わくわく題詠鳩の会


鳩の会会報120(令和6年7月末締切分)
夏の月・夕顔
【Advice】 今回の収穫は瑛子作「背伸びして干す」、つゆ草作「器はブルー」、貴美作「昔のことやけふのこと」、京子「故人と語り」、ひぐらし作「住めば都の」の五句。その他の人は自分の作をしばらく忘れて、この五句を繰り返しお読みいただき、心が洗われる思いを実感してください。それが日常生活に潤いをもたらし、今後の実力に結びつきます。
ちなみに季題「夏の月」は日中の炎暑からひとまず解放(開放)される思いを託す詞。「夕顔」は夕方の闇に浮かぶように花ひらき、朝方にはしぼむ白い花で、幽玄(神秘的)と評された詞。また『源氏物語』の巻名の一つで、物の怪に襲われて死ぬ女性の呼び名。近世には遊女の異称ともなりました。なお、若い果実は干瓢になります。
句の評価はABC三つの符合で評価しています。その意味するところは以下の通りです。
A:省略が利いて、抒情あきらかな句
B:季感が備わるスケッチ
C:焦点定まらぬつぶやき
A 月涼し背伸びして干すお気に入り    瑛子
「背伸びして干す」で詩情横溢。「月涼し」との融合もみごと。
A サラダ盛る器はブルー夏の月    つゆ草
本意を生かした名句。「器はブルー」が腕前。
A 夏の月昔のことやけふのこと    貴美
月を眺めやる作者。饒舌を控えて上品な句になった。 
A 月涼し故人と語り少し酔ふ    京子
格調高き句。「少し酔ふ」は腕前。
A ほろ酔ひの家路とぼとぼ夏の月    ちちろ
「ほろ酔い」ゆえに「夏の月」はことさら涼しいか。無事の帰宅を望む。
A 明日からは合併の町夏の月    真美
合併後の発展を祈る気持ちが出ている。
A ひとときの宴の後の夏の月    蛙星
心地よい「宴」が描かれた。
A 子規のこと語る熊楠月涼し   千年
「語る」内容を匂わせれば数倍面白いのだが。
オホーツク海にて
B 子を連れしザトウクジラや夏の月    由美
親子のザトウクジラに涼しげな月が似合う。「ザトウクジラ」でなくても似合うかなあ。
B 夏の月心に負ひし傷深く    ひろし
暑さから解放されるのが夏の月。よって二者融合せず。
B 突堤に赤き灯台夏の月     海星
「赤き灯台」と「夏の月」の涼味がなじまない。
B 勝敗の互ひの涙夏の月    エール
「夏の月」の涼味を生かしてほしい。
B 癒ゆる日を静かに待てば月涼し    馨子
静かに待たずとも「夏の月」は涼しい。
B 満月やまだ昇り来ぬ夏の月    美雪
「満月」「夏の月」は同義。省略を覚えたい。
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A 夕顔や住めば都の散歩道    ひぐらし
「住めば都」と「夕顔」がよく響き合う。
A 夕顔や恩師は海に近く住む    鹿鳴
夕顔を咲かせて住む恩師を思う句。
A 夕顔や開拓の駅の遠灯り    美知子
開墾まもない町。夕顔が際立つ遠景。
B 夕顔と記念に写す新紙幣    和子
新しい切り口だが、今ひとつ映像が定まらない。
B 夕顔の瓢箪となるさびしさに    梨花
なぜ「さびしさ」か、誰の「さびしさ」か。
B 夕顔や恋は一度と信じてた    窓花
嘆きに終わっていて救いがない。救いがほしい。


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