わくわく題詠鳩の会兼題解説

◆ 兼題解説 鶯・耕し ◆

鶯・鴬(うぐいす)
〔本意・形状〕 春告鳥(はるつげどり)という別名もあるように、早春を告げる鳥として古くから愛され親しまれてきた鳥である。梅の咲く頃に里に下りてきて梅の木にいる虫を探す。「ホーホケキョ」と美しい声で鳴くので飼鳥ともされてきた。その声は「笹鳴き」という冬の季語(まだ声が整わずに「チャッチャッ」と鳴く地鳴き)から始まり、春の終わり頃になると「ケキョケキョケキョ」と大きな声で鳴いて谷を渡るので「鴬の谷渡り」といわれる。
〔季題の歴史〕 『万葉集』巻十・春雑「春霞流るるなへに青柳の枝くひ持ちて鶯鳴くも」。
『古今集』春上「鶯の谷より出づる声なくば春来ることをたれか知らまし大江千里」。『和漢朗詠集』春、『古今六帖』春に題として所出。
〔類題 傍題〕 黄鳥(うぐいす)、匂鳥(においどり)、歌よみ鳥、経よみ鳥、花見鳥、春告鳥(はるつげどり)。
〔例   句〕 鶯の鳴けば何やらなつかしう     鬼貫
鶯や餅に糞する縁の先        芭蕉
鶯の身をさかさまに初音かな     其角
鶯に終日遠し畑の人         蕪村
鶯や山をいづれば誕生寺       子規
(堀口希望)

耕(たがやし)
〔本意・形状〕 穀物や野菜などの種まきや、苗植えの前に、田畑の土を鋤きかえし、土を柔らかくする作業。現代では耕作技術や機械の進歩で、随時行われるが、俳句では伝統的に春耕としている。春の訪れとともに始まる活動の代表的なものとして、清新な印象を強める季題である。
〔季題の歴史〕 『通俗志』(享保二)に「雑なり。季に用ゐるべからずなり」。『二見貝』 (安永九)に二月「田打ち」の傍題として所出。
〔類題 傍題〕 春耕、耕人、耕馬、耕牛、馬耕。
〔例   句〕 耕すやむかし右京の土の艶     太祇
耕や鳥さえ啼かぬ山かげに     蕪村
耕して百年前の空の紺       坪内稔典
耕牛に海の波寄る田の古び     加藤楸邨
春耕の田や少年も個の数に     飯田龍太
(根本梨花)


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