わくわく題詠鳩の会


鳩の会会報108(令和4年3月末締切分)
兼題 百千鳥・遠足
【Advice】 千鳥(鵆)も百千鳥も〈たくさんの鳥〉のこと。千鳥は秋から冬にかけて飛来するチドリ科の総称で、水辺に群れて哀調をおびた声で啼く。詩歌では便宜的に冬の詞とする。百千鳥は春の山野に鳴き交わす多種の小鳥のさまである。よって、春という季節の勢いや、恋をその本意とする。遠足は厳しい冬からの開放感を本意として春の詞と定められている。この本意とは鉛筆の芯みたいなもので、これをそれると詩歌にならない。そんなことを考えながら評価してみた。
句はABC三つの符合で評価しています。その意味するところは以下の通りです。
A:省略が利いて、抒情あきらかな句
B:季感が備わるスケッチ
C:焦点定まらぬつぶやき
A 百千鳥筑波の山を占拠する    和子
・百千鳥の勢いがよく出ている。下五「して」か。
B 百千鳥の声を追ひかけ万歩計    紅舟
・「声を追ひかけ」のは百千鳥じゃない気がする。「百千鳥聞きつつ歩く万歩計」も一案。
C 百千鳥鳴いてくれろよ父葬送    千年
・春の勢いとか、恋を本意とする百千鳥に葬送は似合わず。
C 逃げ惑ふキェフ励ますや百千鳥    瑛子
・戦争を詠むのはまことに難しい。当事者ではないから。
C 戦地のニュース今朝ここは百千鳥   エール
・戦争を詠むのはまことに難しい。当事者ではないから。
C 一瞬の黙ありやなし百千鳥        憲
・「ありやなし」で実感を損なった。
C 電動の刈る木に寄らぬ百千鳥    香粒
・電動ノコギリを使う最中か。であれば百千鳥に限るまい。
C 目をとぢて声聴く朝の百千鳥    貴美
・「目をとぢて」が言い過ぎている。
C 山頭火の句碑片隅に百千鳥    ひぐらし
・不明にして山頭火と百千鳥との結びつきがわからなかった。乞う教示。
C 山頭火もきっとどこかで百千鳥    つゆ草
・不明にして山頭火と百千鳥との結びつきがわからなかった。乞う教示。
C 百千鳥僧の読経の静かなり    しのぶこ
・百千鳥の本意(春の勢い・恋)が生きていない。
C 歓声の風のお手玉百千鳥    梨花
・「風のお手玉」は巧みな気もするが難解。
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A 遠足の言葉少なき帰り道     蛙星
・「言葉少なき」に実感がこもる。
A 遠足の窓も笑顔も全開に    喜美子
・「窓」がややあいまいだが、出発前の教室とみた。
A 遠足の教師優しき人なりき    鹿鳴
・ふだんと異なる一面を見たのだろう。
A 遠足の先頭青年教師ゆく       ひろし
・「青年教師」がみごと。
B 遠足やイーゼルしよつて小海線    真美
・遠足の一景をとらえている。
B 遠足の子らうらうらと利根堤    美知子
・遠足の一景をとらえている。
B 汀へと遠足の子の一目散      海星
・「一目散」ということばがやや固い。
B 子らの列リュックに替へて遠足に    ミチヨ
・「リュックに替へて」が無駄である。
B 富士見えて喚声上がる遠足児    光江
・非の打ちどころはないのだが、描写以上のものがない。
B 又も雨遠足延期の模擬テスト    美雪
・こんな記憶は確かにあるね。でも「又も雨」は要らなかったね。
B 遠足にふさはしき歌高らかに    由美
・「ふさはしき」は思いのほか抽象的。歌っている場所も匂わせたい。
C 遠足の楽しさ奪う戦火とは    京子
・戦争を詠むのはまことに難しい。当事者ではないから。


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