〈 俳 話 少 々 〉
海紅が教職から解放されたことを好機に、芭蕉会議のホームページがリニューアルされた。それを覗いてくれた友人、吉田千嘉子(「たかんな」主宰)、寺澤始(「未来図」同人)の御両人が参加してくれた。そして、少しでも見込みのある表現を見逃すことなく、たくさん選句してほしいとお願いし、講評もしてもらった。厳選と違うから、文語や文法の視点から、貴重な助言を多く聞くことができた。人生には常に新しい風が吹くことが望ましい。親和と寛容を学ぶために、このような機会がふたたび、みたびと増えてゆくことを夢見ている。<海紅記>
〈 句 会 報 告 〉
一部の作品について、作者の意図をそれない範囲で、表現を改めた句が含まれています。また、今回は制限なく選句をお願いした吉田千嘉子・寺澤始、両氏の選、及び海紅選も全体の点数に含めました。よって厳密な意味での互選結果でないことを御了承ください。<海紅記>
☆ 谷地海紅選 ☆
菜の花やかすかな潮の香の中に | 馨子 | ||
早春の風にまかせて鴨ゆるる | 馨子 | ||
ビル街の漣となる花菜風 | 始 | ||
歌ふかに水仙背中合はせにて | 始 | ||
日だまりに梅ほころびてビルの影 | 邦雄 | ||
甘酒を半分わたす連れ散歩 | 邦雄 | ||
踊り子のしなる指先枝垂梅 | 糀 | ||
実梅より花梅が先浜御殿 | 糀 | ||
みづかきの反転自在春の鴨 | 千嘉子 | ||
老松の気骨見えたり春の園 | つゆ草 | ||
水門の閉まる離宮の春寒し | 真美 | ||
梅の香の一本道に師の佇てり | 梨花 | ||
昔から長湯せぬ癖梅の宿 | 月子 | ||
節分や遠い日の父そして声 | 静枝 | ||
動くとも見えず動きて春の鴨 | ひろし |
☆ 吉田千嘉子選 ☆
草の芽の恥づかしさうに待つ明日 | うらら | ||
浜離宮冴え返る空広やかに | うらら | ||
実梅より花梅が先浜御殿 | 糀 | ||
風光る男松女松の艶姿 | 糀 | ||
佐保姫の来たるや三百年の松 | ひろし | ||
動くとも見えず動きて春の鴨 | ひろし | ||
あはひ 汐入の土の間に草萌ゆる |
喜美子 | ||
喧噪もそしらぬ風に浮寝鳥 | 喜美子 | ||
おだやかに呼び止むる声沈丁花 | しのぶこ | ||
痩せすぎの月浮いてをり春浅し | ふみ子 | ||
昔から長湯せぬ癖梅の宿 | 月子 | ||
菜の花やかすかな潮の香の中に | 馨子 | ||
梅の香の一本道に師の佇てり | 梨花 | ||
節分や遠い日の父そして声 | 静枝 | ||
口の皺集めデコポン食む三時 | 和子 | ||
ビル街の漣となる花菜風 | 始 | ||
木に語るだけ語らせて春の風 | 海紅 |
☆ 寺澤始選 ☆
スイッチの入る立春句帳買ふ | つゆ草 | ||
老松の気骨見えたり春の園 | つゆ草 | ||
みづかきの反転自在春の鴨 | 千嘉子 | ||
水門の閉まる離宮の春寒し | 真美 | ||
踊り子のしなる指先枝垂梅 | 糀 | ||
梅の香の一本道に師の佇てり | 梨花 | ||
菜の花やかすかな潮の香の中に | 馨子 | ||
手作りの沢庵今日も膳にのる | 右稀 | ||
昔から長湯せぬ癖梅の宿 | 月子 | ||
草の芽の恥づかしさうに待つ明日 | うらら | ||
動くとも見えず動きて春の鴨 | ひろし | ||
おだやかに呼び止むる声沈丁花 | しのぶこ | ||
痩せすぎの月浮いてをり春浅し | ふみ子 | ||
春浅し不協和音の朝支度 | 窓花 | ||
剪定の枝先哀し梅の花 | うらら | ||
金黒羽白光の水の目をひらく | 梨花 | ||
山茶花の散りて又咲く紅の列 | 静枝 | ||
大寒や骨にひび入り眠りたる | 由美 | ||
菜の花の隣は鳥の菜の畑 | 香粒 | ||
改元の苔まとふ梅背の低し | 月子 | ||
狩場跡ふくら雀の忙しなし | 香粒 | ||
初めての口紅色に梅ひらく | 梨花 | ||
一本丸ごと大根煮て下戸の食ふ | 紅舟 | ||
風光る木々それぞれの影淡く | 千嘉子 | ||
鉢植えの土を入れ替へ春立ちぬ | 真美 | ||
水仙の奏づるごとき風の音 | 智子 | ||
夢に追ふ道はひとすぢ薄霞 | 笙 |
☆ 互選結果 ☆
6 | 老松の気骨見えたり春の園 | つゆ草 | |
6 | 動くとも見えず動きて春の鴨 | ひろし | |
5 | 菜の花やかすかな潮の香の中に | 馨子 | |
5 | 梅の香の一本道に師の佇てり | 梨花 | |
5 | 水仙の奏づるごとき風の音 | 智子 | |
4 | ビル街の漣となる花菜風 | 始 | |
4 | 風光る木々それぞれの影淡く | 千嘉子 | |
3 | 草の芽の恥づかしさうに待つ明日 | うらら | |
3 | 水門の閉まる離宮の春寒し | 真美 | |
3 | 金黒羽白光の水の目をひらく | 梨花 | |
3 | 痩せすぎの月浮いてをり春浅し | ふみ子 | |
3 | 風光る男松女松の艶姿 | 糀 | |
3 | 昔から長湯せぬ癖梅の宿 | 月子 | |
3 | 菜の花の隣は鳥の菜の畠 | 香粒 | |
3 | 改元の苔まとふ梅背の低し | 月子 | |
3 | 初めての口紅色に梅ひらく | 梨花 | |
3 | 早春の風にまかせて鴨ゆるる | 馨子 | |
3 | 節分や遠い日の父そして声 | 静枝 | |
3 | 紅梅の空白梅の空蒼し | 千嘉子 | |
3 | 喧噪もそしらぬ風に浮寝鳥 | 喜美子 | |
2 | むら雀見習ひもゐて狩場跡 | 香粒 | |
2 | スイッチの入る立春句帳買ふ | つゆ草 | |
2 | 踊り子のしなる指先枝垂梅 | 糀 | |
2 | みづかきの反転自在春の鴨 | 千嘉子 | |
2 | 山茶花の散りて又咲く紅の列 | 静枝 | |
2 | 陽だまりに梅ほころびてビルの影 | 邦雄 | |
2 | 木に語るだけ語らせて春の風 | 海紅 | |
2 | ただひとり独り籠りて寒ざらひ | 窓花 | |
2 | 庭園に入れば春風おとなしき | 海紅 | |
2 | 佐保姫の来たるや三百年の松 | ひろし | |
2 | おだやかに呼び止める声沈丁花 | しのぶこ | |
1 | 手作りの沢庵今日も膳にのる | 右稀 | |
1 | 剪定の枝先哀し梅の花 | うらら | |
1 | 朝支度不協和音の春浅し | 窓花 | |
1 | 清らかな紅白梅も青空も | 智子 | |
1 | 春の陽やすずめ木かげでかくれんぼ | 邦雄 | |
1 | 歌ふかに水仙背中合はせにて | 始 | |
1 | 大寒や骨にひび入り眠りたる | 由美 | |
1 | 白梅に己の潔さ問うてみる | 始 | |
1 | 狩場跡ふくら雀の忙しなし | 香粒 | |
1 | 一日の隅に飾らる花すみれ | しのぶこ | |
1 | 実梅より花梅が先浜御殿 | 糀 | |
1 | 一本丸ごと大根煮て下戸の食ふ | 紅舟 | |
1 | 浜離宮冴え返る空広やかに | うらら | |
1 | 梅が香は風音に消ゆ浜離宮 | ふみ子 | |
1 | その姿立ち去り難く枝垂れ梅 | 馨子 | |
1 | 甘酒を半分わたす連散歩 | 邦雄 | |
1 | 口の皺集めデコポン食む三時 | 和子 | |
1 | この先は入るべからず夜の梅 | ふみ子 | |
1 | 鉢植えの土を入れ替へ春立ちぬ | 真美 | |
1 | ひと枝に思ひのままや紅白梅 | つゆ草 | |
1 | あはひ 汐入の土の間に草萌ゆる |
喜美子 | |
1 | 夢に追ふ道はひとすぢ薄霞 | 笙 |
☆ 参加者 ☆ <順不同・敬称略>(以上、16名)
谷地海紅、鈴木香粒、大石しのぶこ、吉田千嘉子、水野ムーミン(改め、紅舟)、内藤邦雄、三木つゆ草、大江月子、宇田川うらら、佐藤馨子、寺澤始、尾見谷静枝、根本梨花、平塚ふみ子、月岡糀、梶原真美
☆ 欠席投句者 ☆ <順不同・敬称略>(以上、8名)
礒部和子、梅田ひろし、尾崎喜美子、西野由美、古崎笙、眞杉窓花、村上智子、山崎右稀
<以上取りまとめ、梶原真美>
< 了 >