わくわく題詠鳩の会兼題解説

◆ 兼題解説 時雨・枯草 ◆

時雨(しぐれ)
〔本意・形状〕 冬の初め頃にさっと降ってはさっと上がる雨で、とくに京都の時雨は名高い。秋時雨、春時雨という現象もあるが、季語としての中心はあくまでも冬の時雨である。冬の代表的季題(季語)として芭蕉が『猿蓑』の美目として立てた事で知られる。「初時雨猿も小蓑をほしげなり」。猿といえば『哀猿断腸』の詩的伝統から離れ、旅支度の蓑をまとい、一歩を踏み出す心のはずみを、猿の表情にこめて新しい詩情を確立したとされる。
〔季題の歴史〕 『万葉集』巻十・秋雑に「もみちばを散らす時雨の降るなへに夜さえそ寒き独りし寝(ぬ)れば」、『古今集』冬に「神無月降りみ降らずみ定めなき時雨ぞ冬の初めなりける」、『夫木和歌集』冬に題として初出。
〔類題 傍題〕 朝時雨 夕時雨 小夜時雨 村時雨 北時雨 北山時雨 横時雨 片時雨 月時雨 泪の時雨 川音の時雨 松風の時雨 時雨雲 時雨傘 時雨心地 時雨の色
〔例   句〕 草枕犬も時雨るるか夜の声      芭蕉
しぐるるや田の新株の黒むほど    芭蕉 
あはれさやしぐるる比の山家集    素堂
小夜時雨上野を虚子の来つつあらん  子規
翠黛の時雨いよいよはなやかに    高野素十
(堀口希望)

枯草(かれくさ)
〔本意・形状〕 冬になって野山や庭の枯れた草を言う。その一面に草の枯れているさまを草枯ると言う。『古今集』の「山里は冬ぞさびしさまさりける人目も草も枯れぬと思えば」(源宗于朝臣)以来、冬枯れのさびしさの代表的な季語の一つである。
〔季題の歴史〕 『詞花集』秋に「草枯れの冬まで見よと露霜の置きて残せる白菊の花」(曽禰良忠)。『連珠合壁集』(文明八)に「草枯れて」、『御傘』(慶安四)『寄垣諸抄大成』(元禄八)に「枯草」として冬に所出。
〔類題 傍題〕 草枯る 草枯
〔例   句〕 花皆枯れて哀れをこぼす草の種    芭蕉
草枯れて狐の飛脚通りけり      蕪村
日のひかりきこゆ枯草山にひとり   山口草堂
草々の呼びかはしつつ枯れてゆく   相生垣瓜人
子等のものからりと乾き草枯るる   中村汀女
(根本梨花)


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