【巴里祭】一七八九年七月十四日、パリ市民バスチーユ牢獄を占拠。 |
◎巴里祭や錆の浮き出し洋食器 |
金井 巧 |
景情整ひたる。 |
○パリー祭真白く高きシェフの帽 |
梅田ひろし |
「高き」がよい。 |
○持ち唄は演歌一曲パリー祭 |
堀口 希望 |
シャンソンも演歌なれば。 |
○大川を水上バスの灯巴里祭 |
松村 實 |
「大川の」 |
○政局の行方は知らずパリ祭 |
天野 さら |
「知らず」では物足りなき感。 |
○乳ふくませパリ祭といふ革命思ふ |
西野 由美 |
「といふ」不要。 |
○巴里祭に託つ到来ワインかな |
柴田 憲 |
「かな」に別案がほしい。 |
○つば広き帽子ななめにパリー祭 |
青柳 光江 |
懐かしき昭和を思う。 |
○角帽の酔ひ潰れをり巴里祭 |
ひぐらし |
懐かしき昭和を思う。 |
○引き出しの奥のリモージュ巴里祭 |
根本 文子 |
リモージュは焼き物か。 |
○パリー祭ドアに鈴鳴る喫茶店 |
大江 月子 |
さりげなさよき。 |
○シャンソンを聞くたび想ふ巴里祭 |
天野喜代子 |
素直でよろし。 |
思ふ人打ち明け合いし巴里祭 |
水野千寿子 |
目に見ゆる景が欲しい。 |
オムレツに血の色のせて巴里祭 |
安居 正浩 |
「血の色のせて」恐ろし。 |
星一つそつとみつめるパリ祭 |
小出 富子 |
叙景の効果弱し。 |
スカートの裾舞い上がり巴里祭 |
つゆ草 |
叙景の効果弱し。 |
巴里祭やマリー・アントワネットの貸衣装 |
谷 美雪 |
こんな貸衣装もあるか。 |
巴里祭ささやく歌も空の下 |
吉田いろは |
叙景の効果弱し。 |
モガ・モボと父母も言はれし巴里祭 |
礒部 和子 |
「父母も言はれし」不要。 |
パリ祭や今日あることの有難き |
尾崎喜美子 |
「有難く」か「有難し」か。 |
畑仕事今日パリ祭と腰ラジオ |
尾崎 弘三 |
「腰にラジオ」としたい。 |
巴里祭を見たくてビデオ借りに行き |
中村美智子 |
「借りに行く」 |
パリ祭とかはり世界史遥かなり |
清水さち子 |
「とかはり」「遥か」難解。 |
巴里祭マリーという名の子犬かな |
五十嵐信代 |
「マリー」だけではやや無理。 |
雨降るも踊りや歌や巴里祭 |
竹内 林書 |
「雨の中の」 |
幻惑のパリ祭病窓夕日燃ゆ |
櫻木 とみ |
「病窓」で主題が割れて惜し。 |
巴里祭といへどかそけき思ひかな |
市川 千年 |
目に見ゆる景が欲しい。 |
巴里祭に今年も来てねと六十路歌手 |
椎名美知子 |
目に見ゆる景が欲しい。 |
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【凌霄花】塵とりに凌霄の花と塵すこし 素十 |
◎凌霄花潮のにほひの髪に挿す |
青柳 光江 |
景情整いたる。 |
◎凌霄の花まで送り別れけり |
吉田いろは |
省略が利いて可。 |
◎民宿の茶色い畳のうぜん花 |
五十嵐信代 |
「凌霄花」と漢字に。 |
◎凌霄花先輩の恋正念場 |
西野 由美 |
「先輩」とは面白い。 |
◎凌霄花真砂女の恋句肯はず |
堀口 希望 |
「恋句」あるいは「恋を」。 |
○芭蕉句碑木曾路を灯す凌霄花 |
根本 文子 |
「芭蕉句碑」とまで言えば重し。 |
○凌霄の天より陣を張るごとし |
市川 千年 |
新しい感慨。 |
○凌霄花庭で遊ぶ子元気良し |
堀 眞智子 |
素直でよろし。 |
○凌霄や湖かぜ抜くるレストラン |
松村 實 |
凌霄が涼しく見ゆる。 |
凌霄花生家の庭にアーチ成す |
天野 さら |
「成す」よりも「迎へる」か。 |
去りゆく背のうぜんかずらに語り継ぐ |
櫻木 とみ |
「去りゆく背」未消化。 |
自著渡す含羞の人ノウゼン咲く |
水野千寿子 |
「凌霄花」 |
お屋敷に堂々として凌霄花 |
つゆ草 |
「堂々として」不要。 |
蝋纈の染め見事なり凌霄花 |
谷 美雪 |
「凌霄を染めて蝋纈見事なる」 |
凌霄の生にむせたり密かごと |
大江 月子 |
「生に」不要。 |
凌霄花剪定にはおしい花暖簾 |
礒部 和子 |
「剪定に惜しき凌霄…」 |
太陽と色競ひをり凌霄花 |
尾崎喜美子 |
「太陽の」 |
日暮れすぎのうぜんかづらの花の色 |
尾崎 弘三 |
「凌霄の日暮るる頃の色が好き」 |
凌霄花にあり咲く美学散る美学 |
安居 正浩 |
凌霄に限るまい。 |
散り際のいさぎよしさや凌霄花 |
小出 富子 |
凌霄に限るまい。 |
太陽に抗ひつづけ凌霄花 |
梅田ひろし |
中七重し。 |
凌霄の花日食に影消ゆる |
金井 巧 |
主題とらえがたし。 |
逝きし人はやめぐり来て凌霄花 |
清水さち子 |
死者が巡り来る誤解が生ず。 |
主去りてのうぜんの花守る家 |
椎名美知子 |
花を守るか、花が守るか。 |
他の木にからみ妖艶売り |
竹内 林書 |
妖艶と見る趣向は面白い。 |
青空を突き射し映ゆる凌霄花 |
天野喜代子 |
叙景の効果弱し。「射て」 |
凌霄花アーチの下の揺れる闇 |
中村美智子 |
叙景の効果弱し。 |
校庭に咲き零るるやのうぜん花 |
ひぐらし |
叙景の効果弱し。 |
凌霄の花の命や朱のあふれ |
柴田 憲 |
叙景の効果弱し。 |
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【昼寝】 手枕に黒髪あふれ昼寝海女 上田土世起 |
◎昼寝とは可愛いい言葉保育園 |
櫻木 とみ |
ありそうでなかった新鮮さ。 |
○昼寝覚め夢のつづきの宿場町 |
根本 文子 |
羨ましき旅寝かな。 |
○父知らぬ子も定年の昼寝かな |
水野千寿子 |
早く父を失いし人の半生。 |
○昼寝して明日あることを忘れたり |
安居 正浩 |
思い当たる節あり。 |
○昼寝して初めから読むストーリー |
大江 月子 |
読み直すということならん。 |
○はらがけの小さく並ぶ昼寝かな |
吉田いろは |
保育園などが彷彿と。 |
○竣工の間近き木の香三尺寝 |
堀口 希望 |
大工さんなどと思われる。 |
○大昼寝覚めて解けたる詰将棋 |
金井 巧 |
思い当たる景なり。 |
○風のふと顔をよこぎる昼寝覚め |
清水さち子 |
思い当たることあり。 |
○まどろみて母の手たぐる昼寝かな |
尾崎喜美子 |
小さき子が彷彿と。 |
○御香など焚きて少しの昼寝かな |
つゆ草 |
「香」と「少し」が似合う。 |
浜風に乗る波の音昼寝歌 |
尾崎 弘三 |
「浜風に乗る」不要。 |
旅帰り昼寝に旅の続き見る |
礒部 和子 |
「旅帰り」再考か。 |
日曜静、猫と仲く昼寝かな |
竹内 林書 |
「日曜静か猫と仲良く昼寝して」 |
静かさを呉れたり孫の昼寝かな |
堀 眞智子 |
「くれたる」 |
三尺寝遠くに聞こゆ宅急便 |
青柳 光江 |
「遠く聞ゆる」 |
呼び鈴の夢騒がしく昼寝中 |
中村美智子 |
思い当たる景なれど弱し。 |
昼寝覚ただぼんやりと大胡坐 |
柴田 憲 |
思い当たる景なれど弱し。 |
不眠症昼寝すがしき高令者 |
天野喜代子 |
思い当たる景なれど弱し。 |
昼寝する少年ヒーローに変身中 |
五十嵐信代 |
思い当たる景なれど弱し。 |
絵葉書を記す甲板昼寝覚め |
松村 實 |
思い当たる景なれど弱し。 |
昼寝して主婦の座しばし放棄かな |
天野 さら |
思い当たる景なれど弱し。 |
関取の鼾轟く大昼寝 |
ひぐらし |
思い当たる景なれど弱し。 |
昼寝覚タイムスリップ子らの声 |
椎名美知子 |
素直なれど弱し。 |
ふるさとの四方山話昼寝かな |
小出 富子 |
帰省と見たが…。 |
物草と言ひたきは言へ大昼寝 |
梅田ひろし |
やや古風なり。 |
大揺れの大波小波昼寝かな |
谷 美雪 |
場を明らかにしたい。 |
子は午睡とんぼは池で産卵す |
西野 由美 |
取合せの効果弱し。 |
昼寝して太宰の街の職安へ |
市川 千年 |
主題分離せり。 |
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海紅切絵図 |
祐三も嗣治も若し巴里祭 |
海 紅 |
一途なること凌霄花を掃かぬこと |
同 |
食卓の急須の横に母昼寝 |
同 |
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