在しなくても、余情豊かではなかろうか。
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○大海を思ふか目刺ぐつと反り 山茶花
→「か」は作者の迷いとも受け取れるので、「大海を思ふ目刺のぐつと反り」ではどうか。 |
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○好き嫌ひ言ふ子に目刺目で叱る 和子
→「目で叱る」は余分、つまり要らないのだと思う。全部を言葉にしちゃって失敗って感じ。つまり「好き嫌ひ言ふ子にも出る目刺かな」などでよいのではなかろうか。
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○小使ひの鐘振りながら目刺し焼く ひぐらし
→「小遣ひ」は懐かしい呼称であり、そこに権力は介入すべきではないが、世間は差別的として斥ける傾向があるから「用務員」か。「鐘」も今は使わないだろうね。鐘を振りながら目刺を焼くのはむずかしいなどと理屈も聞かれそうだ。ボクならおとなしく「用務員室を漏れ来る目刺の香」ぐらいで我慢する。
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○目刺し焼く一日中の留守居かな 憲
→「一日中」とまで言わずともよいのでは。ボクなら「目刺焼く準備ととのふ」かな。
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○戦なく貧しくもなく目刺食む ひろし
→「食む」と「焼く」、ボクなら「焼く」かな。 |
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○目刺焼くやや小さきは犬の分 ちちろ
→「やや小さき」の狙い(意図)は嫌みになる危険性もあるので、ボクなら「目刺焼く中の一つは犬のため」ぐらいで我慢する。 |
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○目刺てふいのちいただく夕餉かな むらさき
→命をいただくという識見は立派。ただし、目刺に限ったことではない点に弱さがある。 |
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△九十九里新聞で目刺をくるむ 由美
→「九十九里」は場所か、それとも『九十九里新聞』というものがあるのか。そんなことに迷っているうちに混乱してきた。 |
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◎駄菓子屋のくじの一等紙風船 俊彦
→この句は過不足ない表現で、安心して読める。
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○一行詩付けて風船流れきし 希望
→「付けて」と「下(提)げて」、ボクなら「提げて」かな。
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○紙風船瞬時に我は昭和の子 静枝
→「瞬時に」を捨てると余韻が増すよ。ボクなら「紙風船ふくらむ」かな。
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○紙風船ほつぺまんまるひいふみい 美雪
→「紙風船ほつぺまんまる」まではすぐれた描写。
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○泣き止まぬ子に風船をついてみせ ムーミン
→「泣き止まぬ子に風船(が届いた)」とだけ言って、後は読者に任せよう。「ついてみせ」と結ぶと、散文的で川柳のような響きになるので捨てたい。
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○風船自在思ひ出という奥行きに 瑛子
→空想的な世界(実景が見えない)ゆえ評価がむずかしい句ではある。
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○薬売り子らに風船ぶさた詫び 美知子
→「薬売り子らに風船」だけで十分に美しい世界。「ぶさた詫び」と結ぶと、散文的で川柳のような響きになるので捨てたい。
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△舟形の五色が空へ紙風船 月子
→「舟形の五色が空」がわからなかった。
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△風船や手離れてより虹となる 喜美子
→「虹となる」が実景なのか、比喩なのか。そんなことに迷っているうちに混乱してきた。
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出雲崎民芸品
△荒海の空に撞きたり紙風船 梨花
→「荒海の空に」という作為が鼻につく。別の空につきたい。
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《海紅付記》【評】という見出しをやめて、矢印(→)で感想と参考意見を添えました。
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