わくわく題詠鳩の会会報 45   ホーム
鳩ノ会会報45
兼題 七五三・目貼・石蕗の花
義士烈女の世に名をのこせしを見れば、大かたは不幸の人々なり。
(秋成・茶か酔言)
【七五三】髪置・髪上・髪削、袴着・帯解(紐直)の際の氏神詣で。近世後期より。
○水あれば水と戯ぶれ七五三 安居 正浩 愛らしき一景。
○袴着やVサインして宮参り 礒部 和子 今様にて新鮮。
 頑なに草履を拒む七五三 水野千寿子 愛らしき一景。
 腰に剣三つの襟章千歳飴 谷  美雪 愛らしき一景。
 七五三胸張つてくる背広の子 梅田ひろし 愛らしき一景。
 七五三うなじの形もママに似て 米田かずみ 愛らしき一景。
 指折りて七五三待つ小さき胸 つゆ草 「小さき胸」弱し。
 千歳飴やうやく五つになりにけり 吉田いろは 述懐弱し。
 七五三脱ぐ間もなく飴横かじり 西野 由美 「終へて」の一語が必要。
 七五三テディと共に祝詞受く 中村美智子 「テディ」難解。
 黄金に輝く銀杏七五三 天野喜代子 季重なりで弱し。
 脱ぎ捨ててもう飛び出せる七五三 松村  實 「終へて」の一語が必要。
 父母の輪のなかにゐる七五三 千年 素直なり。
 雨やみて子も孫も無し七五三 ちちろ 初五中七難解。
 姫様を笑顔が囲む七五三 堀 眞智子 素描に終わる。
 七五三晴れ着も知らず育ちけり 根本 文子 晴着の句になった。
 七五三姉をいたはり橋渡る 中村  緑 一記憶に終わる。
 水兵の服着せられし七五三 ひぐらし 一記憶に終わる。
 夫婦坂上れば神社七五三 鷲田 裕克 夫婦の句になった。
 禰宜さんも同じ字なり七五三 堀口 希望 素描に終わる。
 神妙に神様探す七五三 天野 さら 素描に終わる。
 写真館先づは済ませて七五三 清水さち子 素描に終わる。
 足袋草履金髪の子の七五三 五十嵐信代 素描に終わる。
 髪飾り参道に揺れ七五三 小出 富子 素描に終わる。
 千歳飴持つ子抱き上げ階へ 大江 月子 素描に終わる。
 七五三花嫁しんと分け入れり 柴田  憲 素描に終わる。
【目貼】冬構のひとつで、窓や戸の隙間を塞いで風雪をしのぐ用意。
◎目貼して太宰治を買ひに行く 吉田いろは 意表を突く転じ。
○野ざらしの句を目貼せし借家去る 千年 「出る」と穏やかにするがよいか。
○厚目貼老いたる母の愚痴多し 礒部 和子 「母は」。
 目貼して家中のもの生き生きす 安居 正浩 大仰なり。
 目貼して父の目やさし夢の中 中村  緑 一記憶に終わる。
 目貼りせし世は移ろへど有るがまま 柴田  憲 述懐重し。
 目貼して出入りの多き馴染顔 清水さち子 中七下五難解。
 目貼して喉元のグチ封じ込め 水野千寿子 「喉元のグチ」難解。
 無人家の目貼りのテープしがみつき 中村美智子 「しがみつき」難解。
 透明な目貼りに替へて北の空 根本 文子 「北の空」難解。
 北窓の目貼なつかし新所帯 小出 富子 「新所帯」再考。
 目張りして風聞く朝の白さかな 大江 月子 「白さかな」再考。
 反古紙ですつきり目貼祖父の腕 谷  美雪 「すつきり」不要。
 目貼する築七十年の板の壁 つゆ草 素描に終わる。
 目貼して納屋は春まで開かずの間 堀口 希望 素描に終わる。
 目貼りせる部屋に斜めのひざし射る 五十嵐信代 素描に終わる。
 目貼してイーハト―ブのものがたり ひぐらし 素描に終わる。
 目貼して大仕事のごと良しと言ふ 堀 眞智子 素描に終わる。
 目貼りしていよいよ荒き風の音 梅田ひろし 素描に終わる。
 新建築目貼の隙間見当らず 天野喜代子 新築の句になった。
 目貼して心構への自ら 天野 さら 観念が先行した。
 春までは空の広さも目貼かな ちちろ 観念が先行した。
 目貼りするほどのことなき友ありて 鷲田 裕克 観念が先行した。
 たましひの目貼り破れてハムレット 松村  實 痛々しき譬喩。
 目貼する何はなくとも朗らかに 西野 由美 目貼の本意復習。
【石蕗の花】キク科常緑多年草。黄の頭状花。名は葉が蕗に似るゆえ。
◎日時計の影は三時へ石蕗の花 千年 石蕗の花に三時はよく似合う。
◎就職の悩み聞きをり石蕗の花 根本 文子 石蕗の花は何にもよく似合う。
◎亡き母の誕生日ぞよ石蕗の花 水野千寿子 石蕗の花はまことによく似合う。
◎生真面目を終生とほす石蕗の花 安居 正浩 石蕗の花はここでもよく似合う。
◎石蕗の花お堂に絵馬を結びけり 堀 眞智子 石蕗の花はまたまたよく似合う。
◎紅顔の剣士ら出で来石蕗の花 松村  實 石蕗の花はなぜかよく似合う。
◎古希といふ歳たまはりて石蕗の花 清水さち子 石蕗の花はふしぎによく似合う。
◎薬飲み己はげます石蕗の花 ちちろ 石蕗の花はまことによく似合う。
◎はきはきとした子に育ち石蕗の花 吉田いろは 石蕗の花はここでもよく似合う。
◎尼寺の光あつめて石蕗の花 梅田ひろし 石蕗の花はまたまたよく似合う。
◎父のこす家族の写真石蕗の花 西野 由美 石蕗の花はなぜかよく似合う。
◎暁闇の道を照らすよ石蕗の花 中村美智子 石蕗の花はふしぎによく似合う。
◎一面に石蕗の花咲く曽良の墓 天野喜代子 石蕗の花はまことによく似合う。
○石蕗の花咲いて路地裏明るうす 天野 さら 石蕗の花はここでもよく似合う。
○灯の下盛り塩と石蕗の花 ひぐらし 石蕗の花はまたまたよく似合う。
○退院の華やぐ声と石蕗の花と 谷  美雪 石蕗の花はなぜかよく似合う。
○翳りても安房は明るし石蕗の花 堀口 希望 石蕗の花はふしぎによく似合う。
○背伸びして陽を浴びたがる石蕗の花 米田かずみ 石蕗の花はまことによく似合う。
○石仏に花蓋拡げる石蕗の茎 五十嵐信代 「花がさひろげ」。
 母炙る手元あやふし石蕗の花 小出 富子 母の作業姿見えず。
 背の高き石蕗人に囲まれて つゆ草 なにゆえ囲まれているや。
 石蕗見れば客帰る頃黄の立ちぬ 大江 月子 見ているのは誰。
 遠目には一叢なりや石蕗の花 柴田  憲 素描に終わる。
 大隈の海波高し石蕗の花 鷲田 裕克 「大隈」は「大隅」か。難読。
海紅切絵図
座布団に袴着の子の小ささよ 海 紅
目貼して甲斐なき親の家恋し
柳井綾子といふ大慈石蕗の花
 
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