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◎初句会富士近ければ席題に 和子
【評】過不足のない佳句。表現論的には模範と言ってよい。
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◎思ひきり冒険の句や初句会 啓子
【評】「思ひきり」がとてもいいね。初句会だものね。 |
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◎師の言葉ことさら厳し初句会 ひろし
【評】めでたいはずの初句会が、厳しい指導で引き締まる。それがかえって初句会らしい。
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○初句会米寿祝の夜となりぬ 千年
【評】こうしたことはよくあるね。更なる凝視を試みるなら「夜となりぬ」の再考か。 |
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○入口に草履も三足初句会 ちちろ
【評】「三足」の効果薄し。「草履も並ぶ」などの方が読者に親切。
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○傘寿なる余生愉しむ初句会 山茶花
【評】素直な表現がいいね。「愉しむ」が捨てられればもっといいね。 |
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○カラオケに憂さ晴らしけり初句会 希望
【評】「憂さ晴らしけり」が正直であり重たくもあるね。句会の成績が悪くて憂さ晴らしをするように読まれるとまずいから、「二次会はカラオケになる初句会」などと抑制したらどうだろう。
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○常連の顔改まり初句会 直久
【評】「改まり」は「引き締まる」という意味なのだろうね。そこに初句会らしさを発見したんだね。 |
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○あの人はいつもの調子初句会 瑛子
【評】初句会だっていつも通りという姿勢もひとつの識見。「あの人は」を捨てられると十七音が引き締まると思う。 |
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○初句会わが意のいまのありどころ 憲
【評】「わが意のいまのありどころ」が独り善がりだね。姿先情後。読者のことを考えた写生がほしいね。 |
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○吹雪舞ふ丹波の里も初句会 佳子
【評】「舞ふ」は要らない。「里も」の「も」も要らない。何故かは自分で考えて。 |
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◎潮花に吠える御神所太鼓かな ひぐらし
【評】「波の花(潮花)」という季題は絵端書(名所)俳句になりやく、むずかしい。以下のほとんどの句がそうだけれど、その典型にもみえるこの句で指摘しておくね。
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◎波の花能登は七尾の旅日記 月子
【評】「波の花」に「能登の七尾」はよく似合う。誰の「旅日記」か明らかにしないという抑制感が上品にしているね。
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◎淡きもの集まつてゐる波の花 酢豚
【評】新鮮だが、十七音の力のようなものが不足しているとみる。
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○波の花ひとたび見たし旅支度 貴美
【評】表現に無駄なきところよし。まだ「旅支度」の段階で、実際にみていないところが弱いね。「ひとたび見たし」というほど稀少なものではないので、大袈裟な印象をもたれる可能性がある点に注意。 |
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○波の花荒磯の夕陽に舞ひ踊る やすし
【評】「舞ひ踊る」が要らないね。「夕陽」は「夕日」でいいね。「波の花」を主役にするために「荒磯の夕べ」として「夕日」を言外、余韻に期待するほうがいいね。
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○蒼天に波の花ちる悲歌のごと むらさき
【評】主観がよく伝わる句だね。しかし、読者の方を向いた「救い」のようなものが描かれないと共鳴はむずかしい気がする。 |
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○罪人を追ひつめる崖浪の華 由美
【評】「罪人を追ひつめる崖」とは面白い比喩。でもボクなら「崖」を捨てる。 |
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○波の花見たしと言ひて逝きし父 文子
【評】まだ自分の世界を抜け出していない表現だね。凝視、熟成の時間が必要だね。 |
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