【なめこ】滑子。マツタケ科の茸の一。ブナの枯木・切り株などに群生。近代に認定された季題。 |
◎帰国せし子にお茶漬けとなめこ汁 |
金井 巧 |
人の世の一切が見える気がする。 |
◎箸先でころころ遊ぶなめこかな |
小出 富子 |
「箸先で」で詩に。 |
◎湯治客採れたばかりのなめこ炊く |
有村 南人 |
「湯治客」で詩に。 |
○大粒のなめこ光りて道の駅 |
三木 喜美 |
「大粒」で詩に。 |
○こんもりとなめこの傘の背比べ |
谷 美雪 |
初五「押しあひて」ではいかが。 |
○道の駅花盛るやうになめこざる |
五十嵐信代 |
「花盛るやうに」が発見。 |
○道の駅たづきのなめこ山盛りに |
根本 文子 |
この収入をあてにしているのだ。 |
○天然のなめこ売る声野趣帯びて |
市川 千年 |
「野趣帯びて」が発見。 |
○親離れせぬ子と今年もなめこ汁 |
天野 さら |
「今年も」は要らぬ気がする。 |
○到来の心も温しなめこ汁 |
三島 菊枝 |
素直で心地よき。 |
○朝御飯のなめこ味噌汁母の味 |
竹内 林書 |
素直で心地よき。 |
○みちのくの山湯の宿のなめこ汁 |
松村 實 |
素直で心地よき。 |
○山男なめこ土産にやってきた |
水野千寿子 |
素直で心地よき。 |
○みちのくの女は無口なめこ汁 |
梅田ひろし |
「みちのく」と「無口」古し。 |
○上京の母の訛となめこ汁 |
礒部 和子 |
「訛」と「なめこ汁」やや古し。 |
○湯治場に話し込みゐる滑子売り |
堀口 希望 |
「話し込みゐる」やや古し。 |
内職の手間代うれしなめこ汁 |
吉田いろは |
やや少なくなかろうか。 |
なめこ食べすこし世渡りうまくなる |
安居 正浩 |
なめらかという意の滑稽化か。 |
大本教霧深き里のなめこ汁 |
平岡 佳子 |
大本教という事情を離れたい。 |
産休に大家さんからなめこ汁 |
岡田 光生 |
滑子汁になにか意味があるか。 |
森深し滑子は笠を広げ終ふ |
大江 月子 |
「終ふ」の意図難解。 |
村人の秘めたる山やなめこ狩る |
尾崎喜美子 |
「秘めたる山」というは重し。 |
手酌酒なめこつるつと輝きぬ |
西野 由美 |
「輝きぬ」は重し。 |
なめこ汁書かれたのぼり風に揺れ |
織田 嘉子 |
説明に終わった。 |
山車誘導交通係になめこ汁 |
櫻木 とみ |
説明に終わった。 |
味噌の香に湯気立ちのぼるなめこ汁 |
天野喜代子 |
説明に終わった。 |
ふうふうといきふきかけてなめこじる |
尾崎 弘三 |
説明に終わった。 |
豆腐売る声遠ざかりなめこ汁 |
中村 緑 |
説明に終わった。 |
遠き日の山小屋の暖なめこ汁 |
椎名美知子 |
懐旧に終わった。 |
旅土産なめこ汁飲み講釈す |
米田かずみ |
「講釈」が抽象的。 |
病癒え喉に滑らかなめこ汁 |
堀 眞智子 |
「滑らか」を捨てたい。 |
なめこ汁吹きつつ一日の始まりぬ |
清水さち子 |
説明に終わった。 |
鍋の底そろり掬ふやなめこ汁 |
植田よしお |
説明に終わった。 |
大鍋に火のとろとろと滑子汁 |
大原 芳村 |
説明に終わった。 |
なめこ汁ほんわか湯気にこ娘の笑顔 |
石川三千代 |
説明に終わった。 |
なめこ缶香りゆらめき霜の朝 |
中村美智子 |
「霜の朝」を捨てたい。 |
独り住みなめこ解けぬ赤い椀 |
後藤 祥子 |
独と、溶けない、には情あり。 |
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【をとり(囮)】狩猟で、姿や鳴き声で仲間をおびき寄せる鳥獣。雁・鴨・ツグミ・千鳥他。瞼を縫い合わせて盲目にしたりもした。 |
◎少年に秘密の場ありをとり籠 |
水野千寿子 |
思い当たる人少なからず。 |
◎生涯ををとりに生きし美声かな |
金井 巧 |
「生涯を」とは優し。 |
◎隠居逝き囮のつぐみ放ちけり |
堀口 希望 |
狩猟目的の囮ではなかった。 |
◎透きとほるをとりの声や山日和 |
松村 實 |
平和な山村なるらん。 |
○あさましや鳥が鳥呼ぶ囮とは |
天野 さら |
一気に言い下して秀逸。 |
○囮てふ字に切なさの籠もりゐる |
根本 文子 |
たしかに哀しい文字なり。 |
○少年の顔に戻りてをとり籠 |
三木 喜美 |
無邪気は時に残酷なり。 |
○童心にかへり仕掛ける囮かな |
織田 嘉子 |
童心とは失われし執着なり。 |
○山空へ朗々と鳴く囮かな |
梅田ひろし |
「朗々と」とは哀し。 |
○山の子のをとり巧みにかけにけり |
市川 千年 |
素直にて心地よし。 |
○ひとり鳴く囮の歌のむなしさよ |
尾崎 弘三 |
素直にて心地よし。 |
○ばあばへの囮は二才孫の声 |
中村美智子 |
わかるが、少し気の毒なり。 |
○囮籠下げて小屋には誰もゐず |
大原 芳村 |
おそろしき景なり。 |
○おとりといふ鳥の目を避け空を見る |
椎名美知子 |
鳥の目は悲しんでいたのだ。 |
○録音のをとり樹間に響きゐる |
西野 由美 |
こんなこともあるのだろう。 |
○呼べば来る手乗りとなりしをとり鳥 |
櫻木 とみ |
「鳥」は不要だろう。 |
○今はもう馴染みとなりし囮かな |
尾崎喜美子 |
馴染むゆえの哀れも漂う。 |
○囮籠淋しき人の知恵なりき |
平岡 佳子 |
「囮かご淋しき人とふと思ふ」 |
○囮小屋一羽を入れてありにけり |
大江 月子 |
「ありにけり」は不要か。 |
○嘆き鳴きしても誉められ囮かな |
安居 正浩 |
かつて鳥語を解す人ありぬ。 |
網の中囮を入れてもう二日 |
岡田 光生 |
「もう二日」が利いていない。 |
われを呼ぶ声にあらねど囮籠 |
吉田いろは |
「声にも聞こえ」という案も。 |
あはう鳥をとりの鳥に恋をして |
天野喜代子 |
あほうどりならずとも。 |
囮篭昨日の戦果を探検に |
礒部 和子 |
「探検に」は大仰か。 |
をとり者おどかされるもの世の常 |
竹内 林書 |
人の世に変わらずの意か。 |
鎮守様をとりの声を消し賜ふ |
五十嵐信代 |
鎮守の何が消したのか。 |
矢を射ても届かぬ場所のをとりかな |
中村 緑 |
感動の焦点が不鮮明。 |
しのび足をとりと知らず子猫来て |
米田かずみ |
「しのび足」捨てて再考。 |
をとり箱窺きて半日過ぎてをり |
清水さち子 |
「過ぎてをり」捨てて再考。 |
仲間呼べ苗圃の中に囮籠 |
谷 美雪 |
誰(何)の仲間か不鮮明。 |
百代の過客よ日がな囮番 |
植田よしお |
「百代の過客」の意図難解。 |
をとりおきそつとかくれて雀待つ |
石川三千代 |
説明に終わった。 |
待合せをとりと知りし母がいて |
後藤 祥子 |
「おとり」が誰か不鮮明。 |
囮かけ何も得るなき日がなかな |
三島 菊枝 |
獲物なき一日という意か。 |
囮籠静かにかけて見守れり |
小出 富子 |
素直すぎても困るなり。 |
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【木の葉髪】毎年秋から冬にかけて多い抜け毛を落葉にたとえた語。近代に生まれた季題。
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◎気に入りの帽子はひとつ木の葉髪 |
清水さち子 |
いとおしむ心なり。 |
◎木の葉髪懐紙に受けて前帯に |
谷 美雪 |
慎ましやかで美しき。 |
◎豊かなる長寿の白き木の葉髪 |
根本 文子 |
その人に自得の美を見た。 |
◎精進す木の葉髪など気にとめず |
西野 由美 |
わびしさをはねのける意志。 |
◎木の葉髪半生賭けし職を辞す |
大原 芳村 |
人の世の一切が見ゆ。 |
◎想ひ出にひたる事増え木の葉髪 |
三木 喜美 |
抜け毛を見る目がやさしい。 |
◎デパートの姿見にふと木の葉髪 |
堀口 希望 |
あわれと、いとおしさと美しき。 |
◎薬害に木の葉髪なる病後かな |
天野喜代子 |
まさに現代の悲劇をとらえて逸。 |
○木の葉髪いつまでやれる芸の道 |
天野 さら |
措辞「やれる」が気になる。 |
○風が来て互ひに見合ふ木の葉髪 |
椎名美知子 |
「見合わせる顔」。 |
○木の葉髪とて青年の気概あり |
安居 正浩 |
むしろ若きころ以上に…。 |
銀色もひときわ奇麗木の葉髪 |
小出 富子 |
「銀色が」。 |
肩叩く子の掌の固く木の葉髪 |
梅田ひろし |
心持ちの悪さで二者をつなぐか。 |
つつまれた母の古櫛木の葉髪 |
五十嵐信代 |
事実を超えた美的想化を。 |
木の葉髪職退きて子らの声 |
米田かずみ |
誰の、どんな「子らの声」か。 |
学食の離れて一人木の葉髪 |
植田よしお |
「学食に」。但し淋しすぎる。 |
うたごゑえの広場の友も木の葉髪 |
中村 緑 |
「 うたごゑえの広場」難解。 |
艶やかな帽子で隠す木の葉髪 |
中村美智子 |
「艶やかな」が曖昧。 |
木の葉髪髷に結ひ込み村芝居 |
大江 月子 |
「結ひ込み」は強し。 |
いつの間に白く変はりし木の葉髪 |
尾崎 弘三 |
老いは容赦なく、しかも不意。 |
知り人の訃報の多し木の葉髪 |
三島 菊枝 |
淋しすぎなり。 |
術後の身頼りし妻の木の葉髪 |
金井 巧 |
淋しすぎなり。 |
風立つや喪服の肩を木の葉髪 |
有村 南人 |
淋しすぎなり。 |
木の葉髪なれど朗々講釈師 |
市川 千年 |
木の葉髪は抜け落ちた髪なり。 |
木の葉髪思ふ暇なく庭掃除 |
平岡 佳子 |
「庭掃除」を捨てたい。 |
木の葉髪きんもくせいもかざりをり |
石川三千代 |
中七・下五難解。 |
午後三時ロンドを聴くや木の葉髪 |
後藤 祥子 |
配合に飛躍あり。 |
木の葉髪生え変わりよと思ひやり |
岡田 光生 |
中七の表現不安定。 |
木葉髪老いの一徹朝鏡 |
礒部 和子 |
「老いの一徹」難解。 |
木の葉髪そつと流して盛り付けす |
櫻木 とみ |
「盛り付けす」が難解。 |
夢の馬車君を隣に木の葉髪 |
吉田いろは |
下五の意図わかりにくし。 |
蕎麦切りをゆがく間の夢木の葉髪 |
松村 實 |
下五の意図わかりにくし。 |
窓開き朝日に放つ木の葉髪 |
尾崎喜美子 |
苦情の恐れはないか。 |
木の葉髪育ちし家と共に老い |
水野千寿子 |
「家も」。 |
木の葉髪櫛にからみてそのままに |
竹内 林書 |
汚き描写なり。 |
洗面の白き陶器に木の葉髪 |
織田 嘉子 |
汚き描写なり。 |
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海紅切絵図 |
なめこ汁と聞けば目覚めて食卓に |
海 紅 |
立つ鳥に今一度鳴く囮かな |
同 |
木の葉髪芭蕉蕪村を少し知る |
同 |
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