わくわく題詠鳩の会会報60   ホーム
鳩ノ会会報60(平成26年3月末締切分)
兼題 桜・雛納め

【はじめに】
自分の句に対する評価ばかりが気にかかるものですが、実は他者の作品であっても、すぐれた表現に学ぶことの方が有益です。他者の作品に感動する心を養ってください。


◎雛しまひ夫婦ふたりの夜に戻る      希望
【評】陰影ゆたかなり。

◎桜前線真下にをれば老いやすし      酢豚
【評】春を惜しみ、わが生涯を愛しく思っているのである。

◎初桜ほのぼのと日の昇りくる      ひろし
【評】「ほのぼの」が「初桜」にまことによく似合う。

◎雛納めやめて年中飾りたし      佳子
【評】雛納めしつつもよぎる気持ちを率直に述べた。「飾りたし」と言い切る心も美しい。

◎母は母娘は娘に秘密雛納む      月子
【評】「母は母に」と字余りにしたほうがわかりやすい。

◎雛納め子等のいたづら繕ひて      美雪
【評】「子等」を捨てれば更に余情が増すだろう。「雛納めいたづら二三繕ひて」。

○帰還せし宇宙桜の咲き初むる      千年
【評】宇宙ステーションで保管した後、地上に持ち帰った桜の種が発芽し、予想外の生育を見せているというニュースを聞いた気がする。それを詠んだ句であろう。「帰還せし」に工夫が感じられる。

○満開の桜にこの身染まりけり      由美
【評】やや誇張したスケッチのようだが、心理的にはわかるし、率直で感じよい。

○樹木葬悪くないかも花吹雪    ひぐらし
【評】「樹木葬」という言葉は定着したようですね。その「樹木」と「花吹雪」の重なりがもったいない気がします。

○この桜昭和とともに歩みきて     ちちろ
【評】「この桜」と自分をはっきり分けてはどうだろう。たとえば「花万朶昭和とともに歩みきし」。

○一房の桜栞に立読みす          和子
【評】本屋の主人に叱られたりしないかと心配してしまった。

○殿は掛け軸はづす雛納め      直久
【評】子どもの名前などが入った雛祭りの掛け軸を出した点は新鮮。「殿」はシンガリと読むのであろうが、そう読むと、軍隊やその隊列などの序列の意味から脱するのはむずかしく、雛祭りのまろやかな世界に馴染まないような気がする。

△盃に一片の桜湖おもふ         山茶花
【評】心余りて言葉足らずという感じ。出来れば、盃の酒から連想された湖を知る手掛かりがほしい。

△大景や築地の向かう山ざくら       憲
【評】名所の句はむずかしいね。「大景」を捨てる(省略)出来るまで凝視したいね。

△マランソンびと花には惹かれず行き抜けり  泰
【評】「惹かれず」では花(桜)を賞美する句にならない。「花を一瞥」などとすれば花の句になる。

△おもたせに今年はミモザ雛納め      瑛子
【評】「ミモザ」がボクの知っている高木として、それを「おもたせ」にする情景を思い浮かべられない。また春の季感があるので、「雛納め」と反発し合う気もする。

△覆ひ布替えて名残の雛納め    ムーミン
【評】「名残の」は要らないように思う。その理由は思わせぶりに響くから。

△京みやげ雛納めむと隅に置く     喜代子
【評】雛納めという題が主役だから、みやげと雛との関係をもう少し描いた方がよい。

△石庭の塀にこぼるる櫻かな      むらさき
【評】このような景色は折々見られるであろう。それを景色に終わらせず、作者の思いを語らせる詩にするには、書いては捨てるというデッサンの繰り返しが不可欠であろう。

 
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