白山俳句会会報 No.60

白山句会 白山句会報第60号

  □日時 2024年2月24日(土)
  □会場 カルテモのオフィス(葛西)


 今回の白山句会の会場は、内藤玄了さんの株式会社カルテモのオフィスをお借りして開催されました。内藤さんには大変ご尽力いただき、懇親会もその場でさせていただきました。アットホームな雰囲気の中で句会・懇親会を開くことが出来ました。
 寒波が戻り、季語の「春寒」「余寒」がぴったりの寒い日でしたが、内藤さんがチャイ(インドで買われたお茶)を牛乳で温めて飲ませていただきました。温かくて美味しかったです。大変感謝しております。ありがとうございました。<エール記>

〈 俳 話 少 々 〉

 1月の「集い」で話した芭蕉の「とりはやし」論は〈つまるところ、俳句(発句)は季節の詞と、それ以外のものとの配合である。だが二者を並べればよいわけじゃなく、主観を以て相互映発する工夫をしなければダメ〉ということでした。
このミニ講義を納得、感心してくれた人は多い。でも、理屈がわかれば、すぐ実践できるというものでもない。めげずに句作を楽しむことが大切である。
このたびの海紅選に「ベンチにはランドセルあり春寒し」「置き去りのテニスボールや春寒し」の二句が含まれていた。句会終了後に作者の理恵子さんがボクに〈どうして選ばれたか分からない〉〈自分の句のどこがよいか分からない〉とつぶやいた。
前者は「春寒し」と「ベンチ」、後者は「春寒し」と「テニスボール」の配合(取り合わせ)。読者は読後に、〈ランドセルの持ち主の小学生はどこで何をしているのだろう〉と思わせる。〈テニスをしていた人はどうしちゃったのか〉と思わせる。それが「とりはやし」で「春寒し」の世界を豊かにしている。でも、それを作者自身がわかっていない。こういう例はままあることだが、こうして説明すれば作者はむろん、作者以外の人も理解を深めてくれるのではないか。そんな期待で長めの「俳話少々」になってしまった。
<海紅記>


〈 句 会 報 告 〉

 互選は三句投句、五句選の結果です。ただし、海紅選と梨花選は詩情の有無を優先して、五句を超える数を選んでいますので、互選の点数に含めてはおりません。なお、一部の作品について、作者の意図をそれない範囲で表現を改めたものがあります。<海紅記>


☆ 谷地海紅選 ☆

節分会今日は生き生き過疎の寺 静枝
梅開く庭で一服椅子も出し 静枝
目覚めれば故郷の音雪解川 喜美子
リハビリや杖をコツンと梅を見に 喜美子
孫ふたり大学入試神頼み 紅舟
あたたかや迷ひ迷ひてカルテモへ 紅舟
バレンタイン大きい方が息子宛 千寿
風光る忠敬像は歩くごと 千寿
ベンチにはランドセルあり春寒し 理恵子
置き去りのテニスボールや春寒し 理恵子
春炬燵妻の寝床に成り果てぬ 安愚楽
橋渡り坂を上つて春の猫 うらら
冴え返る水琴窟の響きかな 馨子
手作りのふつくら顔の雛飾る 京子
春風や検査帰りの背中押し 玄了
寒明けやごみ収集の若き声
春一番江戸前あなご握り寿司 ひぐらし
春めくやメトロ路線図なぞりをり 真美
オフィスの机に今日からチューリップ 光江

☆ 根本梨花選 ☆

節分会今日は生き生き過疎の寺 静枝
冬の田や古代に続く煙立つ 静枝
春風や検査帰りの背中押し 玄了
番傘で男一人の花見かな 朗子
オフィスの机に今日からチューリップ 光江
春霞富士ぼんやりと車窓から 美雪
銀髪におちよぼ口していちご狩り 朗子
親しきは長女が多し黄水仙 うらら
春炬燵妻の寝床に成り果てぬ 安愚楽
父の切る髪不揃ひに春日和

☆ 互選結果 ☆

6 節分会今日は生き生き過疎の寺 静枝
5 八万羽の雁の帰りし沼の黙 梨花
4 目覚めれば故郷の音雪解川 喜美子
4 父の切る髪不揃ひに春日和
4 津波引き浮寝の鳥の海となる 月子
4 春立つ日背を射る光独り占め 美雪
3 前面に海をひらきて暖かし 海紅
3 手作りのふつくら顔の雛飾る 京子
3 癇癪の子のうす目開くしやぼん玉
3 かがよひて春の予感の波間かな つゆ草
3 白梅のすき間すき間に光る海 梨花
3 手から手に祖母と丸める餅の花 梨花
2 親しきは長女が多し黄水仙 うらら
2 信号待つオープンポルシェ梅の風 瑛子
2 語らひの部屋はそのまま雛飾る 京子
2 番傘で男一人の花見かな 朗子
2 雪もよひ輪島で買ひし塗りの椀 月子
2 梅一輪一行のみの日記かな 宏美
2 置き去りのテニスボールや春寒し 理恵子
2 ふきのたう老いの秘め事ほろにがく 朗子
1 ひめやかにみいる絵巻や風光る
1 寒明けやごみ収集の若き声
1 スマイルの似合ふ駅前梅三分 蛙星
1 卒業期恋とは呼べぬ恋もあり 蛙星
1 春光や句会の朝の汁旨し 貴美
1 春野菜売る人の声や寺の道 貴美
1 風光る忠敬像は歩くごと 千寿
1 春めきて目当ての靴は売り切れに 千寿
1 深川の法螺貝響く春を待つ エール
1 春暁や旅の行程つらつらと エール
1 なにかしら生きづらさ来て日向ぼこ 安愚楽
1 橋渡り坂を上つて春の猫 うらら
1 老桜や羽を休ませ芽吹きたり 馨子
1 春風や検査帰りの背中押し 玄了
1 銀髪におちよぼ口していちご狩り 朗子
1 草の芽に遠き追ひかけどなたかな 蕾花
1 街路道裸木続き空高し 春代
1 早春の句会に季語の定まらず 紅舟
1 春浅しバターの香満つパティスリー 真美
1 巣立つ子のリメイク鞄テディベア 光江
1 流氷や漁師の歌ふ北帰行
1 春光や耳さす風のすべり台 由美
1 梅東風や我が背の君の心恋し 窓花

☆ 参加者 ☆ <順不同・敬称略>
谷地海紅、青柳光江、今関理恵子、荻原貴美、尾崎喜美子、尾見谷静枝、梶原真美、
椎名美知子、世羅安愚楽、高橋千寿、谷美雪、丁子蕾花、月岡糀、内藤玄了、根本梨花、舩坂朗子、三木つゆ草、水野紅舟、村上エール(以上19名)

☆ 欠席投句者 ☆ <順不同・敬称略>
植田ひぐらし、宇田川うらら、大江月子、加藤悠、倉持宏子、丹野宏美、佐藤馨子、
里中蛙星、西野由美、備後春代、古崎笙、眞杉窓花、森田京子、谷地元瑛子
(以上14名)

<取りまとめ、エール記>
< 了 >



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