【Advice】冬籠もりは和歌にもよく詠まれることば。俳諧では寒さを避けて室内に見つける愉しみを詠む。氷も和歌から詠まれて凍った水をいうが、そのように感じられる場合もいう。
|
|
◎米播きて雀とあそぶ冬ごもり 静枝
→これは「冬ごもり」の情を理解している句。「播いて」でよい。
|
|
◎新しき本の匂ひや冬籠 真美
→「冬ごもり」と読書の楽しみを結んだ。季題のイメージを理解している句。
|
|
◎冬籠厭かず古文書読み解きて ひろし
→これも「冬ごもり」に本意を理解している句。ただし、重たい「厭かず」なる表現は再考して、季感を明るくしたい。
|
|
◎郵便のおとなふ午後や冬籠り 貴美
→手紙を冬ごもりの楽しみとする句。「おとなふ」は美しい言葉だが古風。日常語にしたい。
|
|
◎冬籠いくつも古い廊下疵 悠児
→屋内でやんちゃに遊んだ空間を詠む。「廊下疵」がおもしろい。 |
|
〇蒟蒻を唐揚げにして冬籠 千年
→こんな楽しみ方があってよい。
|
|
〇ひとりごとの人形遊び冬籠 ムーミン
→子どもの遊びを詠む。回顧の作か。古風だが安定した表現。
|
|
〇YouTubeブラインドタッチ冬ごもり 窓花
→当世風の若者の冬ごもり。新鮮だが、そこまで。
|
|
△会ふ日数暇順送りにて冬籠り 香粒
→「暇順送り」がわからなかった。 |
|
△こころなし声もまあるく冬籠 瑛子
→「声もまあるく」がわかるようで、わからない。姿先情後を心掛けたい。
|
|
△仏壇のお守り託して冬籠 山茶花
→「お守り託して」がわからない。 |
|
△一人病み毛糸片手に冬籠 直子
→気の毒な景で正視できない。病を病以上の人生に昇華して詩は詩になる。 |
|
△冬篭もり足音近し瀬戸の庭 喜美子
→表現が「冬篭もり」「足音近し」「瀬戸の庭」という三つに分かれてしまって失敗。切れは一箇所が原則。それを守る方が、自己表現しやすい。ここの「瀬戸」の意味もとらえにくい。
|
|
〇門衛の氷れる髭や番外地 ひぐらし
→一般の生活空間を離れた土地を詠む。古風だが安定した表現力。
|
|
〇漬し菜を沈めて樽の氷かな 鹿鳴
→氷って盛り上がる冬の漬物樽がよく描かれている。しかし、そこまで。
|
|
〇さざなみの形を残したる氷 海星
→いまふうにいうと、「あるあるネタ」だね。表現は出来ているが、そこまで。
|
|
〇氷上に声響かせて子ら遊ぶ 右稀
→スケートリンクの景だろう。上手い句ではないが、素直と評価してよい。
|
|
〇噴水の氷かざして見つめ合ひ 智子
→テーマは仲良き恋か。「氷かざして」がやや難解。
|
|
〇腕白が池の氷を持ち来たり 由美
→よくわかる句。だが、そこまで。
|
|
〇滝こほりシャッター音の響くのみ 千寿
→「滝こほり」は「凍て滝」とする方が安定感あり。「のみ」を用いる意図が不安定。
|
|
△憂きことは太古の湖へ薄氷 和子
→「太古の湖」は何かの比喩だろうか。抽象的で失敗している気がする。
|
|