鳩ノ会会報95(令和二年1月末締切分) |
兼題 冬月・千鳥 |
【Advice】詩は感情や思想の表現。表現するには、まず確かな思想や感情と、それを盛りつける器が必要。その二つを学ぶために古典がある。冬の月なら「襟巻に首引き入れて冬の月」(杉風・猿蓑)、千鳥なら「星崎の闇を見よとや啼く千鳥」(芭蕉・笈の小文)あたりか。こうした古典から型(mold)と心(emotion)を学ぶ。学ぶ(study)は真似る(wear)こと。模倣を恥と思ってはならない。手本を持たない人を身勝手という。型が身についていない人に、型破りはできない。伝統を知らない人から前衛は出て来ない。あなたに模倣したい古典はありますか。 さて、今回から句の評価を示す符合としてABCを用います。誰もが納得できる評価基準を公表して、句会においても〈鴉の勝手〉のような互選の混乱を脱出するためです。 ABCの意味するところは以下の通りです。俳句を通して、これからも親和や共鳴をお楽しみください。 A:省略が利いて、抒情あきらかな句 B:季感が備わるスケッチ C:焦点定まらぬつぶやき |
A冬の月ショートステイの父拾ふ 千年 ・眼前致景。この作者の代表句になるだろう。 |
A折れかかる心に明り寒の月 和子 ・中七「心に届く」とか「心をともす」という手もある。 |
Aひと言を悔いて止まざる冬の月 ひろし ・悔いは本当に「ひと言」の失敗。冬の月のように脳裏に残る。 |
A御手許句会懐かしや冬の月 ひぐらし ・「伊藤無迅を悼む」などと前書をつけたい。 |
A頑張れの一言嬉し冬の月 真美 ・素直な句。冬の月が励ましてくれているのかも。 |
B冬の月気候の危機が胸の奥 静枝 ・「気候の危機」がやや抽象的。 |
B冬月や不思議を吾子と語りけり 貴美 ・「不思議」がやや抽象的。 |
B寒月の皓皓と大地凍みゆく 憲 ・景情、やや新鮮みに欠ける。 |
B稜線を銀線となす冬の月 鹿鳴 ・抒情やや物足りなし。 |
B猫背伸びふと立ち止まる冬の月 智子 ・立ち止まるのは猫か、作者か。 |
B凍月や保護犬をなで募金せり 由美 ・凍て月、保護犬、募金、素材が多すぎる。 |
Bやや風の無蓋のホーム冬の月 悠 ・寒さだけは伝わる。 |
A灯台を目指す足跡小夜千鳥 海星 ・千鳥は和歌の頃から声を愛でること多く、意思をもつかのような足跡は新鮮。 |
B共に見し千鳥も友も何処とや 香粒 ・「いま何処」とか「今はなし」だろうね。 |
B浦千鳥それからひとつレンズ雲 瑛子 ・「レンズ雲」新鮮。「浦千鳥」との関わりがほしい。 |
B坊や連れ子守唄する小夜千鳥 窓花 ・「連れ」は名詞でなく、「坊やづれ」という接尾語とみた。「小夜千鳥」は歌詞なのか、みているのかが曖昧。 |