わくわく題詠鳩の会会報89   ホーム
鳩ノ会会報89(平成31年1月末締切分)
兼題 冬籠・氷

【Advice】冬籠もりは和歌にもよく詠まれることば。俳諧では寒さを避けて室内に見つける愉しみを詠む。氷も和歌から詠まれて凍った水をいうが、そのように感じられる場合もいう。

◎米播きて雀とあそぶ冬ごもり       静枝
→これは「冬ごもり」の情を理解している句。「播いて」でよい。

◎新しき本の匂ひや冬籠           真美
→「冬ごもり」と読書の楽しみを結んだ。季題のイメージを理解している句。

◎冬籠厭かず古文書読み解きて       ひろし
→これも「冬ごもり」に本意を理解している句。ただし、重たい「厭かず」なる表現は再考して、季感を明るくしたい。

◎郵便のおとなふ午後や冬籠り        貴美
→手紙を冬ごもりの楽しみとする句。「おとなふ」は美しい言葉だが古風。日常語にしたい。

◎冬籠いくつも古い廊下疵        悠児
→屋内でやんちゃに遊んだ空間を詠む。「廊下疵」がおもしろい。

〇蒟蒻を唐揚げにして冬籠       千年
→こんな楽しみ方があってよい。

〇ひとりごとの人形遊び冬籠     ムーミン
→子どもの遊びを詠む。回顧の作か。古風だが安定した表現。

〇YouTubeブラインドタッチ冬ごもり    窓花
→当世風の若者の冬ごもり。新鮮だが、そこまで。


△会ふ日数暇順送りにて冬籠り        香粒
→「暇順送り」がわからなかった。

△こころなし声もまあるく冬籠        瑛子
→「声もまあるく」がわかるようで、わからない。姿先情後を心掛けたい。

△仏壇のお守り託して冬籠       山茶花
→「お守り託して」がわからない。

△一人病み毛糸片手に冬籠        直子
→気の毒な景で正視できない。病を病以上の人生に昇華して詩は詩になる。


△冬篭もり足音近し瀬戸の庭       喜美子
→表現が「冬篭もり」「足音近し」「瀬戸の庭」という三つに分かれてしまって失敗。切れは一箇所が原則。それを守る方が、自己表現しやすい。ここの「瀬戸」の意味もとらえにくい。

〇門衛の氷れる髭や番外地      ひぐらし
→一般の生活空間を離れた土地を詠む。古風だが安定した表現力。

〇漬し菜を沈めて樽の氷かな        鹿鳴
→氷って盛り上がる冬の漬物樽がよく描かれている。しかし、そこまで。


〇さざなみの形を残したる氷        海星
→いまふうにいうと、「あるあるネタ」だね。表現は出来ているが、そこまで。

〇氷上に声響かせて子ら遊ぶ        右稀
→スケートリンクの景だろう。上手い句ではないが、素直と評価してよい。

〇噴水の氷かざして見つめ合ひ        智子
→テーマは仲良き恋か。「氷かざして」がやや難解。

〇腕白が池の氷を持ち来たり        由美
→よくわかる句。だが、そこまで。

〇滝こほりシャッター音の響くのみ    千寿
→「滝こほり」は「凍て滝」とする方が安定感あり。「のみ」を用いる意図が不安定。

△憂きことは太古の湖へ薄氷        和子
→「太古の湖」は何かの比喩だろうか。抽象的で失敗している気がする。


 
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