わくわく題詠鳩の会兼題解説

◆ 兼題解説 春雨・山吹 ◆

春雨(はるさめ)
芭蕉句 笠寺やもらぬ崖(いはや)も春の雨(千鳥掛)
春雨や蓬をのばす草の道(草の道)
不精さやかき起こされし春の雨(猿蓑)
春雨や蓑吹きかへす川柳(はだか麦)
〔本意・形状〕 『三冊子』に「春雨は小止みなく、いつまでも降り続くやうにする。三月をいふ。二月末よりも用ふるなり」とある。静かにしとしと降り続く晩春の雨が春雨であり、独特の優雅な趣を持つ雨である。そして草木の芽を育て、花の蕾をふくらます、希望のこもる雨でもある。
〔季題の歴史〕 「あしひきの山の間照らす桜花この春雨に散りゆかむかも」(『万葉集』巻十・春雑)。「わがせこが衣春雨降るごとに野辺のみどりぞ色まさりける 貫之」(『古今集』春上)。
〔類題 傍題〕 春の雨 春雨傘 膏雨(こうう)
〔例   句〕 春雨や暮れなむとして今日も有り   蕪村
春雨や小磯の小貝ぬるるほど     蕪村
春雨や傘高低に渡し船      正岡子規
春雨のかくまで暗くなるものか  高浜虚子
春雨の上がりし土を掃いており  星野立子
山吹(やまぶき)
芭蕉句 ほろほろと山吹散るか滝の音(あらの)
山吹や笠に指すべき枝の形リ(芭蕉句集草稿)
山吹や宇治の焙炉(ほいろ)の匂ふ時(猿蓑)
〔本意・形状〕 ばら科の落葉低木で山野に自生し、黄金が連想されることで、古くから庭にもひろく植えられている。一重、八重、白山吹もある。日本固有の植物とされる。
〔季題の歴史〕 「蛙鳴く甘南備川に影見えて今が咲くらむ山吹の花  厚見王」(『万葉集』巻八・春雑)。「吉野川岸の山吹ふく風に底の影さえ移ろひにけり  紀貫之」(『古今集』巻二・春下)。古来より詩歌に多く詠われている。
〔類題 傍題〕 面影草 かがみ草 八重山吹 白山吹
〔例   句〕 山吹や井手を流るる鉋屑       蕪村
山吹や小鮒入れたる桶に散る     正岡子規
濃山吹俄かに天のくらき時      川端茅舎
やすらかに死ねさうな日や濃山吹   草間時彦
山吹の一重の花の重なりぬ      高野素十
(根本梨花)


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