小春(こはる) |
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芭蕉句 | 月の鏡小春にみるや目正月 |
〔本意・形状〕 | 冬になっても急に寒くなるわけではなく、しばらくの間まるで春のような暖かい日が続くことがある。これが、小春、小春日和、である。陰暦十月の異称でもある。 |
〔季題の歴史〕 | 『徒然草』一五五に「十月は小春の天気、草も青くなり、梅もつぼみぬ」とある。『荊礎歳時記』には、「十月ハ、天気和暖ニシテ、春ニ似ル。故ニ小春(しょうしゅん)ト曰フ」とあり、古い言葉であるが心が和む感じがする季題である。 |
〔類題 傍題〕 | 小六月 小春日 小春日和 小春空 小春風 小春凪 |
〔例 句〕 | ささ栗の柴に刈らるる小春かな 鬼貫 海の音一日遠き小春かな 暁台 玉の如き小春日和を授かりし 松本たかし 白雲のうしろはるけき小春かな 飯田龍太 松島の波裏もまた小六月 高野ムツオ |
枯野(かれの) | |
芭蕉句 | 旅に病んで夢は枯野をかけ廻る |
〔本意・形状〕 | 草の枯れ尽くした蕭条とした冬の野原である。 |
〔季題の歴史〕 | 西行が実方朝臣の塚を詠んだ「朽ちもせぬその名ばかりを留め置きて枯野の薄形見にぞ見る」(『新古今集』)がよく知られる。 |
〔例 句〕 | 枯野行く人や小さう見ゆるまで 千代女 吾が影の吹かれて長き枯野かな 夏目漱石 枯野の中独楽宙とんで掌に戻る 西東三鬼 枯野馬車日当りてゆくたのしさよ 加倉井秋を 火を焚くや枯野の沖を誰か過ぐ 野村登四郎 |
(根本梨花) |