わくわく題詠鳩の会会報 44   ホーム
鳩ノ会会報44
兼題 花野・鶏頭・蓑虫
わが悪を言ふ者は師なり、わが好むを言ふ者は賊なり。
(わらんべ草・三五段)
【花野】華やぎにまじる淋しさ。
◎悪戯な風に花野が語り出す 礒部 和子 画竜点睛。
◎はぐれ雲花野眺むるごとく浮き 鷲田 裕克 画竜点睛。
◎妻と来てはなればなれに大花野 梅田ひろし 画竜点睛。
◎霊柩車花野を過ぎてゆきにけり 松村  實 作者の目優し。
◎搾りたて牛乳温し大花野 ひぐらし 取合せ穏当。
○人為なき筑波の山の花野かな 竹内 林書 素直なり。
○大花野だれも一人になりたがる 安居 正浩 述懐重し。
○眼帯の取れし恵みや花野風 吉田いろは 「恵み」大仰なり。
○遠目より風の冷たき花野かな 根本 文子 「冷たき」重し。
 花野道仲良し小道通い道 水野千寿子 中七を視覚的に。
 静かなる花野に少女描きたし 小出 富子 少女は居るや否や。
 幾度も振り返りたき花野かな つゆ草 「振り返りたる」。
 花野道加薬ご飯とゆで玉子 谷  美雪 「道」不要。
 くったくや座せば花野に風渡る 大江 月子 「くつたくの」。「つ」大きく。
 ゆつくりと花野に足を踏み入れる 尾崎喜美子 上五の意図弱し。
 花野ふと少女のスキップ風ゆれる 西野 由美 「ふと」「ゆれる」不要。
 花野にて冠ひらひらかくれんぼ 中村美智子 中七の景色難解。
 行くところ花野なるべし古希迎ふ 清水さち子 「なるべし」不要。
 花野なり百姓一揆の小さき碑 堀口 希望 「なり」再考。
 浮かれでて心は空に花野道 天野 さら 「心は空に」難解。
 走りたき花野に試歩杖握り立つ 櫻木 とみ 座五重し。復調を祈る。
 過ぎし日々思ひ出しつつ花野ゆく ちちろ 素直なり。
 花野踏んでアガサクリスティ第一作 谷地元瑛子 心余りて言葉足らざる。
 ゆれている風情に憩ふ花野かな 堀 眞智子 「ゐる」。素描に終わる。
 鉄橋を渡れば花野ひろがりぬ 中村  緑 素描に終わる。
 大花野下り来る人ら目に入りぬ 柴田  憲 素描に終わる。
 パステルの美瑛の丘の花野かな 天野喜代子 素描に終わる。
 種差の海に真向かふ花野かな 千年 素描に終わる。
 少年も犬も花野の中に消ゆ 金井  巧 素描に終わる。
【鶏頭】鮮烈な色と形をどう詠むか。
◎葉鶏頭は一人ぼつちのフラメンコ 根本 文子 姿情整う。
◎鶏頭や乗つてすぐ着く渡し舟 礒部 和子 姿情整う。
◎戸を開けし日本の家や鶏頭花 谷地元瑛子 「開け放つ」。
○亡き父の撒きし鶏頭今に燃ゆ 尾崎 弘三 「今に」不要。
○鶏頭やグランマの織る机掛け 西野 由美 映発するものあり。
○鶏頭のかなたに衛星発射台 松村  實 もう少し近くてもよい。
○鶏頭はいのちの赤よ獺祭忌 堀口 希望 穏当なる把握。
○通学路鶏頭撫でるいつもの子 天野 さら 玉のような日常の一景。
○鶏頭の勝気に咲いて坪の庭 竹内 林書 中七の重さ気になるが。
○鶏頭を正面小さな生け花展 櫻木 とみ 「正面」がよい。
○ダム工事中断の地の鶏頭花 金井  巧 時事なるべし。
 鶏頭に野性の薄れ人もまた 安居 正浩 述懐重し。
 鶏頭の夜も気負ひてをりにしか 梅田ひろし 述懐重し。
 鶏頭花にんげんいまだ丸みなし ちちろ 述懐重し。
 鶏頭にべろべろさわれば子らの来る 大江 月子 「さはる」
 いつまでも赤鮮やかに鶏頭花 天野喜代子 素描に終わる。
 鶏頭や庭の番人ごとくあり 鷲田 裕克 「番人の如く鶏頭庭に立つ」。
 片想ひされど初恋鶏頭花 ひぐらし 「片想ひされど」不要。
 一本の鶏頭に先づ見られゐし 千年 「見られたる」「みつめらる」。
 鶏頭や草に交じりて咲くもあり 堀 眞智子 素描に終わる。
 鶏頭のそばでブランコゆれている 中村  緑 素描に終わる。
 鶏頭のなかに一本仏顔 吉田いろは 素描に終わる。
 鶏頭のビロード肌に触れてみる 尾崎喜美子 素描に終わる。
 道の辺の地蔵に供えし鶏頭花 中村美智子 素描に終わる。
 鶏頭は好かんと言ひて生えしまま 水野千寿子 素描に終わる。
 鶏頭や茎も花色宿しをり 清水さち子 素描に終わる。
 青空に緋色鶏頭燃えている 小出 富子 素描に終わる。
 子規の目に咲きて華やぐ鶏頭花 つゆ草 素描に終わる。
 鶏頭の鶏冠の下の種の海 谷  美雪 素描に終わる。
 真すぐな痩せ鶏頭や道の辺に 柴田  憲 素描に終わる。
【蓑虫】ミノガの幼虫。小枝や葉を糸で綴り、その中に住む姿を蓑を着た姿に見立てた。故事多し。
◎蓑虫や寧日送る母たらん 大江 月子 自照の心新鮮。
◎時々は蓑虫の如籠もりたし つゆ草 「ある時は」。
◎蓑虫と話せるやうになつてきし 千年 「ゐし」。
◎蓑虫や好きなもの着て揺れる頃 西野 由美 新しき蓑虫像。
◎首出している蓑虫は鳴くためか 安居 正浩 鳴く姿を想像して新鮮。
○蓑虫や単身赴任三年目 ひぐらし こんな時代もあった。
○蓑虫や子は集団にとけこめず 金井  巧 こんな時代もあった。
○蓑虫をヒョイとつついて下校する 尾崎喜美子 素直なり。
○雨よ風やさしくあれよ蓑虫に 小出 富子 素直なり。
 蓑虫や空中ブランコハンモック 谷  美雪 素直なり。
 蓑虫や届かぬ恋が風のなか 吉田いろは 素直なり。
 蓑虫は世渡り上手風まかせ 礒部 和子 素直なり。
 蓑虫のどうにもひつこみ思案かな 梅田ひろし 素直なり。
 蓑虫や一番星をそつと見る 中村  緑 「そつと」不要。
 蓑虫の父よと鳴けば父の声 天野 さら 虚子に「父よと鳴きて母もなし」
 蓑虫や湖畔のボートに雨の糸 松村  實 取合せ難解。
 小学校休ませ訪ひし蓑虫庵 谷地元瑛子 蓑虫庵の句になった。
 蓑虫をあまた生かして立枯るる 根本 文子 立ち枯れの句になった。
 風の音に戯れゆるる蓑虫は 天野喜代子 素描に終わる。
 蓑虫も器用不器用あるやうで 堀 眞智子 素描に終わる。
 枝先に蓑虫一つ風に揺れ 尾崎 弘三 素描に終わる。
 蓑虫を邪険にころがす童をり 水野千寿子 素描に終わる。
 蓑虫の蓑のうちなる天地かな 堀口 希望 素描に終わる。
 鬼の子が這い出んとして糸揺らす 中村美智子 素描に終わる。
 蓑虫の口モグモグを見てしまふ 清水さち子 素描に終わる。
 蓑の口鬼の捨て子か動きたり 柴田  憲 素描に終わる。
 蓑虫やいやしきこころ恥がはし ちちろ 素描に終わる。
 蓑虫やゆらゆらゆらと午後の庭 鷲田 裕克 素描に終わる。
 蓑虫は消えしと古技術人の言ふ 櫻木 とみ 難読にて誤読を恐る。
 蓑の虫よ吾も孤誚の春夏秋冬 竹内 林書 難読にて誤読を恐る。
海紅切絵図
遊び場は鉄道用地花野風 海 紅
銀巴里は二度行つただけ鶏頭花
蓑虫が好き一人旅もつと好き
 
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