|
◎餅花をくぐり寿三番叟 啓子
【評】ありふれているようで、案外詠まれていない気がする。
|
|
◎姉妹繭玉下げて紺屋町 瑛子
【評】どこの紺屋町でもかまわない。染めもの街と繭玉が似合うのだろう。
|
|
○仲見世の空清清し餅の花 ちちろ
【評】平明を評価する。餅花に仲見世は似合いすぎるほど。その点に詩として不足がある。
|
|
○涼やかに指さす稚児や餅の花 むらさき
【評】日本画さながらの世界。 |
|
○餅花や祖父の手づくり鯛も吊り 美雪
【評】餅花全体が祖父の手になるのか、鯛だけが祖父の制作なのか、この点に再考の余地がある。 |
|
○餅花や織物館に紅まばゆ 静枝
【評】わが郷里では「餅花」を「繭玉」と言っていた。つまり織物館によく似合うのだが、そこにありふれたものを感じる。「まばゆ」が「まばゆし」の語幹なら、活用語尾まで用いる努力をしたい。
|
|
◎大利根の流れゆるやか福寿草 和子
【評】ふところが深い大河と福寿草がよく似合う。 |
|
◎日溜りに椅子まるく置く福寿草 酢豚
【評】中央に福寿草があるんだね。余情深し。
|
|
◎物見岩たもとに配す福寿草 千年
【評】いかにも福寿草の似合う場所である。 |
|
◎園児らの散歩の帽子福寿草 ムーミン
【評】園児の帽子に見立てられた福寿草。新鮮な気がする。 |
|
◎子ら故郷出でて帰らず福寿草 希望
【評】「帰らず」と悲観的にいうが、福寿草に祈る思いがこめられて救われる。 |
|
◎三十三父の正忌や福寿草 月子
【評】非在の哀しみを福寿草が救っている。 |
|
◎金盃のごとくかがやき福寿草 ひろし
【評】金盃を連想して俳句らしくなった。「かがやき」省略出来ればさらに上等。
|
|
◎戯れの虫一匹や福寿草 山茶花
【評】虫は秋季だが実景・発見とみて許容。表現は「戯るる・戯れる」で少し上等になる。
|
|
○福寿草こんなに咲かせ一人住む 文子
【評】「こんなに」という曖昧表現を意図的なものと判断した。これも腕前かもしれない。
|
|
○修練を経たる書掛かる福寿草 由美
【評】床の間の福寿草とみたが、書画に描かれた福寿草ともとれて、そこに再考の余地がある。
|
|
○寄せ植えの少し膨らむ福寿草 ひぐらし
【評】「寄せ植えの少し膨らむ」はごくありふれた福寿草の説明ゆえ物足りなし。
|
|
○餅花やまろげて年のあらたまり 貴美
【評】語法としては「餅花をまろげて年の改まる」だろうな。そうすると、「餅花」「年新た」で季重ね。結果的にありふれた景色になってしまう。
|
|
△福寿草無の一文字のありどころ 憲
【評】無一文字は知ってるつもりだが、「ありどころ」がわからなかった。
|
|