冬月(ふゆづき)・冬の月(ふゆのつき) | |
〔本意・形状〕 | 寒々とした冬の月は、透徹した空気のためとぎすまされたような美しさがある。寒月と言えばさらに凍てついた月の感じである。『枕草子』は「すさまじきもの媼の化粧、師走の月」とする。これを『源氏物語』朝顔の巻で紫式部が「すさまじきためしに言ひ置きけむ人の、心浅さよ」と言っている。 |
〔季題の歴史〕 | 『万葉集』巻十・冬雑に、「さ夜更けば出で来む月を高山の峰の白雲隠しなむかも」。其角に「この木戸や鎖のさされて冬の月」があり、「柴の戸」と読みあやまった芭蕉が、「此木戸」であると知って『猿蓑』を改めさせた話がある。 |
〔類題 傍題〕 | 月冴ゆる、月凍る、寒月、冬三日月、寒三日月 |
〔例 句〕 | 襟巻きに首引き入れて冬の月 杉風 鳥影も葉に見て淋し冬の月 千代女 我影の崖に落ちけり冬の月 柳原極堂 寝ぬる子が青しといひし冬の月 中村汀女 あたたかき冬月幸を賜るや 石田波郷 |
(堀口希望) |
千鳥(ちどり) | |
〔本意・形状〕 | 全長15センチ~20センチくらい、体の下面が白く、頭部に黒斑があるものが多い。川岸・河原などにすみ小動物を捕食する。 多くは渡り鳥であるが、日本で繁殖する種類にシロチドリ、コチドリ、イルカチドリがある。(日国参照) |
〔季題の歴史〕 | 『万葉集』の「淡海の海夕波千鳥汝が鳴けばこころもしのにいにしへ思ほゆ」以来日本の詩歌に愛されてきた鳥である。 『山の井』に、「千鳥は磯部・浜辺などにちり飛んで友を呼び、川風寒み鳴きかはすけしきなどを、千鳥掛けとも千鳥足とも言ひてつらねなしはべる」と言う。 |
〔類題 傍題〕 | 磯鳴鳥(いそなどり)、海千鳥、浦千鳥、川千鳥 |
〔例 句〕 | 星崎の闇をみよとや啼く千鳥 芭蕉 吹き別れ吹き別れても千鳥かな 千代女 月をこぼるゝ千鳥かな 飯田蛇芴 夕千鳥波にまぎれし如くなり 高浜年尾 走り寄り二羽となりたる千鳥かな 中村汀女 |
(根本梨花) |