わくわく題詠鳩の会兼題解説

◆ 兼題解説 時鳥・余花 ◆

時鳥(ほととぎす)
〔本意・形状〕 初夏五月頃南方から渡ってきて、よく響く独特の声で日本の空に夏を告げる。〈春は花夏ほととぎす秋は月冬雪さえてすずしかりけり〉(『道元禅師和歌集』)に詠われるように、日本の美を代表する雪月花に並ぶ鳥である。鶯と同じく初音を待たれる鳥としても知られる。昼も夜も鳴き闇夜の激情のこもるような声は「帛を裂くが如し」といわれ、また、口腔が赤いので「鳴いて血を吐くほととぎす」ともいわれる。自分では巣を作らず、托卵で繁殖する。こうした習性から多くの言い伝えがある。
〔季題の歴史〕 『至宝抄』(天正13)に「時鳥(ほととぎす)は、かしましきほど鳴き候とも、稀に聞き、珍しく鳴き、待ちかぬるやうに詠みならはし候」とある。古句では、「郭公」を「ほととぎす」と読ませることもある。
〔類題 傍題〕 杜鵑(ほととぎす)、子規(ほととぎす)、不如帰(ほととぎす)、沓手鳥(くつてどり)、橘鳥(たちばなどり)、田長鳥(たおさどり)、妹背鳥(いもせどり)、卯月鳥(うづきどり) 
〔例   句〕 京にても京なつかしやほととぎす   芭蕉
空になくや水田の底のほととぎす   鬼貫
寝られぬに啼いてくれるな杜宇    越人
時鳥濡髪冷えしまゝ寝まる      殿村菟絲子
ほととぎす谷戸の朝靄突き放し    星野椿
(堀口希望)

余花(よか・よくわ)
〔本意・形状〕 初夏になって、まだ咲き残っている桜の花のこと。東北地方の山中などを旅していると、ふと見かけることがありその風情がいかにも珍しく、またいじらしく感じられる。よく似ているものに「春」の季語、「残花」が有るがこちらは晩春に咲き残る桜で、立夏を過ぎて初夏に咲く桜を、余花(夏季)として使い分けている。
〔季題の歴史〕 『夫木和歌抄』夏に、余花「せみのはの薄紅の遅桜折るとはすれど花もたまらず 順徳院」。『至宝抄』(天正13)『鼻紙袋』(延宝5)以下に四月として所出。『滑稽雑談』(正徳3)に、「題林抄に曰、余花、春におくれてひとり咲けるをあはれみ、山深ければ夏の来るをも知らぬかとおぼめき、青葉の中に咲ける珍しき心など詠むべし」とある。
〔類題 傍題〕 特になし
〔例   句〕 余花に逢ふ再び逢ひし人のごと     高浜虚子
余花の峯うす雲城に通ひけり      飯田蛇芴
相打つて雀はげしや余花の雨      原石鼎
仔馬には里初めてや余花白き      大須賀乙字
余花の蝶しばらく波にあそびけり    西島麦南
(根本梨花)


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