わくわく題詠鳩の会兼題解説

◆ 兼題解説 夏の月・夕顔 ◆

夏の月(なつのつき)
芭蕉句 蛸壺やはかなき夢を夏の月(猿蓑)
手をうてば木魂に明くる夏の月(嵯峨日記)
月はあれど留主のやう也須磨の夏(笈の小文)
〔本意・形状〕 月と云えば秋であるが『枕草子』に「夏は、夜、月のころは、さらなり。」とあるように、夏の夜の月も独特の風趣があり、涼しさも感じられる。凡兆の「市中は物のにほいや夏の月」が良く知られている。
〔季題の歴史〕 「夏の夜はまだ宵ながら明けぬるを雲のいづこに月やどるらん 清原深養父」(『古今集』)。また夏の夜の月が地面を照らして白々と霜を置いたように見えるのを、夏の霜、として古歌に詠われている。
〔類題 傍題〕 月涼し
〔例   句〕 寝せつけし子のせんたくや夏の月   一茶
夏の月皿の林檎の紅を失す      虚子
夏の月蚕は繭にかくれけり      水巴
月涼し僧も四条へ小買い物      茅舎
夏の月いま上りたるばかりかな    万太郎
夕顔(ゆうがほ・ゆふがほ)
芭蕉句 夕がほや秋はいろいろの瓢(ふくべ)かな(あら野)
夕皃(ゆうがお)にみとるるや身もうかりひよん(続山の井)
夕顔や酔てかほ出す窓の穴(続猿蓑)
夕顔に干瓢むいて遊びけり(ありそ海)
〔本意・形状〕 ウリ科の蔓性植物で夏の夕方に白い五弁の花を咲かせ朝には萎む。瓜類の中で夕顔だけが、朝顔、昼顔と違って平安時代の貴族の鑑賞の対象になっている
〔季題の歴史〕 『源氏物語』「夕顔」では、貧しい家の垣根に咲く白い儚い花のように、思いがけなく美しく由ありげな「夕顔」との儚い契りが描かれる。『枕草子』では、花の姿も、花の名も良いのに「身のありさまこそ、いと悔しけれ」と云い、実が鬼灯(ほおずき)のようであればよいのにと記されている。
〔類題 傍題〕 夕顔の花 夕顔棚
〔例   句〕 夕顔に雑炊あつき藁屋かな       越人
夕顔やそこら暮るるに白き花      太祇
淋しくもまた夕顔のさかりかな     漱石
夕顔の音のしさうな蕾かな       星野椿
夕顔に乳ふくますはしづかなり     草間時彦
(根本梨花)


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