清水(しみず) | |
〔本意・形状〕 | 山野や農家の庭先などに湧き出ている水をいう。炎天の旅の途中など手に掬って飲むと涼味あふれる冷たさに生き返る思いがする。泉は水が湧いてたたえられたとき、清水は水が湧いて落ちるとき使う。 |
〔季題の歴史〕 | 「さざれ蟹足はひのぼる清水かな 芭蕉」、「青あおと見えて底ある清水かな 千代女」、「二人してむすべば濁る清水かな 蕪村」など古くから、涼しく清らかなところが好まれ詠まれてきた。 『袖かがみ』(延享元年)『清鉋』(延享二以前)以下に六月として所出。 |
〔類題 傍題〕 | 真清水 山清水 岩清水 底清水 苔清水 岨清水 磯清水 湧清水 門清水 庭清水 清水陰 清水掬ぶ 清水汲む |
〔例 句〕 | 絶壁に眉つけてのむ清水かな 松根東洋城 清水のむかたはら地図を拡げをり 高野素十 白神のいのちの清水はらわたに 成田千空 来る風のすぢ明らかに清水かな 中村汀女 真清水の音のあはれを汲みて去る 黒田杏子 |
(堀口希望) |
蓮(はす) | |
〔本意・形状〕 | 蓮はインドまたは中国から渡来したといわれるが、古来日本にあったという説もある。大賀蓮は二千年前の地層から発見された種が開花したとされる。古くから沼や池、水田で栽培された。地下の根茎を採集し蓮根(レンコン)として食用に供する。夏になると大きな葉を水面に浮かべその間から垂直の茎が伸び宝珠の形の蕾を付ける。開花は夜明けと共に始まり、多くの花びらを重ねた大形の花を開き午後にはしぼむ。花の色は紅と白がある。蓮は蓮華といわれるように極楽を表徴する花である。清らかで美しく微かに香る。 |
〔季題の歴史〕 | 『夫木和歌抄』に「蓮咲くあたりの風もかほりあひて心の水を澄ます池かな 定家」。連『至宝抄』『御傘』以下に六月として所出。 |
〔類題 傍題〕 | はちす 蓮の花 蓮華 散蓮華 紅蓮 白蓮 蓮池 |
〔例 句〕 | 蓮池の深さわするる浮葉かな 荷兮 あしらひて巻葉添へけり瓶の蓮 太祇 飛び石も三つ四つ蓮のうき葉かな 蕪村 一つづつ夕影抱く蓮かな 高浜虚子 ほのぼのと舟押し出すや蓮の中 夏目漱石 |
(根本梨花) |