わくわく題詠鳩の会兼題解説

◆ 兼題解説 朝顔・月 ◆

朝顔(あさがお・あさがほ)
芭蕉句 あさがほに我は食くふおとこかな(みなしぐり)
朝皃は酒盛しらぬさかりかな(あら野)
蕣は下手のかくさへ哀也(いつを昔)
蕣や是も又我が友ならず(けふの昔)
蕣や昼は錠おろす門の垣(薦獅子集)
〔本意・形状〕 朝顔は薬草として1000年以上前に中国から渡来し、花が美しいので鎌倉時代以降から観賞用とされ、江戸時代に最も盛んに栽培された。花は本来夏に咲くが伝統的に秋のものとされている。
〔季題の歴史〕 「萩の花尾花葛花瞿麦(なでしこ)の花女郎花また藤袴朝貌の花」山上憶良(『万葉集』巻八・秋雑)。「この有名な歌によって、朝顔は秋の七草の花の一つとされる(山本健吉『基本季語500選』)。
上代における「あさがお」については諸説あって決めがたいが、桔梗とす るのが無難(『日本国語大辞典』)。木槿とする説もあるが憶良の歌では野に咲く草花を並べている。いずれにしても「あさがおの花」は朝に咲いて午前中にはしぼむ花としてはかないイメージが詠まれてきた。
〔類題 傍題〕 牽牛花 西洋朝顔
〔例   句〕 朝がほや一輪深き淵のいろ    蕪村
この頃の蕣藍に定まりぬ     正岡子規
朝顔や濁り初めたる市の空    杉田久女
朝顔の紺の彼方の月日かな    石田波郷
朝顔が日ごとに小さし父母訪はな     鍵和田秞子
月(つき)
芭蕉句 鎖あけて月さし入れよ浮御堂(薦獅子集)
月はやしこずゑはあめをもちながら(真蹟色紙)
何事の見たてにも似ず三かの月(あら野)
名月の花かと見えて棉畠(続猿蓑)
名月や門にさし来ル潮がしら(名月集)
〔本意・形状〕 月は春の花に対して秋を代表する季の言葉である。これに雪を加えた「雪月花」は古来日本の季節を代表する自然美の総称として用いられてきた。
月は四季いずれにもあるが、特に秋の月のさやけさを賞して、古来月と言えば秋の月である。因みに旅の詩人芭蕉は、筆者のカウントによればおよそ生涯の一千句のうち約八十句も月の句を詠んでいる。
〔季題の歴史〕 「振りさけて若月見れば一目見し人の眉引き思ほゆるかも」大伴家持(万葉集』巻六)。「木の間よりもりくる月のかげみれば心づくしの秋は来にけり」よみ人しらず(『古今集』)。月は秋の美しいものの頂点におかれ、さびしさ、もの哀しい情感などの気持ちのこもるものとされてきた。
〔類題 傍題〕 月待ち 朝の月 昼の月 夜半の月 月蝕 月の出 月の入 月渡る 月夜 月光 月影 月下 夕月夜 宵月 二日月 三日月 月の兎。
〔例   句〕 月天心貧しき町を通りけり      蕪村
ある僧の月も待たずに帰りけり  正岡子規
ふるさとの月の港を過るのみ   高浜虚子
月明の宙に出て行き遊びけり   山口誓子
月今宵旅路いづこに泊つるとも  稲畑汀子
(根本梨花)


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