鳩の会会報117(令和5年9月末締切分) |
萩・秋の暮 |
【Advice】 蕉門の俳論に「取り囃(はや)せ」という指導があります。配合、つまり二つの素材を盛り込むだけではだめで、〈効果的に結び合わせなさい〉という意味です。表現力不足、あるいは省略不足という意味です。今回のB評価の多くはそこに不満のあるものです。「取り合わせ」るだけでは詩が生まれませんので注意してください。 句の評価はABC三つの符合で評価しています。その意味するところは以下の通りです。 A:省略が利いて、抒情あきらかな句 B:季感が備わるスケッチ C:焦点定まらぬつぶやき |
A ジョギングの補給の水を萩に分け 和子 大切な水を分け与える点に情味あり。 |
A 朝露に生気うるおふ萩の花 光江 「生気」と「うるほふ」の情が重なって減点。しかし相対的には佳句。 |
A 山あいを行く人ごとに萩こぼれ エール 「人ごとに」「こぼれ」るというのには少し嘘が含まれる。 |
B 本堂へ萩の小径に導かれ 馨子 「本堂」へゆく目的は何か。 |
B 守り継ぎ咲かせ続くる苞の萩 海星 「守り継ぎ咲かせ続くる」と「苞」の情が重なって無駄である。 |
B 庭先を掃く傍らのこぼれ萩 蛙星 結局「こぼれ萩」は掃いたのか、掃かなかったのか。 |
B 指先の花片は萩と答へけり 千年 結局「答へ」たのは作者か、相手か。 |
B 萩の道林道長き切通し 鹿鳴 「萩の道」と「林道」との結びつき弱し。 |
B 嘆くかに白萩いまも小町大路 eiko 「白萩」と「嘆く」の結びつきがわからない。十七拍にも読めない。 |
************************************************************************************************************ |
A 娘が嫁ぎプーさん残る秋の暮 由美 イイ句だ。行く者と残るもの、共に「秋の暮」によく似合う。 |
A 団欒の記憶ほどける秋の暮 京子 素直な描写を評価する。上五中七が「秋の暮」に似合うということ。「ほぐるる」という手もある。 |
A 秋の暮果たせぬ約束ふみで詫び 美知子 素直な描写を評価する。「侘ぶ」の方が落ち着く。 |
B まだまだと暑さ頑張る秋の暮 ミチヨ 「暑さ頑張る」は子供じみた表現だが、今年を思うとうなづける。 |
A 庭の萩が咲き始めたと写メール来 紅舟 「写メール」という新鮮な素材を巧まずに表現していて好感あり。 |
B 蕉翁やあふみの寺に赤き萩 貴美 「蕉翁」と「あふみの寺(義仲寺)」の情が重なって無駄である。なぜ「赤き萩」かも示したい。 |
B 一人行く鎌倉古道萩こぼる 喜美子 なぜ「一人行く」のか気になって減点。 |
B 円空仏のかげやはらかし秋の暮 ひぐらし 「かげ」は姿、それとも物陰か。漢字を用いた方が親切。 |
B スーパーの模様替えつつ秋の暮れ 憲 「つつ」が難解。「模様替えする秋の暮れ」でよいのでは。 |
B なにげなく行く雲見てる秋の暮 ちちろ 行雲流水をみる境地か。「なにげなく」がもの足りない。 |
B 弔問の家振り返り秋の暮 ひろし 「弔問」と「秋の暮」の併置は重たすぎて辛い。 |
B ブルトーザー三つ並びて秋の暮れ つゆ草 なぜ「三つ」なのか。 |
B 外風呂を焚いて待つ父秋の暮 梨花 「父」が待つのか、「父」を待つのか。「外風呂」と「秋の暮」との結びつきも弱し。 |
B 秋の暮見送りし人姿消ゆ 美雪 「見送りし人」は見送ってくれた人か、それとも見送ってあげた人かあいまい。よって「姿消ゆ」もわかりにくい。 |
B 秋の暮ネオンの点かぬシーシャバー 真美 なぜ「ネオン」が点かないのか。なぜ「秋の暮」なのか。 |