蝸牛(かたつむり) | |
〔本意・形状〕 | マイマイ目の陸生有肺類巻貝の一群の総称。5~6階から成る螺旋形の殻があり、大部分は右巻き。頭部の2対の触覚のうち長い方の先端にある眼で明暗を判別する。雌雄同体で、卵生。湿気の多い夜など、木や草の若葉などを食する。 種類が多く世界に2万種、日本にも700種とされる。童謡にも唱われて親しまれている。 |
〔季題の歴史〕 | 『夫木和歌抄』雑に、蝸牛「牛の子に踏まるな庭のかたつぶり角あればとて身をな頼みそ 寂蓮」○『毛吹草』(正保二)『鼻紙袋』(延宝五)に五月として所出。○『梁塵秘抄』に「舞へ舞へかたつぶり、舞はぬものならば、馬の子や牛の子に蹴させてん、踏みわらせてん、まことに美しく舞うたらば、花の園まで遊ばせん」が知られる。 |
〔類題 傍題〕 | かたつぶり ででむし でんでんむし まいまい |
〔例 句〕 | かたつぶり角ふりわけよ須磨明石 芭蕉 三日月の梢に近し蝸牛 几菫 蝸牛(ででむし)の頭もたげしにも似たり 子規 光陰は竹の一節蝸牛 阿部みどり女 蝸牛甲斐も信濃も雨の中 飯田龍太 |
青林檎(あおりんご) | |
〔本意・形状〕 | 緑色の瑞々しい青林檎は六月から出始める早生種である。硬くて酸味のある歯ごたえは新鮮さに充ちていて、秋に実る林檎を夏に味わう、気持ちの嬉しさがある。このすっきりした酸味は妊婦のつわりにも好まれる。 |
〔季題の歴史〕 | 『毛吹草』(正保二)『増山の井』(寛文七)『はなひ大全』(寛文八頃)以下に「林檎」として六月に所出。 リンゴは現在「青林檎」は夏に「林檎」は秋の季語(季題)に分類されているが『山本健吉 基本季語五〇〇選』によると江戸時代は「林檎」は全て夏の季語であった、という。「林檎は江戸時代も元禄以降になって、季語とされたが当時の俳書はすべて夏六月としている。」として『滑稽雑談』『栞草』を挙げている。そしてさらに「「林檎」を夏とは、明治になっても踏襲され、「新俳句」に「葉がくれて林檎の赤き西日哉」紅緑、「春夏秋冬」に「我恋は林檎の如く美しき」富女、とそれぞれ一句ずつ採録されているが、何れも夏の部である。」と記している。 |
〔類題 傍題〕 | 早生(わせ)林檎 |
〔例 句〕 | 青林檎しんじつ青し刀を入る 山口誓子 青林檎ひとの夏痩きはまりぬ 石田波郷 青りんごただ一個買ふ美しく 細見綾子 青林檎ゆっくりと知恵育てゐる 大串 章 青林檎よき歯を母にもらひけり 西島あさ子 |
(根本梨花) |