【◎】ラッピングして卒業の花になる 安居正浩
■海紅評=ラッピングするまでは「花」なのだが、ラッピングして「卒業の花」になったという。芭蕉さんの「軽み」をエレガントにしたお手本のような句。
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【◎】家業継ぐ覚悟を母に卒業す 礒部和子
■海紅評=美しいの一言です。
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【○】恩寵の波静かなり卒業子 谷地元瑛子
■海紅評=恩寵と卒業子の関係をもう少し知りたいのだが、俳句ではむずかしいかもしれない。
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【○】存分に学び友得て卒業す 小出山茶花
■海紅評=「友得て」は捨てた方が美しい。「存分に学び遊びて卒業す」。
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【△】太陽を奪へる煙霧卒業す 菅原通斎
■海紅評=煙霧と卒業との有機的(必然的)関わりが欲しい。
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【△】人生の卒業近し我が身かな 天野喜代子
■海紅評=語法的には「卒業近き」がよい。実感としては捨てがたいが、率直で重たい表現なので、読んでいて哀しくなる。「人生に卒業はなし髪を梳く」などと元気に暮らしてほしい。
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【△】卒業の庭に小犬の戯れり 園田靖子
■海紅評=卒業の喜びの気持ちを、小犬との戯れで表現したとみてよいですか。とすれば、「小犬と」ではいけませんか。 |
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【△】卒業や悲喜こもごもの花を買ふ こま女
■海紅評=「悲喜こもごもの花」という表現が難解。 |
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【○】まだ大き夢持ちつづけ春の星 梅田ひろし
■海紅評=この作者を知るゆえ深く鑑賞できるが、作品の切れ味は弱し。 |
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【○】陰日向しづかに暮れて春の星 大江月子
■海紅評=「しづかに」で詩情が出た。蕪村調の味わい。 |
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【○】花巻の賢治の旅や春の星 ムーミン
■海紅評=そういえば、春星は賢治にとてもよく似合う。 |
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【△】春の星疎水の面に揺らぎをり 三嶋 泰
■海紅評=春の星の「優しく、やわらか」という本意が「疎水の面に揺らぎをり」で実現できているかどうかといえば、やや不満。春の星のおかげで、疏水がいつもより素敵に見えるという方向で再考するのが俳句の学習。 |
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【△】南氷洋しほふく鯨春の星 西野由美
■海紅評=鯨が潮を吹くことと春星が有機的(必然的)につながるような表現をしたいところ。 |
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【△】春星の号の浮かぶや夜半の春 市川千年
■海紅評=春星も夜半も蕪村の号。蕪村を思い浮かべたというだけなら推敲不足。 |
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【△】振り向けばまづほどほどの春の星 ひぐらし
■海紅評=「まづほどほどの」が読者に届かない。 |
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【△】あの時も祈る手固き春の星 青蛹江
■海紅評=「あの時」はどの時かを知りたい。「祈る手固き」もイメージしにくい。 |
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【△】春の星ほの暗がりのビル狭間 柴田 憲
■海紅評=春の星の場所を示しただけで終わる点が不満。 |
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