□日時 2020年4月11日~25日、ネット句会
□会場 「芭蕉会議」サイト会員フォーラム(専用掲示板)
毎年4月の句会はいわゆるお花見句会であり、楽しみにされていた方も多かったのではないでしょうか。ただ、コロナウイルスの影響により、当初予定していた子規庵での句会は中止にせざるを得ませんでした。そこで、場所をネットに移しての句会開催となりました。3年ぶりのネット句会は、普段とは違い、あらかじめ指定された兼題3つに沿って投句をするという新しい試みで行われましたが、いかがだったでしょうか。結果的に40名近い参加者が集まり、120近くの句が寄せられる大規模な句会となりました。<真美記>
〈 俳 話 少 々 〉
選句について少し述べます。句会では、自分の句のどれを捨て、どれを残すか。その判断力を養うことが最終目標です。そのためには句作歴の長い人がどんな句を選ぶかを学ぶのが有効です。今回は梅田ひろし(『香雨』所属)、根本文子(『翡翠』所属)の両氏に制限なしの選句をお願いしました。なお、前回の浜離宮で御一緒した吉田千嘉子(『たかんな』主宰)さんに打診したところ快諾を得ましたので、併せて三氏の選句が得られるという贅沢な結果になりました。この場を借りて、お礼申し上げます。
なお、海紅選はA:省略が利いて抒情あきらかな句、B:季感が備わるスケッチ、C:焦点定まらぬつぶやきを基準とし、俳句を長く続けていただきたい一心から、Bにかなうと判断したものすべてを選んだつもりですが、見落としもあるでしょう。海容をお願いいたします。<海紅記>
〈 句 会 報 告 〉
一部の作品について、作者の意図をそれない範囲で、表現を改めた句が含まれています。また、制限なく選句をお願いした吉田千嘉子・梅田ひろし・根本梨花、三氏の選、及び海紅選は互選の点数に含まれていません。
☆ 谷地海紅選 ☆
水切りの石のごと飛び囀りぬ | 千年 | ||
囀りや三つ重なる祝ひ事 | つゆ草 | ||
さへづりや句帳の中の二十年 | 紅舟 | ||
囀りやこの子全身耳になる | 瑛子 | ||
囀りの中や登校肩並べ | 窓花 | ||
囀や新教材の待ち遠し | 糀 | ||
囀の木々ランナーの足軽し | 始 | ||
囀や園児の列とすれ違ふ | 千寿 | ||
背で聞く励ますやうな囀りよ | 右稀 | ||
囀りやバドミントンの羽根高し | ふみ子 | ||
囀や芭蕉の山河辿る旅 | 悠 | ||
紙風船ついて子供になつてみる | 美知子 | ||
ピエロより貰ふ風船今日開店 | 月子 | ||
縁側をころんころんと紙風船 | 奈津美 | ||
風船のするりと逃げてそれつきり | 啓子 | ||
風船の迷ひは空の広さなり 【参考】風船の迷へる空の広さかな |
しのぶこ | ||
友達になつて風船分け合へり | 真美 | ||
ねだられて試食売り場のゴム風船 | 智子 | ||
風船の紐を握りし日や昔 | 泰司 | ||
百歳へ向かふ親父の朝寝かな | 千年 | ||
大人(たいじん)になりたる思ひ朝寝して | ひろし | ||
朝寝してトーストにバターマーマレイド | 月子 | ||
肉球に頬をはたかれ朝寝かな | 奈津美 | ||
猫のひげ朝寝のわれを起こしけり | 馨子 | ||
休校の要請受けて朝寝かな | 窓花 | ||
ゆつたりと朝寝も可能シニアの身 | 春代 | ||
カーテンに頬撫でられし朝寝かな | くにお | ||
約束の午後に間に合ふ朝寝かな | しのぶこ | ||
朝寝してラジオ体操をはるころ | 香粒 | ||
ごみ出しの大役果たし朝寝かな | ひぐらし | ||
掛布団夢のかたちに朝寝かな | 始 | ||
朝寝して懐かしき夢終はりまで | 千嘉子 |
☆ 吉田千嘉子選 ☆
囀りや信濃の谷の明けゆきぬ | 由美 | ||
囀りやこの子全身耳になる | 瑛子 | ||
囀りや筆なめらかに朱印帳 | 和子 | ||
囀や空より降れる四分音符 | 啓子 | ||
囀りやおにぎり三つ平らげる | しのぶこ | ||
相席の吉田茂似百千鳥 | ひぐらし | ||
囀や園児の列とすれ違ふ | 千寿 | ||
囀や芭蕉の山河辿る旅 | 悠 | ||
ひいふうみい縁に弾けし紙風船 | つゆ草 | ||
ピエロより貰ふ風船今日開店 | 月子 | ||
ひいふうみい数へし母や紙風船 | 馨子 | ||
風船のするりと逃げてそれつきり | 啓子 | ||
風船の迷ひは空の広さなり | しのぶこ | ||
毒消し売りのよもやま話紙風船 | ひぐらし | ||
風船の離れて寄りて空に消え | 始 | ||
百歳へ向かふ親父の朝寝かな | 千年 | ||
牧場や朝寝の窓を射る光 | 瑛子 | ||
肉球に頬をはたかれ朝寝かな | 奈津美 | ||
ゆつたりと朝寝も可能シニアの身 | 春代 | ||
カーテンに頬撫でられし朝寝かな | くにお | ||
もう少しもうちよつとと朝寝かな | 右稀 |
☆ 梅田ひろし選 ☆
水切りの石のごと飛び囀りぬ | 千年 | ||
囀りや息子の力目覚めさせ | 静枝 | ||
囀りや信濃の谷の明けゆきぬ | 由美 | ||
囀や蒔絵の椀の箸休め | 奈津美 | ||
囀りや筆なめらかに朱印帳 | 和子 | ||
囀や空より降れる四分音符 | 啓子 | ||
囀や新教材の待ち遠し | 糀 | ||
読みさして気付く囀り頻りなり | 泰司 | ||
囀や芭蕉の山河辿る旅 | 悠 | ||
ピエロより貰ふ風船今日開店 | 月子 | ||
縁側をころんころんと紙風船 | 奈津美 | ||
風船にずつと手を振る男の子 | うらら | ||
風船のするりと逃げてそれつきり | 啓子 | ||
風船を持つ手をひらき青い空 | くにお | ||
毒消し売りのよもやま話紙風船 | ひぐらし | ||
風船の離れて寄りて空に消え | 始 | ||
少しづつ突く音違ふ紙風船 | 千嘉子 | ||
息入れて五色点るや紙風船 | 貴美 | ||
百歳へ向かふ親父の朝寝かな | 千年 | ||
牧場や朝寝の窓を射る光 | 瑛子 | ||
かけ直す目覚まし時計朝寝かな | うらら | ||
カーテンに頬撫でられし朝寝かな | くにお | ||
朝寝して世の平穏を願ふ日々 | 千寿 | ||
あと五分五分五分の朝寝かな | ふみ子 |
☆ 根本梨花選 ☆
水切りの石のごと飛び囀りぬ | 千年 | ||
囀りや三つ重なる祝ひ事 | つゆ草 | ||
囀や古文書解読遅々として | ひろし | ||
さへづりや句帳の中の二十年 | 紅舟 | ||
囀りや立ち座りして絹縫ふ日 | 月子 | ||
囀りや息子の力目覚めさせ | 静枝 | ||
囀りやこの子全身耳になる | 瑛子 | ||
囀や空より降れる四分音符 | 啓子 | ||
囀りの中や登校肩並べ | 窓花 | ||
囀や新教材の待ち遠し | 糀 | ||
囀や園児の列とすれ違ふ | 千寿 | ||
囀りや障子細目に垣間見を | 美雪 | ||
囀や芭蕉の山河辿る旅 | 悠 | ||
横断歩道を風せん走る風くぐり | 紅舟 | ||
ピエロより貰ふ風船今日開店 | 月子 | ||
風船で夢を放ちて幾年月 | 静枝 | ||
顔映る車窓にバルーン飛んでくる | 和子 | ||
風船にずつと手を振る男の子 | うらら | ||
風船やまた子育てをしてみたし | 海紅 | ||
祖父の膝薬屋さんの紙風船 | 光江 | ||
友達になつて風船分け合へり | 真美 | ||
毒消し売りのよもやま話紙風船 | ひぐらし | ||
パステルのバルーンアーチくぐり抜け | 糀 | ||
少しづつ突く音違ふ紙風船 | 千嘉子 | ||
息入れて五色点るや紙風船 | 貴美 | ||
自転車で来た薬売り紙風船 | 悠 | ||
百歳へ向かふ親父の朝寝かな | 千年 | ||
朝寝して主居ぬ部屋に風入れる | 美知子 | ||
大人(たいじん)になりたる思ひ朝寝して | ひろし | ||
航海終へし港にて朝寝かな | 由美 | ||
休校はコロナで貰ひ朝寝する | 和子 | ||
かけ直す目覚まし時計朝寝かな | うらら | ||
朝寝して職場の夢も見ずなりぬ | 海紅 | ||
休校の要請受けて朝寝かな | 窓花 | ||
約束の午後に間に合ふ朝寝かな | しのぶこ | ||
ごみ出しの大役果たし朝寝かな | ひぐらし | ||
あと五分五分五分の朝寝かな | ふみ子 | ||
定年の嬉し寂しき朝寝かな | 悠 | ||
ウイルスよ鎮まれかしと名残雪 | 笙 |
☆ 互選結果 ☆
9 | 囀りや筆なめらかに朱印帳 | 和子 | |
6 | 風船の迷ひは空の広さなり | しのぶこ | |
6 | 百歳へ向かふ親父の朝寝かな | 千年 | |
6 | 定年の嬉し寂しき朝寝かな | 悠 | |
5 | 囀や芭蕉の山河辿る旅 | 悠 | |
5 | 少しづつ突く音違ふ紙風船 | 千嘉子 | |
5 | 朝寝して懐かしき夢終はりまで | 千嘉子 | |
5 | あと五分五分五分の朝寝かな | ふみ子 | |
4 | 囀りや三つ重なる祝ひ事 | つゆ草 | |
4 | 囀りや立ち座りして絹縫ふ日 | 月子 | |
4 | 囀りやバドミントンの羽根高し | ふみ子 | |
4 | 風船にずつと手を振る男の子 | うらら | |
4 | 風船やまた子育てをしてみたし | 海紅 | |
4 | ごみ出しの大役果たし朝寝かな | ひぐらし | |
3 | 水切りの石のごと飛び囀りぬ | 千年 | |
3 | 囀りや信濃の谷の明けゆきぬ | 由美 | |
3 | 囀りやこの子全身耳になる | 瑛子 | |
3 | 囀や蒔絵の椀の箸休め | 奈津美 | |
3 | 囀や空より降れる四分音符 | 啓子 | |
3 | 囀りやおにぎり三つ平らげる | しのぶこ | |
3 | 囀や新教材の待ち遠し | 糀 | |
3 | 囀の木々ランナーの足軽し | 始 | |
3 | 紙風船ついて子供になつてみる | 美知子 | |
3 | 風船にため息つめてポオンポン | ふみ子 | |
3 | 約束の午後に間に合ふ朝寝かな | しのぶこ | |
2 | 囀や古文書解読遅々として | ひろし | |
2 | さへづりや句帳の中の二十年 | 紅舟 | |
2 | 囀りや断捨離前の深呼吸 | 馨子 | |
2 | 囀や園児の列とすれ違ふ | 千寿 | |
2 | 囀りや障子細目に垣間見を | 美雪 | |
2 | 読みさして気付く囀り頻りなり | 泰司 | |
2 | 持たされて風船一つ持ち疲れ | ひろし | |
2 | ピエロより貰ふ風船今日開店 | 月子 | |
2 | 縁側をころんころんと紙風船 | 奈津美 | |
2 | 風船のするりと逃げてそれつきり | 啓子 | |
2 | 毒消し売りのよもやま話紙風船 | ひぐらし | |
2 | 朝寝してトーストにバターマーマレイド | 月子 | |
2 | 肉球に頬をはたかれ朝寝かな | 奈津美 | |
2 | 遠近の音を遣り過ごし朝寝かな | 喜美子 | |
2 | 大朝寝覚めて緊急事態とや | 啓子 | |
2 | カーテンに頬撫でられし朝寝かな | くにお | |
1 | さへづりや円を描ひて雨上がり | 美知子 | |
1 | 囀りや息子の力目覚めさせ | 静枝 | |
1 | 囀りに足を取られて森に入る | 喜美子 | |
1 | 囀るや見つけてご覧ここよここ | うらら | |
1 | 囀りの中や登校肩並べ | 窓花 | |
1 | 囀やまだコマ付きの自転車で | 真美 | |
1 | 相席の吉田茂似百千鳥 | ひぐらし | |
1 | 囀は静けさの中空の音 | 智子 | |
1 | 梢のゆりかご囀の子守歌 | 梨花 | |
1 | ほどけちやつた風船の紐長い坂 | 瑛子 | |
1 | 風船の走りにまかせみぎひだり | 喜美子 | |
1 | ひいふうみい数へし母や紙風船 | 馨子 | |
1 | 祖父の膝薬屋さんの紙風船 | 光江 | |
1 | 風船を持つ手をひらき青い空 | くにお | |
1 | みどりごと翁の影や紙風船 | 宏美 | |
1 | 息入れて五色点るや紙風船 | 貴美 | |
1 | 朝寝して職場の夢も見ずなりぬ | 海紅 | |
1 | 朝寝して浴衣のままの缶ビール | 糀 | |
1 | 掛布団夢のかたちに朝寝かな | 始 | |
1 | 朝寝して世の平穏を願ふ日々 | 千寿 | |
1 | 休日の朝寝たがひに声掛くる | 泰司 | |
1 | 朝寝せり通りの声に起こさるる | 貴美 | |
1 | 春堤や駆けつこしてる子みなマスク | 笙 | |
1 | ウイルスよ鎮まれかしと名残雪 | 笙 |
☆ 参加者 ☆ <順不同・敬称略>
谷地海紅、市川千年、椎名美知子、三木つゆ草、梅田ひろし、水野紅舟、大江月子、柴田 憲、尾見谷静枝、西野由美、谷地元瑛子、荒井奈津美、礒部和子、尾崎喜美子、佐藤馨子、宇田川うらら、藤井啓子、眞杉窓花、備後春代、青柳光江、内藤邦雄、大石しのぶこ、梶原真美、鈴木香粒、植田ひぐらし、村上智子、根本梨花、丹野宏美、月岡 糀、寺澤 始、髙橋千寿、吉田千嘉子、谷 美雪、山崎右稀、相澤泰司、荻原貴美、平塚ふみ子、加藤 悠、古崎 笙(以上、39名)
<以上取りまとめ、梶原真美>
< 了 >