白山俳句会会報 No.63

白山句会 白山句会報第63号

  □日時 2025年2月18日~28日 第15回ネット句会
  □会場 「芭蕉会議」サイト会員フォーラム(専用掲示板)


 春の萌しを小さなことから見つけられるこの季節は、柔らかな季語が多いと思いました。久しぶりのネット句会ゆえ、参加者は23人、投句数69句と少なめでした。少数精鋭の秀句の一番は、先生の「しばらくは待つと決めたる余寒かな 海紅」でした。「待つと決めた」覚悟と優しさが響きました。<エール記>

〈 俳 話 少 々 〉

 2月2日(日)の「芭蕉会議の集い」の「人生は物語で出来ている」という講話の中で、貫之による業平評「在原業平はその心あまりて、ことばたらず」(古今集仮名序)を引用し、ボクが添削をしない理由を〈作者は自分の心にこだわるので言葉(表現)がおろそかになり、読者(選者)は言葉(表現)にこだわるので作者の心を傷つける。それで、両者がよほど信頼し合っていないかぎり、添削はむずかしい〉という話をしました。ただ、「わくわく題詠鳩の会」と「たしなみ俳句会」はまったく初学の人を相手に始めたので、加除やアドバイスを許してもらっています。それを具体的に知ってもらうために、今回限りの企画として、海紅選に漏れた句のすべてに疑問点を指摘してみました。これは内輪の作業なので、掲載場所は掲示板(会員フォーラム)にします。時期は今回の句会スケジュールがすべて終わった頃になるかと思います。御一読いただいて、海紅評に大いに不満をぶつけてください。きっと後々お役にたつと思います。〈海紅記〉


〈 句 会 報 告 〉

 互選は三句投句、五句選の結果です。ただし、海紅選は五句を超える数を選んでいますので、互選の点数に含めてはおりません。
また、海紅選の一部の作品について、作者の意図をそれない範囲で表現を改めたものがあります。原句と比較の上、再考願います。なお、互選についても気がつく範囲で仮名遣いを改めました。御了承ください。<海紅記>


☆ 谷地海紅選 ☆

今時のをのこのピアス春の風 つゆ草
あたたかや本閉ぢて出る菜園へ 月子
啓蟄や学食カレー大盛りに ひぐらし
春寒し散歩躊躇の齢人          春代
忌に訪へばおもかげのごと紅椿 馨子
窓際に梅一輪の予約席 うらら
園丁の背に日溜まりや花の兄       貴美
春寒し煉瓦倉庫はがらんだう 理恵子
むめ咲くや日溜まりのある屋敷跡 貴美
春を待つ一時帰国の嫁迎へ エール
陽炎やぶらり一葉ゆかりの地 ひぐらし
さつさうと歩いてみたし日脚伸ぶ
ほどほどの検診結果日脚伸ぶ 馨子
散歩後の足投げ出して日向ぼこ      春代
板塀の落書き跡ものどかなり 蛙星
春北斗見上げて待つや次のバス うらら

☆ 互選結果 ☆

7 しばらくは待つと決めたる余寒かな 海紅
6 窓際に梅一輪の予約席 うらら
6 忌に訪へばおもかげのごと紅椿 馨子
6 ほどほどの検診結果日脚伸ぶ 馨子
4 春北斗見上げて待つや次のバス うらら
4 飼い犬のぬくもり抱くや春浅し 貴美
4 来し方と行く末思ふ春の宵 ちちろ
3 春寒のスキマバイトに夢ひとつ 海紅
3 あたたかや本閉じて出る菜園へ 月子
2 旧正や歌仙満尾の陽ざし食む eiko
2 春詩篇一行富良野より届く eiko
2 草青む草莽の志士一人知る 千年
2 咲いたかと聞かれずスミレ咲いてをり 千年
2 啓蟄や学食カレー大盛りに ひぐらし
2 枯菊のきいろの未練こぼれたり 安愚楽
2 一匹はおとなしく居て猫の恋 蛙星
2 板塀の落書き跡ものどかなり 蛙星
2 春泥や登校の子ら傘で刺し 窓花
2 さつさうと歩いてみたし日脚伸ぶ
2 早春のゴンドラ光り動き出す 梨花
2 細筆で俳句つらつら春を詠む つゆ草
2 春寒のスーパー花もカゴに足し 京子
2 俤のお化け煙突春の旅 宏美
2 せせらぎの水音かすか春浅し ふみ子
2 貝寄風や心残りは海の底 ふみ子
1 陽炎やぶらり一葉ゆかりの地 ひぐらし
1 手を引かれ孫の後追う恵方道 安愚楽
1 鳴くことも償ひとせん遠蛙 蛙星
1 とんとんと杭を打つ音春空へ うらら
1 むめ咲くや日溜まりのある屋敷跡 貴美
1 音沙汰のなければいよよ冴え返る 海紅
1 新刊の匂ひそのまま冴返る 真美
1 星空や澄みゆくかをりふゆのバラ 
1 春寒し煉瓦倉庫はがらんどう 理恵子
1 洗い物する母の背や春浅し 理恵子
1 ライブ終へ車窓はおぼろ月夜かな 理恵子
1 すえこ笹探す山路の雪間かな 梨花
1 あたたかや靴ひも直す母の肩 馨子
1 今時のおのこのピアス春の風 つゆ草
1 下萌えや胎動始まる報のあり 京子
1 雨上がり早やさへづりの大樹かな ちちろ
1 春の海見目よき人と由比ヶ浜 月子
1 まだ少しいびつなこころ猫の恋 宏美
1 新しき肌石鹸や建国日 宏美
1 蝋梅は控えめにして寺の庭 春代

☆ 参加者 ☆ <順不同・敬称略>
谷地海紅、市川千年、今関理恵子、植田ひぐらし、宇田川うらら、大江月子、荻原貴美、尾見谷静枝、梶原真美、佐藤馨子、世羅安愚楽、丹野宏美、千葉ちちろ、中里蛙星、根本梨花、備後春代、平塚ふみ子、古崎 笙、眞杉窓花、三木つゆ草、森田京子、谷地元eiko、村上エール(以上23名)

<取りまとめ、エール記>
< 了 >



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