わくわく題詠鳩の会会報93   ホーム
鳩ノ会会報93(令和元年9月末締切分)
兼題 稲妻・女郎花

【Advice】稲妻は和歌のころからのテーマ。稲を実らせる光で、一瞬のことゆえ、一瞬は使わないこと。女郎花も和歌の時代からの題目。その漢字の面白さを忘れないこと。つまり女性に見立てる約束がある。男の見立てには、同類の大きめで白い花をつける男郎花(ヲトコヘシ)がある。今回は即興で別案を提示する方法を採用した。どっちがよいか、自分で考えて。なお、前回の「二つの基本文型」を忘れずに句作を楽しんでください。

◎稲妻の走り込みたる遠田かな   貴美
→余情あり。一案「稲妻の駆け込んでゆく遠田かな」

◎稲妻やヒーローごつこ停止する   智子
→ドラマの一コマのようにわかりやすい。「する」は邪魔。一案「稲妻やヒーローごつこ急停止」

〇稲妻や一瞬皆の青白く       鹿鳴
→「青白く」は怖い。また稲妻は古くから「瞬時」の比喩なので「一瞬」は無駄。逆に「稲妻やみんな輝く囲炉裏端」などとプラスに描いてはどうか。

〇千の松一閃海をいなびかり   瑛子
→「一閃」は無駄。稲光とはそういうものだから。一案「稲妻にまた顕はなる千の松」

〇利根の空一刀両断いなびかり  ひろし
→安定した描写だが、ありふれている景色ゆえ、作者の情がみえない。

〇稲つるみ筑波に雌峰雄峰かな   海星
→安定した描写だが、ありふれている景色。

〇稲妻や関東平野闇の中       悠児
→関東平野の闇を稲妻が走った、というだけに終わっている。これを報告とい言って嫌う。一案「光明のごとくに闇を稲つるみ」

〇稲妻や添寝の伴れは大鼾   窓花
→狂句としては可。「添い寝」の効果出ていない。「伴れ」は一般的でない。一案「稲妻や添ひ寝のいびき愛しき」


〇稲妻や闇を切り裂くナイフのよう  右稀
→「闇を切り裂く」は稲妻そのものだから、つまり言わなくてよいものだから捨てる。そうすると、「稲妻」と「ナイフ」だけが残る。よって、いわゆる隠喩に再挑戦。一案「稲妻は心のナイフ夫(つま)を待つ」ナンチャッテ。

〇いなづまや四畳半での秘めし恋   由美
→言い過ぎているのでリアリティがない。一案「いなづまや帰るすべなき四畳半」ナンチャッテ。

〇稲妻よ切り取る胃の腑痛みをり   和子
→「切り取る胃の腑」とはこれから、それともすでにないのか。あるいは比喩か。このあたり曖昧。一案「稲妻よ我に胃の腑の病あり」

◎漫ろゆく人は一瞥女郎花   千年
→「は」と決めつけないほうがよい。一案「すずろゆく人も一瞥女郎花」


◎無頼派の月命日や女郎花   ひぐらし
→無頼派と女郎花が付きすぎる点に難あり。一案「無頼派の特別展や女郎花」としたが、これも同じで、作為が鼻につくかも。

〇遠くから見つめてる恋女郎花  しのぶこ
→恋する主体があいまい。一案「女郎花初めはみんな片思ひ」


〇絵手紙の縁いつぱいの女郎花   真美
→「絵手紙」という素材は新鮮。だが報告にとどまる。


〇女郎花ひよろりと子犬嗅ぎゆきぬ   憲
→「ひよろり」は女郎花そのものゆえ無駄。「嗅ぐ」も汚らしい。一案「女郎花今日のお客はまだ子犬」


 
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