【片陰】一方の日の当たらないところ。時間の推移で変化する。 |
◎片陰にプール帰りの子供かな |
高橋 剛 |
日常を素直に描いた。 |
◎束の間を片陰に入りバスを待つ |
金井 巧 |
日常を素直に描いた。 |
◎片陰を求めて並ぶ交差点 |
尾崎喜美子 |
日常を素直に描いた。 |
◎片陰に幼稚園バスのやって来る |
堀 眞智子 |
日常を素直に描いた。 |
○片陰を過ぎて一人の影をふむ |
小出 富子 |
自分の影でしょうね。 |
○片陰もなき刑務所の長き塀 |
堀口 希望 |
重すぎるけれど。 |
○片蔭を拾ひひろひて子の家へ |
梅田ひろし |
「ひろひひろひて」に賛否あろう。 |
○片蔭を出つ入りつして下京区 |
根本 文子 |
「下京区」に賛否あろう。 |
○縦にそひ片陰を行く老夫婦 |
松村 實 |
「縦になり」。 |
○片陰にひそひそばなし小半時 |
ひぐらし |
凝縮度不足だが。 |
○片陰に入りてやさしい声となり |
水野千寿子 |
凝縮度不足だが。 |
○片陰に入れば心のつながりぬ |
安居 正浩 |
凝縮度不足だが。 |
○気が付けば君片蔭でしゃべりおり |
高本 直子 |
凝縮度不足だが。 |
○片蔭やペットもバギーに乗りて行く |
つゆ草 |
凝縮度不足だが |
○片蔭に鳴ってるラジオ甲子園 |
西野 由美 |
「甲子園」再考せよ。 |
○片陰をさがして移す三葉苗 |
天野喜代子 |
実感あり。 |
片陰のビルの天辺乳母車 |
谷 美雪 |
片陰の場所不明瞭。 |
電線の長き片陰無人駅 |
五十嵐信代 |
「電線」の意味が把握できない。 |
片陰のしばらく途切れ草ぼうぼう |
大江 月子 |
夏草の句になってしまう。 |
片陰の宿出でて乗る駱駝かな |
吉田いろは |
駱駝の句になってしまう。 |
片蔭に尻尾無し蜥蜴うずくまり |
中村美智子 |
重すぎるね。 |
片陰よ老いたる身には鍬重し |
礒部 和子 |
重すぎるね。 |
片陰に湿りの匂ひふと立ちて |
清水さち子 |
素直なれど、弱し。 |
片陰に入りてごろりすミミの寝屋 |
米田かずみ |
凝縮度不足なり。 |
片陰をつたひて野良は走り去る |
尾崎 弘三 |
素直なれど、弱し。 |
杖忘れ片陰戻る癒ゆ願い |
櫻木 とみ |
「癒ゆ願い」推敲したい。 |
ミサ終はる大方陰へたばこ人 |
谷地元瑛子 |
「たばこ人」熟さぬ語。 |
片陰狭き座つても足が日に |
竹内 林書 |
韻律を整えよ。 |
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【ヨット】yacht。小型の帆船。スポーツや遊覧に用いる。 |
◎定年やヨットは白き帆を下ろし |
安居 正浩 |
余情豊かなり。 |
◎湘南の沖にヨットの総出かな |
大江 月子 |
この素直な描写は手腕。 |
◎ヨット駆るアランドロンが好きだつた |
吉田いろは |
「ヨットの帆」と切るがよい。 |
○出番なきヨットの絵ハガキまたしまふ |
清水さち子 |
下五「抽斗に」ではいかが。 |
○朝風や白波きってゆくヨット |
松村 實 |
素直すぎるが。 |
○入航のヨットに灯台閃光す |
櫻木 とみ |
素直すぎるが。 |
○水面にヨット浮かべて当てはなく |
高橋 剛 |
おかしみと哀しみとあり。 |
○傾けば魚影の上のヨットかな |
礒部 和子 |
描写よし。抒情が不足。 |
○ヨットそのスペル覚えし日の恋し |
ひぐらし |
「恋し」は重し。 |
○赤銅の鍛へし腕やヨット繰る |
尾崎喜美子 |
まぶしき男を点出。 |
○大海のヨット木の葉のように舞ふ |
小出 富子 |
ただし「木の葉」に冬の季あり。 |
○一湾にヨット遊ばせ月まどか |
堀口 希望 |
絵はがきのごときは欠点。 |
○空港の沖ゆく白きヨットかな |
堀 眞智子 |
絵はがきのごときは欠点。 |
乗れるなら「デュフィ」のヨット夢に見る |
根本 文子 |
凝縮度不足。 |
浴室のブリキのヨット忘れられ |
水野千寿子 |
「浴室に……残りをり」と収まりよく。 |
大海の凪ぎて気怠きヨットの帆 |
梅田ひろし |
「気怠き」は重し。 |
ヨットいいな『ツバメ号とアマゾン号』 |
西野 由美 |
おもしろいが未熟。 |
わらわらとヨット押す砂舞い上がり |
中村美智子 |
「わらわら」再考したい。 |
湘南の海はヨットの初舞台 |
米田かずみ |
「初舞台」で失敗。 |
青い海青春夢のヨットかな |
天野喜代子 |
対象をもう少し凝視したい。 |
日落ちてハーバーに列並むヨットかな |
五十嵐信代 |
「列並む」をもっと平易に。 |
爽快に定年後の夢ヨット行く |
つゆ草 |
「夢かなふ」とせねば不十分。 |
初ヨット風見を睨み操る帆 |
谷 美雪 |
「初ヨット」とは熟さぬ語。 |
帆をはりて風と対話すヨットかな |
尾崎 弘三 |
二箇所で切れぬようにしたい。 |
歯の白きヨットウーマン恋もせで |
金井 巧 |
「恋もせで」で失敗。 |
沖のヨットいつの間に潮も満ち来る |
谷地元瑛子 |
凝縮度不足。 |
波の流にヨット起伏人の世も |
竹内 林書 |
凝縮度不足。 |
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【空蝉】虚蝉。蝉のヌケガラ。転じて現世や現世に生きている人をもいう。 |
◎新らしき空蝉のあり墓そうじ |
天野喜代子 |
こういう描写が基本である。 |
◎ベランダの空蝉庭に移しけり |
金井 巧 |
こういう描写が手本である。 |
◎空蝉や酒蔵掴む力あり |
礒部 和子 |
「空蝉に」。力ある句。 |
◎空蝉や大慈大悲の尼寺に |
水野千寿子 |
物語も見えておもしろし。 |
○空蝉の掃き寄せられし草に臥す |
小出 富子 |
「草の中」。 |
○葉の先にまだ揺れてゐる蝉のから |
吉田いろは |
「まだ」を捨てたいね。 |
○空蝉をつつみて闇のやはらかし |
梅田ひろし |
「包める闇のやはらかく」。 |
○空蝉や足萎へし母の脚さする |
尾崎喜美子 |
実情であろう。 |
○空蝉やそつと見守るしかできず |
つゆ草 |
心境句。 |
○塵取に止まる空蝉見つけたり |
堀 眞智子 |
「見つけたり」を捨てたい。 |
○空蝉や丸めた手の中宝物 |
谷 美雪 |
文語を使えば姿が整うのだが。 |
空蝉の身の透き通るほど哀し |
米田かずみ |
「身の」難解。 |
子を生んでより空蝉はわが産屋 |
大江 月子 |
「わが産屋」難解。 |
空蝉の声も抜け出てゆきにけり |
根本 文子 |
「空蝉の声」難解。 |
空蝉に命のやどる雨の粒 |
安居 正浩 |
「命のやどる」難解。 |
杭さきをつかむ空蝉海の鳴る |
西野 由美 |
「海の鳴る」が唐突だね。 |
目覚めても空蝉心抱き締める |
中村美智子 |
目覚めるは、抱きしめるは誰か。 |
手のひらのあはき哀しみ蝉の殻 |
清水さち子 |
「あはき哀しみ」とは饒舌過ぎる。 |
空蝉のしつかと摑む夕日中 |
松村 實 |
「夕日中」再考したい。 |
空蝉や藻屑となりし兵の墓 |
堀口 希望 |
似合いすぎるのも欠点。 |
うつせみに脱ぎ棄てられし昨日かな |
ひぐらし |
おもしろいが、初五難解。 |
夕闇に化石となりぬ空蝉は |
五十嵐信代 |
結び落ち着かず。 |
雲湧きて空蝉のごと流れ去る |
尾崎 弘三 |
中七の比喩に賛否あり。 |
空蝉を集めし老婆部屋の鉢 |
櫻木 とみ |
「集めし」の心底難解。 |
蟋蟀の枕辺に鳴き主人留守 |
竹内 林書 |
季題違い。 |
空蝉の数ほど時雨よあけ前 |
谷地元瑛子 |
句意不明瞭。 |
空蝉の姿変われど我は知る |
高橋 剛 |
句意不明瞭。 |
蝉の殻集める稚児の手愛ほしく |
高本 直子 |
すべてを言わなくてよい。 |
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海紅切絵図 |
片陰に朝採りのものひろげゐし |
海紅 |
加山雄三のヨットといふを見き |
同 |
空蝉や前足の逞しきこと |
同 |
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