御祓(みそぎ) ふくかぜの中をうを飛御祓(みそぎ)かな(真蹟画賛) 芭蕉 |
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〔本意・形状〕 | 陰暦六月三十日に行われる神事で、心身の罪や穢れをはらうために行なわれるおはらいである。茅の輪をくぐったり、紙の形代(かたしろ)に息を吹きかけ、川に流したり、麻の葉を幣(ぬさ)として流すところもある。 現在は陽暦六月三十日に多くの神社で行われている。 |
〔季題の歴史〕 | 『毛吹草』(正保二)に「夏はらへ・形代・名越の祓・茅の輪」。 古句に多く詠まれている季題である。「身安かれ水無月みそかみそぎ河 貞室」「御手洗や団子にぬるもみそぎかな 重頼」「夕虹も消えて御祓の流れかな 蘭更」「泪して命うれしき御祓かな 樗良」 |
〔類題 傍題〕 | 禊(みそぎ)、御祓川(みそぎがわ) |
〔例 句〕 | 川ぞひを戻るもよしや御祓の夜 白 雄 雨雲の烏帽子に動く御祓かな 正岡子規 禰宜の沓道ふみ欠きし御祓かな 阿波野青畝 夕闇は加茂にとく濃き御祓かな 岸風三楼 山へ紙ひらひらとんで御祓かな 宇佐美魚目 |
蝉(せみ) 閑さや岩にしみ入ル蝉の声(陸奥衛) 芭蕉 | |
〔本意・形状〕 | 蝉科の総称、日本には約32種が分布する。雄は腹部にある発生器で鳴くが、雌は鳴かない。幼虫は土中で六七年かけて成虫になる。四月末ごろの松蝉(春ぜみ)、五月、六月のにいにい蝉、あぶら蝉、熊蝉、初秋は、ひぐらし、つくつくぼうし、と秋の中頃まで入れ替わり鳴き続けるが地上に出ると一週間ほどの命である。 「頓て死ぬけしきは見えず蝉の声 芭蕉」など、はかない命が詠まれる。 |
〔季題の歴史〕 | 『拾遺集』『和漢朗詠集』『古今六帖』『夫木和歌集』夏に、題として所出。 |
〔類題 傍題〕 | 初蝉 蝉時雨 朝蝉 夕蝉 夜蝉 山蝉 にいにい蝉 油蝉 熊蝉 みんみん蝉 深山蝉(みやまぜみ)蝉捕り(せみとり) |
〔例 句〕 | 蝉鳴けり泉湧くより静かにて 水原秋桜子 蝉鳴くや松の梢に千曲川 寺田寅彦 みんみんに合歓はねむりぬ千曲川 森澄雄 おいてきし子ほどに遠き蝉のあり 中村汀女 蝉時雨子は担送車に追いつけず 石橋秀野 |
(根本梨花) |