□日時 2020年6月25日(木)~7月5日(日)、第3回ネット句会
□会場 「芭蕉会議」サイト会員フォーラム(専用掲示板)
6月も続いてネット句会になりましたが、38名の参加があり好評でした。句から、それぞれの場所での吟行を想像する楽しみもあるように思います。
そして新しく掲示板にラウンジ575(仮称)とつけ、選評会ができるようになりました。皆さんの選評も楽しく勉強になります。
<右稀記>
〈 俳 話 少 々 〉
其1:海紅選について
海紅選の基準は前回同様です。つまり、A:省略が利いて抒情あきらかな句、B:季感が備わるスケッチ、C:焦点定まらぬつぶやきの三段階。選句は俳句を長く続けていただきたい一心から、Bにかなうと判断したものすべてを選んだつもりです。しかし、見落としは避けられません。その場合は海容をお願いいたします。
海紅選からもっとも印象に残る句を、各題で一句を抜き出してみます。紫陽花では「初任給あぢさゐの鉢提げて来る」、梅雨では「たくましき土鳩の羽音梅雨晴間」、暑さでは「帽子暑いと脱ぎたがる子どもかな」です。この3句は、作者が誰であろうと、このたびの白山句会の共有財産(よいお手本)である。私は句会の結果をこのように考えています。この3句を記憶にとどめおき、各自の日常生活で、くりかえし味わっていただきたいと願っています。<海紅記>
其2:選句について
その理由はここでは措くが、昭和の後半から平成にかけた約半世紀には、社会教育(生涯学習)というブームがあって、公共・民間を問わず、〇〇カルチャーなどという講座・講演にずいぶん駆り出された。そして、ボクの場合、どんな古典を講ずる場合も、要所要所で聴講者に句作を勧めるのが常であった。
ある連続講座の何回目かの終了時に、聴講者の一人の女性が講師のボクに話しかけてきた。その内容は、「この講座を聴いて俳句に興味を持ち、『俳句という遊び ―句会の空間』 (岩波新書) を買って読んだが、句会の結果である選句が各俳人でマチマチで、そんな世界にはついてゆけないと考えた。よって次回以降は聴講しない」というもの。そして、その新書をボクにくれて去って行った。
この新書の宣伝文句には「当代一流の俳人たちの流派を超えた句会」などとあるので、彼女はすぐれた俳句の基準を修得できると期待して読破、そして外れたのであろう。
ボクは本書に登場する複数の俳人に面識があるので、いままでこの話を他人に語ったことはない。みずから進んで、世間を狭くすることもないからである。イサカイ、モメゴトはボクのもっとも嫌うところなのだ。だが、これ以後、ボクは「大方の人に共通する美の基準はなにか」という難問について、襟を正すようになった。
ほとんどの人が同調できる美の基準がなければならぬ。このたびの白山句会45で、「ラウンジ575」という選句談義の試みがあったので、こんな一文を残しておく決心をした。<海紅記>
其3:選者について
この世には、誰もが納得するという句がなければいかん。それを裏付ける美学がなければいかん。それを求めて、芭蕉会議では海紅の他に複数の人に選者をお願いしている。このたびは宇田川うらら、寺澤始の両氏である。
うらら氏にこの依頼をしたとき、彼女は大いにおどろき、「3秒ほど死にました」という返事が来た。そして「光栄だが、もっと適任の先輩方がいる」と拒んだ。しかし、彼女は芭蕉会議に顔を出したのと同じ時期に、創刊70周年を超える現代俳句系の俳誌『山河』に入っている。「まさか伝統俳句と現代俳句に違いがあったとは。知らないというのは、なんでもできちゃうんですね」とうそぶいているが、自分の選句に自信を持つべき十分な経歴である。ちなみに、ボクは俳句に伝統俳句も現代俳句もないと考えているが、その解説は別の機会に譲る。
寺澤始氏についてはすでに白山句会43で紹介済みだが、確認される場合は海紅山房日誌の「2016年 07月 26日/姿情を求めて6◆当季雑詠・兼題・席題」「2019年 08月 26日/この人の一句◆寺澤 始 句集『夜汽車』」を併せて参照いただければ幸い。
また、同じ白山句会43以降の参加を願っている吉田千嘉子氏については、海紅と故郷を同じくする関係でブログ記事も多く、関心を持つ人のために示せば以下の通り。「2010年 10月 23日/この人の一句◆吉田千嘉子『朳囃子』」「2010年 10月 23日/俳人になっていたチカちゃん」「2011年 06月 06日/新方丈記19◆チカちゃんとの再会」「2012年 02月 04日/えんぶりの舞」「2014年 09月 10日/この人の一句◆夕さりの肌湿りくる花野かな(藤木倶子)」「2014年 09月 21日/この人の一句◆葦原は風棲むところ残る虫(吉田千嘉子)」「2017年 02月 27日《この人の一句◆岩津必枝句集『十日戎』》」「2018年12月 16日/この人の一句◆中崎良子句集『青水無月』」。
なお、白山句会44で選者をお願いした梅田ひろし氏はボクの講筵に連なるころには、すでに俳誌『狩』に所属する実力俳人で、今は後継誌『香雨』を軸に活躍し、句会を指導してきた経験もゆたか。根本梨花氏もまた海紅と出逢う前から俳誌『槙』で経験を積み、今は後継誌『翡翠』の中枢を支える俳人。
芭蕉会議は、このように幅広い選者に恵まれているが、今後は海紅の思いつきで、句作経験の浅い人にも選者をお願いしてゆくことになる。責任ある選句を体験することで、誰もが納得する美学を考える仲間になるはずだから。<海紅記>
其4:かなづかいについて
芭蕉会議は俳人社会の大勢に倣い、いわゆる「歴史的仮名遣い」を推奨している。このかなづかいについて、古典を仕事にしてきたボクには抵抗はない。しかし、みなさんの子や孫の世代にこの「歴史的仮名遣い」で俳句を詠むことを勧めるだろうか。それは暴挙に近いだろう。俳句という文化が生き残ることを心の底から願うなら、この点をよく考えねばならぬ。
この「歴史的仮名遣い」は、国学者で歌人の契沖(1701没)理論を基にして、昭和21年(1946)の「現代かなづかい」の制定までおこなわれた。つまり、それまで「歴史的仮名遣い」は「現代かなづかい」だった。芭蕉や蕪村も「現代かなづかい」で詠んでいた。だから、いまいう「現代かなづかい」も、実は「歴史的仮名遣い」の一つであって、つねに古びる可能性をはらんでいることになる。このように、ことばは生きものだから、こまかく見ると、時代によって相違がある。つまり、「歴史的仮名遣い」と「現代かなづかい」とを二項対立や二者択一という単純な方法で区別することはできないのだ。
御承知の通り、芭蕉は「(蕉風)俳諧の益は俗語を正すなり」(『三冊子』わすれみづ)といっている。俗語とは日常語(話し言葉)のことである。くどいが、現代語のことでもある。この日常語(現代語)を「歴史的仮名遣い」に直したからといって、芭蕉のいう詩になるわけでないことは、俳句を詠むみなさんは百も承知なはずである。
これらを冷静に考えながら、芭蕉会議の仮名遣いは子々孫々を意識して、柔軟な態度で臨みたいと思う。<海紅記>
〈 句 会 報 告 〉
一部の作品について、作者の意図をそれない範囲で、表現を改めた句が含まれています。また、制限なく選句をお願いした宇田川うらら・寺澤 始、両氏の選、及び海紅選は互選の点数に含まれていません。
☆ 谷地海紅選 ☆
紫陽花や母の背中の丸くなり | 京子 | ||
あぢさゐのお隣の色うちの色 | 千寿 | ||
紫陽花の重りて泥にまみれけり | 泰司 | ||
留守宅の庭の紫陽花主人待つ | 春代 | ||
紫陽花の白きに兆す空の色 | 始 | ||
スーパーの外に並ぶや濃紫陽花 | 美知子 | ||
紫陽花をたつぷり切りて濃茶かな | 静枝 | ||
お互ひに紫陽花の径ゆづりあひ | ちちろ | ||
雨粒を残し紫陽花褪せにけり | 真美 | ||
母の忌の墓前に紫陽花どつさりと | ちちろ | ||
空色に海の色足す濃紫陽花 | うらら | ||
あぢさゐの青透きとほる小雨かな | 馨子 | ||
紫陽花やベール目深に修道女 | 悠 | ||
信号を待つ傘一歩四葩へと | 瑛子 | ||
富士塚は八合目まで濃紫陽花 | ひぐらし | ||
よぢのぼるツルアヂサヰと成りにけり | 千年 | ||
初任給あぢさゐの鉢提げて来る | 梨花 | ||
五月雨や般若心経写す日々 | つゆ草 | ||
煎餅を母と分け合ふ梅雨かな | 真美 | ||
五月雨や息ふきかへす壁の色 | 笙 | ||
梅雨籠アクアリウムを眺めせし | ふうせん | ||
D51の上で寝る猫梅雨晴れ間 | 光江 | ||
閉店の貼り紙のまた五月雨るる | うらら | ||
折紙を散らかすままの梅雨の居間 | 泰司 | ||
刺し子する耳にショパンや梅雨の午後 | 静枝 | ||
たくましき土鳩の羽音梅雨晴間 | ひろし | ||
引き出しにますほの小貝梅雨晴れ間 | エール | ||
五月雨や星のない日をあといくつ | うらら | ||
暑き日は火刑の道を歩くごと | 和子 | ||
帽子暑いと脱ぎたがる子どもかな | 由美 | ||
砂浜の目眩む砂の暑さかな | ふみ子 | ||
大空に放つ暑さやチエンソー | 喜美子 | ||
立ち上るにほひも暑し通り雨 | 馨子 | ||
葱生姜小皿に盛るも暑気払ひ | 月子 | ||
自動ドア開いて外出る暑さかな | 千寿 |
☆ 宇田川うらら選 ☆
紫陽花やオルガン聞こゆ坂の町 | 千寿 | ||
叢に紫陽花ばかり彩りて | 糀 | ||
あぢさゐのお隣の色うちの色 | 千寿 | ||
紫陽花や散りゆく前の藍深し | 貴美 | ||
紫陽花の白きに兆す空の色 | 始 | ||
紫陽花をたつぷり切りて濃茶かな | 静枝 | ||
紫陽花に見惚れて電車乗り遅れ | 和子 | ||
お互ひに紫陽花の径ゆづりあひ | ちちろ | ||
紫陽花や荷物両手に一休み | ふみ子 | ||
紫陽花やベール目深に修道女 | 悠 | ||
信号を待つ傘一歩四葩へと | 瑛子 | ||
あぢさゐの浅黄にやどる雫かな | 笙 | ||
テーブルに四葩一輪の万象 | エール | ||
垣根よりこぼるる星座額の花 | 瑛子 | ||
五月雨や櫺子の奥のささめごと | 泰司 | ||
五月雨や茶せんを洗ふ椀の白湯 | 月子 | ||
梅雨寒や救命センター夜中の灯 | 悠 | ||
草みなガラスの球つけ梅雨の朝 | 右稀 | ||
ドライバーじつとみつめし梅雨の空 | 邦雄 | ||
五月雨や規則正しき軒雫 | ちちろ | ||
梅雨寒やアマビエ顔のてる坊主 | 光江 | ||
折紙を散らかすままの梅雨の居間 | 泰司 | ||
たくましき土鳩の羽音梅雨晴間 | ひろし | ||
日影茶屋さみだれを聴く客若し | 瑛子 | ||
亡き人の傘濡らしたる梅雨かな | 始 | ||
カレーパンの油染み出す暑さかな | 始 | ||
この星の熱に水打つ狭庭かな | 月子 | ||
伸ばした手触れない距離の暑さ来る | 美知子 | ||
畳から見上げし空の暑さかな | 邦雄 | ||
暑き日や締めの一本若棟梁 | 宏美 | ||
大空に放つ暑さやチエンソー | 喜美子 | ||
果実酒の飲みごろ待てぬ暑さかな | ふうせん | ||
立ち上るにほひも暑し通り雨 | 馨子 | ||
葱生姜小皿に盛るも暑気払ひ | 月子 | ||
初任給あぢさゐの鉢提げて来る | 梨花 |
以上
理解力不足で取りそびれた句も多々あるかと思いますが、そこは<うらら選>ということでお許しいただきたく。うらら
☆ 寺澤 始選 ☆
紫陽花や母の背中の丸くなり | 京子 | ||
紫陽花や淋しくないと寄り添つて | しのぶこ | ||
あぢさゐのお隣の色うちの色 | 千寿 | ||
産声に笑み交し合ふ額の花 | 光江 | ||
紫陽花の車窓ながるる雨の粒 | しのぶこ | ||
自粛終へそば屋の前の鉢四葩 | 由美 | ||
お互ひに紫陽花の径ゆづりあひ | ちちろ | ||
雨粒を残し紫陽花褪せにけり | 真美 | ||
母の忌の墓前に紫陽花どつさりと | ちちろ | ||
空色に海の色足す濃紫陽花 | うらら | ||
紫陽花の風も夕べとなりにけり | 海紅 | ||
紫陽花や荷物両手に一休み | ふみ子 | ||
あぢさゐの青透きとほる小雨かな | 馨子 | ||
ヘヤーカットドアの紫陽花鏡の中 | 静枝 | ||
信号を待つ傘一歩四葩へと | 瑛子 | ||
富士塚は八合目まで濃紫陽花 | ひぐらし | ||
紫陽花のバックミラーに触れ始む | 千年 | ||
テーブルに四葩一輪の万象 | エール | ||
垣根よりこぼるる星座額の花 | 瑛子 | ||
五月雨や櫺子の奥のささめごと | 泰司 | ||
曲屋に馬うとうとす梅雨の音 | 由美 | ||
梅雨寒や救命センター夜中の灯 | 悠 | ||
雨音も雨粒も消ゆ梅雨の浜 | 美雪 | ||
解雇とか雇ひ止めとか梅雨に入る | 海紅 | ||
梅雨寒やアマビエ顔のてる坊主 | 光江 | ||
再会はもう少し先梅雨の星 | 馨子 | ||
五月雨や息ふきかへす壁の色 | 笙 | ||
折紙を散らかすままの梅雨の居間 | 泰司 | ||
立ち上るにほひも暑し通り雨 | 馨子 |
☆ 寺澤 始選評 ☆
白山句会2020年6月 寺澤 始 選句コメント
先日、お送りいたしました選句より、「五句」の選に採らせていただいた句について、コメントを書かせていただきます。よろしくお願いいたします。
23 お互ひに紫陽花の径ゆづりあひ
「径」とあるから舗装されていない狭い道なのだろう。譲り合わなければ通行することができない細い道。「紫陽花」の花の優しい色に癒されてか、どちらからともなく道を譲り合った。紫陽花のあの淡い美しさが、通行者に優しい気持ちを生み出したのだろう。あるいは傘を差していて、譲り合わなければ余計に通れなかったのかもしれない。大都会の大きな駅を通って通勤していると、肩を怒らせてぶつかるように我が物顔で歩いてくる人によく出会う。そんな中、ふと紫陽花をきっかけに生まれた人と人の優しさに触れたような気がする。
32 紫陽花の青透きとほる小雨かな
透明感のある美しい句。何ということのない日常の光景なのだが、紫陽花の青が小雨に溶けて滲むようだ。
小雨が紫陽花の美しさをいっそう引き出した。水彩画のよう。
65 五月雨や息吹きかへす壁の色
この句にも非常に鋭い感覚を感じた。陰暦五月の雨に洗われて息を吹き返す壁の色。これは写生の景でありながら、ここには人間の探究がある。埃まみれになった人間(俗世間の汚れや罪に塗れた人間)が日々生きていくためには、聖なるものに洗われて、息を吹き返すことが必要なのだ。
73 折紙を散らかすままの梅雨の居間
梅雨で外に出られず子供が折紙で遊んだのだろう。やがて遊び疲れて子供は寝入ってしまったのかもしれない。散らかった様々な色の折紙が、梅雨の暗さと相俟って印象的だ。雅な印象の句。
104 立ち上がるにほひも暑し通り雨
さっと降ってさっとやむ通り雨。わずかの時間に路地を黒く濡らしたが、その短い時間に立ち上がった雨のにほひにまで暑さを感じたところに感覚の鋭さを感じた。
以上、寺澤 始コメントです。
☆ 互選結果 ☆
7 | あぢさゐの青透きとほる小雨かな | 馨子 | |
7 | 立ち上るにほひも暑し通り雨 | 馨子 | |
6 | あぢさゐのお隣の色うちの色 | 千寿 | |
6 | 暑き日や締めの一本若棟梁 | 宏美 | |
6 | 大空に放つ暑さやチエンソー | 喜美子 | |
6 | 初任給あぢさゐの鉢提げて来る | 梨花 | |
5 | 富士塚は八合目まで濃紫陽花 | ひぐらし | |
5 | 垣根よりこぼるる星座額の花 | 瑛子 | |
5 | 五月雨や息ふきかへす壁の色 | 笙 | |
5 | 引き出しにますほの小貝梅雨晴れ間 | エール | |
4 | 五月雨や般若心経写す日々 | つゆ草 | |
4 | 雨音も雨粒も消ゆ梅雨の浜 | 美雪 | |
4 | 折紙を散らかすままの梅雨の居間 | 泰司 | |
3 | 産声に笑み交し合ふ額の花 | 光江 | |
3 | お互ひに紫陽花の径ゆづりあひ | ちちろ | |
3 | 梅雨寒や救命センター夜中の灯 | 悠 | |
3 | ドライバーじつとみつめし梅雨の空 | 邦雄 | |
3 | カレーパンの油染み出す暑さかな | 始 | |
2 | 紫陽花や毬重たげに細き茎 | 糀 | |
2 | 紫陽花やオルガン聞こゆ坂の町 | 千寿 | |
2 | 紫陽花の白きに兆す空の色 | 始 | |
2 | 紫陽花の車窓ながるる雨の粒 | しのぶこ | |
2 | 紫陽花をたつぷり切りて濃茶かな | 静枝 | |
2 | 三密も知らず紫陽花密に咲く | 和子 | |
2 | 雨粒を残し紫陽花褪せにけり | 真美 | |
2 | 空色に海の色足す濃紫陽花 | うらら | |
2 | 紫陽花の風も夕べとなりにけり | 海紅 | |
2 | テーブルに四葩一輪の万象 | エール | |
2 | 五月雨や茶せんを洗ふ椀の白湯 | 月子 | |
2 | 五月雨るる薄墨色や上高地 | つゆ草 | |
2 | 煎餅を母と分け合ふ梅雨かな | 真美 | |
2 | 五月雨や規則正しき軒雫 | ちちろ | |
2 | たくましき土鳩の羽音梅雨晴間 | ひろし | |
2 | 入梅晴れ干して眩しきシーツかな | 貴美 | |
2 | 青梅雨の緑の露に包まるる | 右稀 | |
2 | 長電話声の向かふの暑さかな | ひぐらし | |
1 | 紫陽花や淋しくないと寄り添つて | しのぶこ | |
1 | 紫陽花や散りゆく前の藍深し | 貴美 | |
1 | 留守宅の庭の紫陽花主人待つ | 春代 | |
1 | 藍あぢさゐお庭係りの遺しもの | 香粒 | |
1 | あぢさゐの花言葉だと教はつて | ふうせん | |
1 | 紫陽花や荷物両手に一休み | ふみ子 | |
1 | 紫陽花やベール目深に修道女 | 悠 | |
1 | 信号を待つ傘一歩四葩へと | 瑛子 | |
1 | 雪隠や紫陽花白き佇まひ | 笙 | |
1 | あぢさゐの浅黄にやどる雫かな | 笙 | |
1 | 紫陽花のバックミラーに触れ始む | 千年 | |
1 | 紫陽花は真ンのさかりぞ明けにける | 憲 | |
1 | 紫陽花や忘れられても淡く濃く | しのぶこ | |
1 | 咲き初むる額紫陽花の秘色かな | つゆ草 | |
1 | 五月雨や櫺子の奥のささめごと | 泰司 | |
1 | 解雇とか雇ひ止めとか梅雨に入る | 海紅 | |
1 | 草みなガラスの球つけ梅雨の朝 | 右稀 | |
1 | 再会はもう少し先梅雨の星 | 馨子 | |
1 | 梅雨晴れやもつと遠くへ風の中 | ふみ子 | |
1 | 梅雨籠アクアリウムを眺めせし | ふうせん | |
1 | 「東京を卒業す」と梅雨の朝 | エール | |
1 | 閉店の貼り紙のまた五月雨るる | うらら | |
1 | 五月雨や縷縷『ほそ道』の客座敷 | 宏美 | |
1 | 沈み浮き流れ往く壜運河梅雨 | 悠 | |
1 | 日影茶屋さみだれを聴く客若し | 瑛子 | |
1 | 亡き人の傘濡らしたる梅雨かな | 始 | |
1 | この星の熱に水打つ狭庭かな | 月子 | |
1 | 伸ばした手触れない距離の暑さ来る | 美知子 | |
1 | 畳から見上げし空の暑さかな | 邦雄 | |
1 | 塩を舐め水ぐびぐびと暑気払ふ | ひろし | |
1 | 帽子暑いと脱ぎたがる子どもかな | 由美 | |
1 | いや暑し知らず惚けのまろび寝す | 憲 | |
1 | ソーダ水天にゴクンと暑気払い | 貴美 | |
1 | 差し入れは缶ジュースてふ暑さかな | 真美 | |
1 | 麻衣バリッと乾くや暑さくる | 右稀 | |
1 | 果実酒の飲みごろ待てぬ暑さかな | ふうせん | |
1 | 自動ドア開いて外出る暑さかな | 千寿 | |
1 | 酔眼にネオンの暑さ腕まくり | 邦雄 | |
1 | 「言葉は残る」ふと読み返す梅雨晴間 | 梨花 |
☆ 参加者 ☆ <順不同・敬称略>
谷地海紅、谷地元瑛子、丹野宏美、柴田 憲、梅田ひろし、佐藤馨子、三木つゆ草、尾見谷静枝、荒井ふうせん(改め、奈津美)、椎名美知子、宇田川うらら、千葉ちちろ、梶原真美、大石しのぶこ、尾崎喜美子、礒部和子、西野由美、大江月子、加藤 悠、植田ひぐらし、村上エール(改め、智子)、市川千年、鈴木香粒、平塚ふみ子、内藤邦雄、備後春代、森田京子、青柳光江、月岡 糀、相澤泰司、山崎右稀、谷 美雪、髙橋千寿、荻原貴美、寺澤 始、水野紅舟、根本梨花、古崎 笙(以上、38名)
<以上取りまとめ、右稀記>
< 了 >