寒(かん) |
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芭蕉句 | 干鮭も空也の痩せも寒の内 塩鯛の歯ぐきも寒し魚の店 |
〔本意・形状〕 | 寒は「寒の入り・小寒」(一月五日頃)から大寒(一月二一日頃)を経て寒明け「節分、立春」の前日(二月三日頃)までのおよそ三十日間をいう。 この期間を「寒の内」とよび、一年のうちで最も寒さが厳しい時期にあたる。寒に入って四日目を寒四郎、九日目を寒九郎という。 |
〔季題の歴史〕 | 『栞草』(嘉永四)に十二月として所出。 |
〔類題 傍題〕 | 寒の内 寒中 寒四郎 寒九郎 寒九 大寒 小寒 |
〔例 句〕 | 寒菊や粉糠のかかる臼の端 芭蕉 夕焼けに野川が沁みつ寒の入 水原秋桜子 大寒の一戸もかくれなき故郷 飯田龍太 捨水の即ち氷る寒に在り 池内たけし 原爆図中口あくわれも口あく寒 加藤楸邨 |
葱(ねぎ) | |
芭蕉句 | 葱白く洗ひたてたる寒さかな |
〔本意・形状〕 | ゆり科の多年草。原産は中国、シベリアなど推定されるが、日本人に欠かせない冬野菜である。関東では深谷葱、千住葱等が知られ、白い部分の長い根深葱が作られ、また、太くて美味な下仁田葱なども人気がある。一方関西では緑の葉の部分が長い九条葱が伝統的に好まれている。 |
〔季題の歴史〕 | 『毛吹草』『増山の井』以下、十月、十一月、または兼三冬として「葱」を掲出。「島原や葱の香もあり夜の雨 言水」(『続都曲』)。 |
〔類題 傍題〕 | 一文字(ひともじ)、根深(ねぶか)、葉葱、葱畑、晒葱(さらしねぎ) |
〔例 句〕 | 葱買うて枯れ木の中を帰りけり 蕪村 夢の世に葱を作りて淋しさよ 永田耕衣 楚々として象牙のごとき葱を買ふ 山口青邨 少年の放心葱畑に陽が赤い 金子兜太 白葱のひかりの棒をいま刻む 黒田杏子 |
(根本梨花) |