わくわく題詠鳩の会会報 42   ホーム
鳩ノ会会報42
兼題 溝浚へ・麦笛・ダービー
面白がらするは田舎芸なり
(幽斎・耳底記)
【溝浚へ】浚へたる溝の流れを見て休む  三井日月夫
 浚ひ終へし棚田の溝に鍬あらふ 堀口 希望 古風なれど安定した描写。
 棒を手に歩く一団溝浚へ 天野 さら 古風なれど安定した描写。
 顔役の様子窺ふ溝浚へ 安居 正浩 ドラマなるが完結度に不安。
 溝浚へ元気であれと水流る 小出 富子 元気の主体は何か。
 溝浚へアメリカザリの仁王立ち 谷  美雪 ありそうな反撃なり。
 老も若も皆素足で溝浚へ 竹内 林書 「老いの足若者の足溝攫へ」
 溝浚へ遠くなりけり水洗化 平岡 佳子 「水洗化」の語落ち着かず。
 人足に出る子にやさし溝浚へ 根本 文子 「やさし」がわからなかった。
 溝浚ふ今年をかぎりの田の笑ふ 大江 月子 「今年かぎりの」
 神官も隣組なり溝浚へ 吉田いろは 「隣組なり」を捨てたし。
 部落皆顔を揃へて溝浚ひ 尾崎 弘三 「部落皆」を具象化したい。
 定年の校長も出て溝浚へ 梅田ひろし 「定年」に趣向を求めた。
 忽然とボールあらはる溝浚へ 中村美智子 「あらはれ」と少し切る。
 溝浚へ鋤簾片手に立ち話 礒部 和子 ドラマなるが完結度に不安。
 マンションの始めて見る顔溝浚 櫻木 とみ ドラマなるが完結度に不安。
 溝浚ひわざとビー玉ころがす子 中村  緑 ドラマなるが完結度に不安。
 溝さらへ身体のゴミもさらひたし つゆ草 実情を詠むが美的想化に不安。
 溝浚へグプッと泥のにおいたつ 西野 由美 実情を詠むが美的想化に不安。
 頬の泥拭ひて了へぬ溝浚へ 三島 菊枝 一景だが新しみに乏し。
 溝攫へ和気あいあいの総出かな 柴田  憲 一景だが新しみに乏し。
 移り来て自己紹介の溝浚え 水野千寿子 一景だが新しみに乏し。
 新しき顔も交へて溝浚ひ 尾崎喜美子 一景だが新しみに乏し。
 米作り手初めにまづ溝浚え 天野喜代子 一景だが新しみに乏し。
 遠山も雲なくなりぬ溝浚え 松村  實 一景だが新しみに乏し。
 溝浚ふ腕逞しき男たち 千葉ちちろ 一景だが新しみに乏し。
 古株が仕切る社宅のどぶさらひ ひぐらし 一景だが新しみに乏し。
 溝浚へどろんこまみれの大蚯蚓 園田 靖子 趣向面白し。中七推敲したい。
 ひさびさの賑はひ自治会溝さらふ 清水さち子 上五、中七に趣向不足。
 一日中一人ぼつちで溝浚え 五十嵐信代 淋しすぎなり。
【麦笛】麦笛を吹く娘も乗つて馬車のゆく   川崎 昌子
○麦笛の音に演歌のふるへかな 天野 さら 「かな」強すぎるかも。
○麦笛や同窓会の案内来る 柴田  憲 切れて句意明快。
○麦笛や丘の木陰に兄妹 松村  實 切れて句意明快。
○麦笛を吹く友もゐて古希の会 堀口 希望 切れて句意明快。
○麦笛を友と合奏畦を行く 千葉ちちろ 「麦笛の合奏畦を二人ゆく」
 吹いて見せる姉の麦笛まだ鳴らず 根本 文子 初五例えば「妹へ」。
 麦笛や親の言ひつけ蹴散らして 水野千寿子 「蹴散らす」は強すぎなり。
 麦笛や愛の賛歌で幕を引く 谷  美雪 「幕を引く」抽象的なり。
 麦笛や田舎育ちが自慢にて 大江 月子 「にて」留め不安定なり。
 初恋は十歳の時麦笛す つゆ草 「麦笛す」落ち着かず。
 父の引くリヤカーにゆられ麦笛を 礒部 和子 「麦笛を」落ち着かず。
 振り向けば麦笛老いの口元に 櫻木 とみ 「振り向けば」は強し。
 麦笛を吹いてあやせど泣きやまず 中村  緑 「麦笛や」と切りたい。
 麦笛を吹きしは誰ぞ吾子ならむ 園田 靖子 「誰ぞ」は不要。
 麦笛吹いて童同子合唱団 竹内 林書 「吹いて」は不要。
 八十の兄麦笛を吹き聞かす 梅田ひろし 「八十歳の」と字余りがよい。
 折りとりて共に鳴らさむ麦の笛 吉田いろは 「共に鳴らさむ」は弱し。
 麦笛の聞くこともなく年を経る 尾崎喜美子 「年を経る」は弱し。
 麦笛の音風に乗り野良の上 尾崎 弘三 「野良の上」は弱し。
 鳴つてゐる友の麦笛見ては吹く 西野 由美 「見ては吹く」は弱し。
 河原では麦笛に和して風流れ 中村美智子 「河原では」は弱し。
 草に坐してひとり麦笛よく鳴れる 三島 菊枝 「草に坐して」は弱し。
 麦笛の友の口元思ひ出す 安居 正浩 「思ひ出す」は弱し。
 メロデイの見えぬ麦笛じつと待つ 小出 富子 「じつと待つ」は弱し。
 麦笛や郷愁の中生きてゐる 天野喜代子 「郷愁の中」は弱し。
 しばらくはかすれてとぎれて麦の笛 清水さち子 主題弱し。
 麦笛の名手のゐた学童疎開 五十嵐信代 舌頭に千転せよ。
 麦畠宅地化笛も消えにけり 平岡 佳子 歎かず、讃えたし。
 鞍壺に駄賃結ばむ麦の笛 ひぐらし 古風な取合せが面白し。
【ダービー】 ダービーの題で思い当たる句なし。
◎ダービーに勝ちし余韻の牧駈くる 堀口 希望 美しい姿なり。
◎ダービーや社宅賑やか夫若し 小出 富子 軽きことも俳諧の花。
◎ダービーの牝馬のピンクマスクかな 吉田いろは 新しみは俳諧の花。
○全身を眼となして見るダービー 天野 さら 情景は平明なれど。
○ダービーの果てたる空のがらんだう 安居 正浩 空虚、倦怠、寂寥など見ゆ。
○砂けむり上げて曲がり来ダービー馬 松村  實 主題弱し。
○ダービーのドッドッと鳴りて地も胸も つゆ草 「中七」新鮮。
○ダービーはひたすらと云ふもの競ひ 根本 文子 「ひたすらと云ふもの」は淡し。
○ダービーや就活苦戦の子を鼓舞す 西野 由美 「就職活動苦戦の子」
○ダービーの勝者へ歓呼止まざりし 梅田ひろし 「止まざりし」は弱し。
○ダービーや旧知のやうな仲となり 水野千寿子 「仲となり」は弱し。
 ダービー馬ペガサスとなり駆け抜ける 尾崎 弘三 「駆け抜ける」は弱し。
 ダービーは短波ラジオを走りぬけ 清水さち子 「ダービーや」「走り抜く」
 誇りかに勝馬めぐりダービー終ふ 三島 菊枝 「めぐり」は不要。
 ダービや社会一斉動き出す 天野喜代子 「社会一斉」は弱し。
 ダービーの勝者拳を天に突く 園田 靖子 「勝者の拳天を突く」
 ダービーのどよめき凍る刹那かな ひぐらし 中七下五弱し。
 ダービの朝あの馬は何も見ぬ 五十嵐信代 描写弱し。
 女性でも駿馬で競ふ世相なり 平岡 佳子 主題弱し。
 ダービの菊花賞は六月祭り 竹内 林書 主題弱し。
 ダービーのはずれ馬券が風に舞ふ 千葉ちちろ 古し。
 ダービーの出馬の気合息吹いて 櫻木 とみ 古し。
 ダービー後砂塵より多し紙吹雪 中村美智子 中七の説明を捨てたい。
 ダ−ビ−来忘我の境やつい一瞬 柴田  憲 説明でなく描写を。
 ダービー暦二十年目の大当たり 谷  美雪 説明でなく描写を。
 ダービーの駿馬目覚める夜明けかな 大江 月子 説明でなく描写を。
 ダービーの惜しい馬券を捨てきれず 礒部 和子 説明でなく描写を。
 ダービーの感動伝ふ画面かな 尾崎喜美子 説明でなく描写を。
海紅切絵図
中央に鬼神を祀り溝浚へ 海 紅
麦笛のふるさとといふ唄を二度
週給のすべてを持ちてダービーへ
 
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