時雨(しぐれ) | |
〔本意・形状〕 | 冬の初め頃にさっと降ってはさっと上がる雨で、とくに京都の時雨は名高い。秋時雨、春時雨という現象もあるが、季語としての中心はあくまでも冬の時雨である。冬の代表的季題(季語)として芭蕉が『猿蓑』の美目として立てた事で知られる。「初時雨猿も小蓑をほしげなり」。猿といえば『哀猿断腸』の詩的伝統から離れ、旅支度の蓑をまとい、一歩を踏み出す心のはずみを、猿の表情にこめて新しい詩情を確立したとされる。 |
〔季題の歴史〕 | 『万葉集』巻十・秋雑に「もみちばを散らす時雨の降るなへに夜さえそ寒き独りし寝(ぬ)れば」、『古今集』冬に「神無月降りみ降らずみ定めなき時雨ぞ冬の初めなりける」、『夫木和歌集』冬に題として初出。 |
〔類題 傍題〕 | 朝時雨 夕時雨 小夜時雨 村時雨 北時雨 北山時雨 横時雨 片時雨 月時雨 泪の時雨 川音の時雨 松風の時雨 時雨雲 時雨傘 時雨心地 時雨の色 |
〔例 句〕 | 草枕犬も時雨るるか夜の声 芭蕉 しぐるるや田の新株の黒むほど 芭蕉 あはれさやしぐるる比の山家集 素堂 小夜時雨上野を虚子の来つつあらん 子規 翠黛の時雨いよいよはなやかに 高野素十 |
(堀口希望) |
枯草(かれくさ) | |
〔本意・形状〕 | 冬になって野山や庭の枯れた草を言う。その一面に草の枯れているさまを草枯ると言う。『古今集』の「山里は冬ぞさびしさまさりける人目も草も枯れぬと思えば」(源宗于朝臣)以来、冬枯れのさびしさの代表的な季語の一つである。 |
〔季題の歴史〕 | 『詞花集』秋に「草枯れの冬まで見よと露霜の置きて残せる白菊の花」(曽禰良忠)。『連珠合壁集』(文明八)に「草枯れて」、『御傘』(慶安四)『寄垣諸抄大成』(元禄八)に「枯草」として冬に所出。 |
〔類題 傍題〕 | 草枯る 草枯 |
〔例 句〕 | 花皆枯れて哀れをこぼす草の種 芭蕉 草枯れて狐の飛脚通りけり 蕪村 日のひかりきこゆ枯草山にひとり 山口草堂 草々の呼びかはしつつ枯れてゆく 相生垣瓜人 子等のものからりと乾き草枯るる 中村汀女 |
(根本梨花) |