【溝浚へ】浚へたる溝の流れを見て休む 三井日月夫 |
浚ひ終へし棚田の溝に鍬あらふ |
堀口 希望 |
古風なれど安定した描写。 |
棒を手に歩く一団溝浚へ |
天野 さら |
古風なれど安定した描写。 |
顔役の様子窺ふ溝浚へ |
安居 正浩 |
ドラマなるが完結度に不安。 |
溝浚へ元気であれと水流る |
小出 富子 |
元気の主体は何か。 |
溝浚へアメリカザリの仁王立ち |
谷 美雪 |
ありそうな反撃なり。 |
老も若も皆素足で溝浚へ |
竹内 林書 |
「老いの足若者の足溝攫へ」 |
溝浚へ遠くなりけり水洗化 |
平岡 佳子 |
「水洗化」の語落ち着かず。 |
人足に出る子にやさし溝浚へ |
根本 文子 |
「やさし」がわからなかった。 |
溝浚ふ今年をかぎりの田の笑ふ |
大江 月子 |
「今年かぎりの」 |
神官も隣組なり溝浚へ |
吉田いろは |
「隣組なり」を捨てたし。 |
部落皆顔を揃へて溝浚ひ |
尾崎 弘三 |
「部落皆」を具象化したい。 |
定年の校長も出て溝浚へ |
梅田ひろし |
「定年」に趣向を求めた。 |
忽然とボールあらはる溝浚へ |
中村美智子 |
「あらはれ」と少し切る。 |
溝浚へ鋤簾片手に立ち話 |
礒部 和子 |
ドラマなるが完結度に不安。 |
マンションの始めて見る顔溝浚 |
櫻木 とみ |
ドラマなるが完結度に不安。 |
溝浚ひわざとビー玉ころがす子 |
中村 緑 |
ドラマなるが完結度に不安。 |
溝さらへ身体のゴミもさらひたし |
つゆ草 |
実情を詠むが美的想化に不安。 |
溝浚へグプッと泥のにおいたつ |
西野 由美 |
実情を詠むが美的想化に不安。 |
頬の泥拭ひて了へぬ溝浚へ |
三島 菊枝 |
一景だが新しみに乏し。 |
溝攫へ和気あいあいの総出かな |
柴田 憲 |
一景だが新しみに乏し。 |
移り来て自己紹介の溝浚え |
水野千寿子 |
一景だが新しみに乏し。 |
新しき顔も交へて溝浚ひ |
尾崎喜美子 |
一景だが新しみに乏し。 |
米作り手初めにまづ溝浚え |
天野喜代子 |
一景だが新しみに乏し。 |
遠山も雲なくなりぬ溝浚え |
松村 實 |
一景だが新しみに乏し。 |
溝浚ふ腕逞しき男たち |
千葉ちちろ |
一景だが新しみに乏し。 |
古株が仕切る社宅のどぶさらひ |
ひぐらし |
一景だが新しみに乏し。 |
溝浚へどろんこまみれの大蚯蚓 |
園田 靖子 |
趣向面白し。中七推敲したい。 |
ひさびさの賑はひ自治会溝さらふ |
清水さち子 |
上五、中七に趣向不足。 |
一日中一人ぼつちで溝浚え |
五十嵐信代 |
淋しすぎなり。 |
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【麦笛】麦笛を吹く娘も乗つて馬車のゆく 川崎 昌子 |
○麦笛の音に演歌のふるへかな |
天野 さら |
「かな」強すぎるかも。 |
○麦笛や同窓会の案内来る |
柴田 憲 |
切れて句意明快。 |
○麦笛や丘の木陰に兄妹 |
松村 實 |
切れて句意明快。 |
○麦笛を吹く友もゐて古希の会 |
堀口 希望 |
切れて句意明快。 |
○麦笛を友と合奏畦を行く |
千葉ちちろ |
「麦笛の合奏畦を二人ゆく」 |
吹いて見せる姉の麦笛まだ鳴らず |
根本 文子 |
初五例えば「妹へ」。 |
麦笛や親の言ひつけ蹴散らして |
水野千寿子 |
「蹴散らす」は強すぎなり。 |
麦笛や愛の賛歌で幕を引く |
谷 美雪 |
「幕を引く」抽象的なり。 |
麦笛や田舎育ちが自慢にて |
大江 月子 |
「にて」留め不安定なり。 |
初恋は十歳の時麦笛す |
つゆ草 |
「麦笛す」落ち着かず。 |
父の引くリヤカーにゆられ麦笛を |
礒部 和子 |
「麦笛を」落ち着かず。 |
振り向けば麦笛老いの口元に |
櫻木 とみ |
「振り向けば」は強し。 |
麦笛を吹いてあやせど泣きやまず |
中村 緑 |
「麦笛や」と切りたい。 |
麦笛を吹きしは誰ぞ吾子ならむ |
園田 靖子 |
「誰ぞ」は不要。 |
麦笛吹いて童同子合唱団 |
竹内 林書 |
「吹いて」は不要。 |
八十の兄麦笛を吹き聞かす |
梅田ひろし |
「八十歳の」と字余りがよい。 |
折りとりて共に鳴らさむ麦の笛 |
吉田いろは |
「共に鳴らさむ」は弱し。 |
麦笛の聞くこともなく年を経る |
尾崎喜美子 |
「年を経る」は弱し。 |
麦笛の音風に乗り野良の上 |
尾崎 弘三 |
「野良の上」は弱し。 |
鳴つてゐる友の麦笛見ては吹く |
西野 由美 |
「見ては吹く」は弱し。 |
河原では麦笛に和して風流れ |
中村美智子 |
「河原では」は弱し。 |
草に坐してひとり麦笛よく鳴れる |
三島 菊枝 |
「草に坐して」は弱し。 |
麦笛の友の口元思ひ出す |
安居 正浩 |
「思ひ出す」は弱し。 |
メロデイの見えぬ麦笛じつと待つ |
小出 富子 |
「じつと待つ」は弱し。 |
麦笛や郷愁の中生きてゐる |
天野喜代子 |
「郷愁の中」は弱し。 |
しばらくはかすれてとぎれて麦の笛 |
清水さち子 |
主題弱し。 |
麦笛の名手のゐた学童疎開 |
五十嵐信代 |
舌頭に千転せよ。 |
麦畠宅地化笛も消えにけり |
平岡 佳子 |
歎かず、讃えたし。 |
鞍壺に駄賃結ばむ麦の笛 |
ひぐらし |
古風な取合せが面白し。 |
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【ダービー】 ダービーの題で思い当たる句なし。 |
◎ダービーに勝ちし余韻の牧駈くる |
堀口 希望 |
美しい姿なり。 |
◎ダービーや社宅賑やか夫若し |
小出 富子 |
軽きことも俳諧の花。 |
◎ダービーの牝馬のピンクマスクかな |
吉田いろは |
新しみは俳諧の花。 |
○全身を眼となして見るダービー |
天野 さら |
情景は平明なれど。 |
○ダービーの果てたる空のがらんだう |
安居 正浩 |
空虚、倦怠、寂寥など見ゆ。 |
○砂けむり上げて曲がり来ダービー馬 |
松村 實 |
主題弱し。 |
○ダービーのドッドッと鳴りて地も胸も |
つゆ草 |
「中七」新鮮。 |
○ダービーはひたすらと云ふもの競ひ |
根本 文子 |
「ひたすらと云ふもの」は淡し。 |
○ダービーや就活苦戦の子を鼓舞す |
西野 由美 |
「就職活動苦戦の子」 |
○ダービーの勝者へ歓呼止まざりし |
梅田ひろし |
「止まざりし」は弱し。 |
○ダービーや旧知のやうな仲となり |
水野千寿子 |
「仲となり」は弱し。 |
ダービー馬ペガサスとなり駆け抜ける |
尾崎 弘三 |
「駆け抜ける」は弱し。 |
ダービーは短波ラジオを走りぬけ |
清水さち子 |
「ダービーや」「走り抜く」 |
誇りかに勝馬めぐりダービー終ふ |
三島 菊枝 |
「めぐり」は不要。 |
ダービや社会一斉動き出す |
天野喜代子 |
「社会一斉」は弱し。 |
ダービーの勝者拳を天に突く |
園田 靖子 |
「勝者の拳天を突く」 |
ダービーのどよめき凍る刹那かな |
ひぐらし |
中七下五弱し。 |
ダービの朝あの馬は何も見ぬ |
五十嵐信代 |
描写弱し。 |
女性でも駿馬で競ふ世相なり |
平岡 佳子 |
主題弱し。 |
ダービの菊花賞は六月祭り |
竹内 林書 |
主題弱し。 |
ダービーのはずれ馬券が風に舞ふ |
千葉ちちろ |
古し。 |
ダービーの出馬の気合息吹いて |
櫻木 とみ |
古し。 |
ダービー後砂塵より多し紙吹雪 |
中村美智子 |
中七の説明を捨てたい。 |
ダ−ビ−来忘我の境やつい一瞬 |
柴田 憲 |
説明でなく描写を。 |
ダービー暦二十年目の大当たり |
谷 美雪 |
説明でなく描写を。 |
ダービーの駿馬目覚める夜明けかな |
大江 月子 |
説明でなく描写を。 |
ダービーの惜しい馬券を捨てきれず |
礒部 和子 |
説明でなく描写を。 |
ダービーの感動伝ふ画面かな |
尾崎喜美子 |
説明でなく描写を。 |
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海紅切絵図 |
中央に鬼神を祀り溝浚へ |
海 紅 |
麦笛のふるさとといふ唄を二度 |
同 |
週給のすべてを持ちてダービーへ |
同 |
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