わくわく題詠鳩の会会報 41   ホーム
鳩ノ会会報41
兼題 貝寄風・目刺・一人静
我といふは煩悩なり
(一遍・一遍上人語録)
【貝寄風】浜辺に貝を吹き寄せる西風。芭蕉に「貝寄する風の手品や和歌の浦」
◎貝寄風や海のつづきに戦あり 安居 正浩 安定した措辞。
○貝寄風や子は単身で赴任地へ 金井  巧 安定した抒情。
○屏風岩貝寄風拒むごとく立ち 梅田ひろし 安定した叙景。
○貝寄風の波乗り捉ふ波頭 ひぐらし 「貝寄風や波乗りの乗る」
 貝寄風や砂の足あと消してゆく 中村美智子 「すぐ消ゆる」
 貝寄風や髪なびかせて行きし日も 清水さち子 「なびかせし日もありし」
 貝寄風や舞楽の袖をひるがへし 三島 菊枝 「ひるがへす」
 貝寄風や潮香孕みし船帰る つゆ草 「孕みし」重し。
 貝寄風や州浜にちりばむ貝合 谷  美雪 「貝合」再考。
 貝寄風にハングル容器も漂着し 水野千寿子 「も」要らず。「漂着す」
 渚には貝寄風と砂の音 尾崎 弘三 「渚には」要らず。
 貝寄風に乗りてサーフィン湘南に 天野喜代子 「乗りて」要らず。
 貝寄風のフェリーで帰る女学生 根本 文子 「で帰る」要らず。
 貝寄や手つなぐ親子包みゆく 尾崎喜美子 「包みゆく」要らず。
 貝寄せや家路を急ぐ女子高生 千葉ちちろ 「家路を急ぐ」要らず。
 貝寄風や飛び散る貝に砂やさし 小出 富子 「飛び散る貝」要らず。
 貝寄風や泡だつ磯にうごめくもの 西野 由美 「うごめくもの」を具体的に。
 貝寄風や白砂も松も捨てし海 堀口 希望 中七以下難解。
 貝寄風や水の都の和みたる 市川 千年 「和みたる」難解。
 貝寄風に洗ひ樽並ぶ西の街 五十嵐信代 「西の街」難解。
 貝寄風や瀬戸内の浜牛窓の 有村 南人 下五落ち着かず。
 貝寄風にコバルトブルーのポリタンク 天野 さら 漂着の景か。
 貝寄せや瀬戸の汀は遠のきて 大江 月子 なぜ遠のくのか。
 貝寄風の浜にぞくぞく鼓笛隊 吉田いろは なにが始まるのか。
 貝寄風に拾ひし貝に真珠あり 礒部 和子 うがち過ぎなり。
 貝寄風の海辺行きたし山家の娘 平岡 佳子 ただごとなり。
 貝寄や海辺の渦寄せ光る 竹内 林書 ただごとなり。
 貝寄風や夜船の光往来す 櫻木 とみ ただごとなり。
 もしかして貝寄風なれや東京湾 柴田  憲 ただごとなり。
【目刺】イワシやヒシコを竹や藁で数尾ずつ刺して干すところからいう。
◎ほほざしや卓袱台囲む子沢山 ひぐらし 懐かしき景。
○波の形に並んでをりし目刺かな 根本 文子 新鮮だが、場はどこか。
○明日には明日の風が目刺焼く 吉田いろは 傍には酒もあらん。
○汐風が目刺暖簾を分けて入り 尾崎 弘三 「目刺暖簾」の語面白し。
○目刺焼く匂ひに街の暮れそむる 三島 菊枝 平明なれど。
 檜葉敷きて伊豆の目刺の届きけり 堀口 希望 平明なれど。
 目を細め卒寿の母の目刺食む 尾崎喜美子 「目を細め」再考か。
 山がちの母の子育て目刺かな 水野千寿子 「山がち」の効果疑問。
 自家製よ声みづみづと目刺買ふ 柴田  憲 「自家製といふ声が聞こえて」
 妻の留守一人晩酌目刺焼く 千葉ちちろ 「一人」要らず。
 程よきに焼かれ目刺しの覚悟かな つゆ草 哀しすぎなり。
 かなしき目そつと藁ぬく目刺かな 五十嵐信代 うがち過ぎなり。
 床きしむ築五十年目刺食ふ 金井  巧 うがち過ぎなり。
 串はずし目刺静かに焼く夕餉 小出 富子 ただごとなり。
 目刺買ふ鬼門に頭を一つ刺す 谷  美雪 ただごとなり。
 目刺し食む微妙にとりどり塩加減 大江 月子 ただごとなり。
 頭から食へると目刺食つてみせ 西野 由美 ただごとなり。
 定ばんの目刺を添へ朝食かな 竹内 林書 ただごとなり。
 独り酒目刺で力つける夜 平岡 佳子 ただごとなり。
 目刺焼くにおひに釣られ猫唄ふ 中村美智子 ただごとなり。
 銚子港目刺にほれて送り状 礒部 和子 ただごとなり。
 目刺挿す軒の板目に冬日射す 天野喜代子 節分の景。
 目刺食み声を荒げることもなく 梅田ひろし なぜ荒げないのか。
 焼き目刺海の香ただよふ夕厨 天野 さら 中七饒舌なり。
 目刺焼くか錆びた脂の臭ひして 有村 南人 中七以下饒舌。
 空の海目刺の泳ぎ網のゆれ 櫻木 とみ 初五難解。
 客の母これがいいねと目刺焼く 清水さち子 「客の母」難解。
 自虐とは昼に目刺を焼くことか 安居 正浩 難解。
 目刺の頭起点となりて揺れてをり 市川 千年 難解。
【一人静】山地の林下に自生。楕円形の四枚の葉に包まれて、白色の花穂が美しい。
◎一人静茶室の丸き窓灯り ひぐらし 「茶室に」
○旅立ちや一人静が咲き揃ふ 五十嵐信代 餞の如きか。
○一人静隠れ里への切通し 谷  美雪 安定した季感。
○風わたるひとりしづかの揺るるほど 堀口 希望 安定した季感。
○ひとりしづか風を伝へてよりやさし 千葉ちちろ 「より」は助詞とみた。
○振り返る一人静の咲きし山 市川 千年 「咲きし」再考。
○ささやかれ一人静の咲いてをり 根本 文子 「咲いてをり」再考。
○ひざまづき一人静と話しけり 櫻木 とみ 「一人静に話あり」
 なにゆゑの涙か一人静咲く 小出 富子 涙する主体不明。
 地味といふ一生もあるまゆはき草 大江 月子 「一生もよし」
 蟻になる一人静の花の下 吉田いろは 初五難解。
 いにしへや吉野静はいまもなほ 柴田  憲 初五再考。
 愛されて一人静と言ふ響き つゆ草 初五再考。
 ブラブラと一人静を訪ね行く 尾崎喜美子 初五要らず。
 木の影の迫りて一人静かな 安居 正浩 初五中七難解。
 江戸道は荒れて人来ぬ一人静 天野 さら 「人来ぬ」要らず。
 林陰げ一人静の白い色 尾崎 弘三 林の陰に、の意か。
 寄り道す一人静に招かれて 金井  巧 安定した季感。
 ふいの雨一人静も濡るるまま 水野千寿子 「一人静は」
 木下闇一人静の点々と 天野喜代子 姿は整った。
 鉢の中一人静は睡つてる 中村美智子 ただごとなり。
 窓口に名札添へられ一人静 清水さち子 ただごとなり。
 一人静燃えたき我に不要なり 平岡 佳子 面白いが、題を逸れた。
 林門に一人静の光あり 有村 南人 「林門」の語熟さず。
 一人静人恋ふさまに揺らぎけり 梅田ひろし 中七甘し。
 一人静葉に守られて岨道に 三島 菊枝 中七甘し。
 一人静待てど来ぬ人忘れよか 西野 由美 中七以下甘し。
 離別して一人静と暮らしけり 礒部 和子 重し。
海紅切絵図
貝寄風や小児診療廃止すと 海 紅
再婚といふ仕合はせに目刺焼く
一人静二人静の隣りあふ
 
「鳩の会」トップへ戻る