白山俳句会会報 No.59

白山句会 白山句会報第59号

  □日時 2023年12月5日~19日 第13回ネット句会
  □会場 「芭蕉会議」サイト会員フォーラム(専用掲示板)


 今年は4月・6月・10月の句会で皆様にお会いすることが出来ました。とても有意義な一年になりました。この12月は久しぶりのネット句会となりましたが、参加者34名102句が揃いました。対面句会、ネット句会のどちらも良い点があって、とても楽しいです。海紅先生のご負担は一向に減りませんが、今後ともご指導よろしくお願い申しあげます。<エール記>

〈 俳 話 少 々 〉

 我々が人として生を享けた事実は奇跡に等しい幸運。それを実感するためには、日々の変化を広い心で受け入れて暮らすことが大切です。その努力のひとつが俳句というたしなみであると信じてきました。しかし、その実践は必ずしも容易でない。
 そこで、来たる一月十四日(日)に予定されている「芭蕉会議の集い」の講話で、芭蕉さんの言説を借りて、〈俳句はこういう姿勢で作りなさい〉という、やや具体的なお話をいたします。講話の主旨をよりよく理解するために、ぜひ御自分の句を一句か二句持参してお聞きいただければ幸いです。<海紅記>


〈 句 会 報 告 〉

 互選は三句投句、五句選の結果です。ただし、海紅選は五句を超える数を選んでいますので、互選の点数に含めてはおりません。
 また、海紅選の一部の作品について、作者の意図をそれない範囲で表現を改めたものがあります。原句と比較の上、再考願います。なお、互選についても気がつく範囲で仮名遣いを改めました。御了承ください。<海紅記>


☆ 谷地海紅選 ☆

職人に茶をだす山茶花日和かな
原句「茶だす」。
瑛子
かげひなたなく実りけり蜜柑山 瑛子
畳替四半世紀の塵を掃く 馨子
老い方を猫に教はる小春かな 馨子
海峡は阻むものなし冬夕焼 千寿
小春日や息子に習ふ家事のこつ 千寿
運休のフェリー乗り場や浮寝鳥 真美
時雨るるや屋台の仕込み黙々と 真美
ソロバンに通ひし頃の冬夕焼 京子
一人住む母を眠らせ冬の月 京子
母に子にいつも優しき毛布かな 蛙星
小春日や花を届けにバスを待つ
原句「バス待つて」。
うらら
救急車音冴えわたる寒の月 喜美子
鉄瓶の鉉の温みよ冬来る
紀の国を再び訪はん熊楠忌
原句「訪はむ」。
千年
黄葉に日の移りけり万歩計 貴美
遊歩道水音がして冬うらら ちちろ
来し方をつくづく思ふ冬銀河
原句「想ふ」。
つゆ草
から風は空き家を泣かせゆきにけり
原句「泣かせて通り過ぎ」。
春代
人混みの中の握手や十二月 宏美
枯葉舞ふ駅で恋人待つやうに 光江
オリオンや湯屋の煙突残る街
雪冠る富士山を見に屋上へ 由美
終活は思ひ出づくし帰り花 令子

☆ 互選結果 ☆

7 人混みの中の握手や十二月 宏美
6 ゐるだけでいいと言ひ切り冬木立 宏美
6 オリオンや湯屋の煙突残る街
5 職人に茶をだす山茶花日和かな eiko
4 海峡は阻むものなし冬夕焼 千寿
4 母に子にいつも優しき毛布かな 蛙星
4 時雨るるや屋台の仕込み黙々と 真美
4 鉄瓶の鉉の温みよ冬来る
4 老い方を猫に教はる小春かな 馨子
3 大空に機影ひと粒寒日和 ふみ子
3 湯豆腐を囲み本音を聞くとせん 海紅
3 背を屈めポインセチアに愚痴閉ざし 安愚楽
3 冬灯し空き家に図書室できたらし 月子
3 満月に灯りはいらぬ旅の宿 和子
2 悴む手息吹きかけて詰め放題 エール
2 老眼をしばたき仰ぐ冬の月 ちちろ
2 小春日や息子に習ふ家事のこつ 千寿
2 運休のフェリー乗り場や浮寝鳥 真美
2 冬日浴び部屋の静けさ子の嫁ぐ 京子
2 紀の国を再び訪はん熊楠忌 千年
2 県境に赤錆の橋冬の雨 うらら
2 五十有余年の遊子日記買ふ 海紅
2 スマホ打ち炬燵にはまる亀のごと 窓花
2 焦げ軍手ちやりんと焼芋のおつり 由美
2 暮早し文字のかすれるボールペン
2 かげひなたなく実りけり蜜柑山 eiko
2 黄葉に日の移りけり万歩計 貴美
2 スリッパを新調したる十二月 海紅
2 受講者の反応薄し夕時雨 ひぐらし
2 ケーキ手に走る子供の水つ洟 光江
2 小春空とうふ屋の笛追いかける 馨子
1 野良作業汗ばむ午前冬浅し 窓花
1 つまらないテレビを消して咳ひとつ 蛙星
1 一茶忌は葛飾愛する句の多し 和子
1 遊歩道水音がして冬うらら ちちろ
1 暖房にまどろむ子らは夜勤明け 千寿
1 軽やかに走る若者冬夕焼 ふみ子
1 笑み零る師走の街の雑踏に 喜美子
1 ウェディングベル聴く両家の祖父に秋の椅子 梨花
1 泣き疲れし子ねんねこの中 ふうせん
1 東屋の軒の陽だまり寒すずめ 光江
1 落葉舞ふ濡れし路面にドット柄 エール
1 吊るし柿里の家々季の明かり 静枝
1 その先のトンネルの先月冴ゆる エール
1 立冬や無人運転モノレール ひぐらし
1 猫が座すマイナス一度の江別駅 安愚楽
1 救急車音冴えわたる寒の月 喜美子
1 畳替四半世紀の塵を掃く 馨子
1 ソロバンに通ひし頃の冬夕焼 京子
1 野路菊や播磨に塩の峠道 千年
1 言の葉の燥ぐ通りや枯芙蓉 宏美
1 終活は思ひ出づくし帰り花 令子
1 小春日や花を届けにバスを待つ うらら
1 カラカラと音を奏でて舞ふ落葉 春代
1 湯豆腐は絹より木綿母の伝 うらら
1 から風は空き家を泣かせゆきにけり 春代
1 にほやかに切株ふたつひなたぼこ 令子
1 枯葉舞ふ駅で恋人待つやうに 光江
1 榾火かへす封人の家老一人 梨花
1 一人住む母を眠らせ冬の月 京子
1 電波塔ぽつぽつ灯し山眠る 真美
1 冬の蚊に歩めよ孫の涎かな 安愚楽
1 捨てられぬ物の一つに黒ショール つゆ草

☆ 参加者 ☆ <順不同・敬称略>
谷地海紅、宇田川うらら、三木つゆ草、植田ひぐらし、世羅安愚楽、加藤 悠、中里蛙星、梶原真美、尾崎喜美子、荻原貴美、大江月子、内藤玄了、古崎令子、青柳光江、高橋千寿、根本梨花、佐藤馨子、市川千年、柴田 憲、森田京子、西野由美、尾見谷静枝、千葉ちちろ、眞杉窓花、谷地元瑛子、谷美雪、丹野宏美、備後春代、椎名美知子、礒部和子、丁子蕾花、平塚ふみ子、荒井ふうせん、村上エール(以上34名)

<取りまとめ、エール記>
< 了 >



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