霧(きり) | |
〔本意・形状〕 | 空気中の水蒸気が凝結して細かい水滴となり、地表近くの大気中に煙のようになっている自然現象。 |
〔季題の歴史〕 | 古くは四季を通じて用いたが、平安時代以降は春立つものを霞(かすみ)、秋立つものを霧という伝統的美の概念が成立した。現在、気象用語としては季節にかかわりなく用いられている。 |
〔類題 傍題〕 | 朝霧 夕霧 夜霧 山霧 海霧 狭霧 霧襖 野霧 霧雨 濃霧 霧の海、霧の籬 胸の霧 心の霧 |
〔例 句〕 | 霧しぐれ富士を見ぬ日ぞ面白き 芭蕉 霧黄なる市に動くや影法師 夏目漱石 白樺を幽かに霧のゆく音か 水原秋桜子 四百の段の室生寺霧はやし 石原八束 月山といへ一切の霧の中 岸風三楼 |
(堀口希望) |
草花(くさばな) | |
〔本意・形状〕 | 秋に咲くいろいろの草の花をさす。『改正月令博物筌』に「諸草の花は多く秋咲くゆゑ、季とす。萩・葛・女郎花・撫子、その他何によらず秋咲く花をいふ」とある。秋咲く草の花は地味で可憐なものが多い。 |
〔季題の歴史〕 | 『枕草子』六十四段に「草の花は、なでしこ。をみなへし。桔梗。あさがほ。刈萱。菊。壺菫。竜胆。かまつか。かにひの花。萩。八重山吹。夕顔。しもつけの花。あしの花。薄。の名をあげているが、壺菫と、八重山吹は春で、しもつけの花と夕顔は夏に咲く花である。 |
〔類題 傍題〕 | 草の花 草の初花 千草の花 野の花 百草の花(ももくさのはな) |
〔例 句〕 | 草いろいろおのおの花の手柄かな 芭蕉 草の花ひたすら咲いてみせにけり 久保田万太郎 やすらかやどの花となく草の花 森澄雄 手をふれて胸まで濡るゝ草の花 飴山實 がんばるわなんて言うなよ草の花 坪内稔典 |
(根本梨花) |