白山俳句会会報 No.61

白山句会 白山句会報第61号

  □日時 2024年4月14日(日)
  □会場 東洋大学甫水会館4F会議室


 幹事の根本さんと校友会の尾崎さんにお世話いただき、甫水会館で句会を実施しました。白山で行うのは2018年以来5年ぶりでした。大学や白山の街の懐かしさに誘われて、ご無沙汰の方も含めた21名が参加し、楽しく座を囲みました。
 また、句会後は市川千年さんによる講話―牧野富太郎あれこれ―と谷地先生によるミニ講話―「俳句鑑賞の手引き」と『前書のポテンシャル』概説―も実施され、充実した白山句会となりました。<真美記>

〈 俳 話 少 々 〉

 句会当日の立ち話に「似たような句が多くて選句に困惑した」というものがあった。具体的には花(桜)の句が多かったことの感想か。同じものを見るのは吟行(明媚な地で句作すること)の宿命だが、それを長所と考えて句作を競い合ってほしいというのがボクの意見。直接関係はないが、ボクが上京した昭和45年(1970)の翌年の流行歌の、「あの時/同じ花を見て/美しいと言った二人の心と心が・・・」というフレーズをモグモグしてしまった。『あの素晴しい愛をもう一度』(北山修詞・加藤和彦曲)の一節である。
 後半の座談「俳句鑑賞の手引き」は、「俳句は一人称(作者自身)の詩」という定義を過信しないために、「連句付合用語にも俳句読解のヒントがある」というという話をした。連句人が自他場と呼ぶ転じのヒントである。なお、「他の句」の例とした「蚊の声す忍冬の花の散るたびに」(蕪村・蕪村句集)を削除して、「離別れたる身を踏ん込んで田植かな」(蕪村・蕪村句集)を代入してもらいたし。疑義を表明された瑛子・千年両氏に感謝します。また、コピー『前書のポテンシャル』(『俳壇』4月号)は読めば分かるという判断で、冒頭解説のみとした。希望があれば、更なる解説の時間を模索します。<海紅記>


〈 句 会 報 告 〉

 互選は三句投句、五句選の結果です。ただし、蛙星氏には数にこだわらない選句をお願いしましたので、蛙星選と海紅選は互選の点数に含めておりません。なお、一部の作品について、作者の意図をそれない範囲で表現を改めたものがあります。<海紅記>


☆ 谷地海紅選 ☆

幾年もここに佇ちけり遅桜 宏美
故郷は遠くにありて蓬摘む 静枝
陽炎や赤目鋭き不動尊 ひぐらし
美容院髪染めし間の長閑かな 理恵子
高度下げ羽田へ眼下花の国
ペコちやんの髪にほつぺに花の屑 うらら
夫の忌や二十の孫に花吹雪 月子

☆ 里中蛙星選 ☆ ○印は特選

賑やかに児童の下校ハコベ咲く 
風光る玄関脇の三輪車 理恵子
下ろしたて靴の軽さや春の雲 理恵子
春風や年甲斐もなく団子坂 宏美
幾年もここに佇ちけり遅桜 宏美
夫の忌や二十の孫に花吹雪 月子
昼酒に重たきまぶた花吹雪 玄了
着ぶくれの車窓の畔は若葉色 静枝
風吹けば花を案ずる国に住む 海紅
桜餅葉つぱを取つて食ふ子かな  窓花
道遠し思ひがけなき夏陽差し 惠基
走る背に小さくエール春の駅 うらら
先見えぬ長き坂道春深し ふみ子

☆ 互選結果 ☆

7 風吹けば花を案ずる国に住む 海紅
6 土筆手に遊び疲れて母の背に つくし
4 お地蔵に桜蕊降る通学路 窓花
4 待ちわびて咲いて寂しき桜かな うらら
4 走る背に小さくエール春の駅 うらら
4 碧空もはなもたゆたふ川面かな
3 幾年もここに佇ちけり遅桜 宏美
3 故郷は遠くにありて蓬摘む 静枝
3 またいつかいつかきつととはなふぶく
3 おもむろにチェロを弾き出す飛花落花 真美
3 桜しべ降る広げたる母の手に 蛙星
3 かざぐるまひとまはりするだけのかぜ 蛙星
2 しなやかに生くる友とゐ花の下 馨子
2 春雷や抜歯の痛み粥を炊く 和子
2 下ろしたて靴の軽さや春の雲 理恵子
2 風光る玄関脇の三輪車 理恵子
2 行く春や学名にありitosakura 千年
2 囀のかすかな朝や調律す 真美
2 周りみなお国訛りや蜆汁 蛙星
2 苦味濃し地球の恵み蕗の薹 春代
2 春の鳶生簀のやうな船溜 梨花
1 山のみず流るる音や花月夜 瑛子
1 バイク置く小橋に伸び来若葉かな 瑛子
1 先見えぬ長き坂道春深し ふみ子
1 春の暮ロマンスグレーの粋な人 ふみ子
1 露地いつぱい花埋めつくす今朝の風 美雪
1 学舎や師の退官の春思ひ 美雪
1 春の園帰ればかすり傷ひとつ 千年
1 陽炎や赤目鋭き不動尊 ひぐらし
1 他愛無きおしやべり愉し花の舞ふ ひぐらし
1 役者皆鬼籍のドラマ春の宵 月子
1 夫の忌や二十の孫に花吹雪 月子
1 散る花の風を操り水の面へ 馨子
1 ひこ桜なでなでするや小さき手 つくし
1 高度下げ羽田へ眼下花の国
1 うららけし臥牛のごとき古墳かな ひろし
1 カシャカシャと連写静かや花吹雪 つゆ草
1 桜餅葉つぱを取つて食ふ子かな 窓花
1 ペコちやんの髪にほつぺに花の屑 うらら
1 花いかだ定まらぬ目の濁り水 安愚楽
1 真壁来て溢れる花のゆくへ問ふ 安愚楽
1 けなげなり残り桜のただ一輪 惠基
1 道遠し思ひがけなき夏陽差し 惠基
1 行く春や小一時間ほど当てもなく 海紅
1 花残る入園料は五百円 海紅
1 父の気配植ゑて逝きたる黄水仙 梨花
1 さつさうと石段かける花の雨
1 春風や年甲斐もなく団子坂 宏美
1 賑やかに児童の下校ハコベ咲く
1 青雲の思ひは遥か花筏 玄了
1 空車待つタクシー乗り場燕来る 真美

☆ 参加者 ☆ <順不同・敬称略>
谷地海紅、青栁光江(改め、つくし)、市川千年、今関理恵子、宇田川うらら、大江月子、尾崎喜美子、佐藤馨子、里中蛙星、世羅安愚楽、田中正子、谷 美雪、丹野宏美、丁子蕾花、内藤玄了、根本梨花、平塚ふみ子、三木つゆ草、宮野惠基、谷地元瑛子、梶原真美(以上21名)

☆ 欠席投句者 ☆ <順不同・敬称略>
礒部和子、植田ひぐらし、梅田ひろし、尾見谷静枝、加藤 悠、柴田 憲、西野由美、備後春代、古崎 笙、眞杉窓花(以上10名)

<取りまとめ、真美記>
< 了 >



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