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参考資料室

『季語の研究』―「雨」によって日本人の四季観をみる―   中 里 郁 恵

第五章 まとめ

 「季語」について調べていくと、俳句というものの奥深さを感じさせられた。
「季語」は「連歌・俳諧・俳句で季を具体的に表す言葉」としてうまれ、古くは『万葉集』までさかのぼることを知った。さらに、連歌から俳諧、そして俳句が行われるようになって、「季語」の種類も増えたのである。連句によって決められた定座の花や月、「題詠」として出され、詠みこまれた「季語」、その中の伝統の季題を「縦の題」といい、俳諧で新しく作られたものを「横の題」といった。そういったことを調べていくうちに、「季語」というものの難しさを改めて理解した。
次に、「無季俳句」というものに直面した。これは、人によってさまざまだが、無季派の人はもちろん、有季派の人でも「季語」を論ずるときに「無季」について述べている。ここでわかったことは、「季語」にはしっかりとした定義がないということである。無季の論文でも有季の論文でも、「季語は俳句をつくるうえでの約束の一つ」という表現がされている。しかし、この「約束」を簡単に破っていいのだろうか。ということが私の結論である。むしろ、無季派の人は「季語」の重要性を理解しているからこそ、それに反発し、「季語」よりも素晴らしい新しいものを発見したいという好奇心から、無季俳句をつくりだしているのではないかと私は思う。
最後に「雨」の「季語」を調べた。いつも何気なく見ている「雨」が「季語」を調べることによって、たくさんの表情があることがわかった。また、「雨」は季節によってさまざまな変化があり、それに気づいた日本人の豊かな感性と表現力を感じることができた。それと同時に、「雨」が使われている季語、「雨」が表現されている季語が、私が思っていたより多かったことに驚かされたのである。「雨」というものは、人が生活していくためにはなくてはならないものである。だからこそ、「雨」の特徴や、季節での変化に敏感になり、さまざまな「雨」を表現する「季語」が生み出されていったのではないのだろうか。生活に欠かせない、「雨」は季節によってさまざまな表情を私たちに見せてくれる。それを感じて、たくさんの季語が生まれたのだろう。
 


おわりに
 
  私は大学で、日本の文化について学びたかった。その中で私は、俳句が、短い詩の中にたくさんの気持ちが込められている、というところに興味を魅かれた。さらにその中で「季語」に興味を持ち、日本人の豊かな感受性を学んでいきたいと考えた。
  「季語」について調べていくうちに、和歌や連歌、俳諧についても少し触れることができた。そこから生まれた「季語」は現在の私たちまで引き継がれている。そう考えると、古くから日本人の持つ風情が感じられる。
「季語」によって、日本文化と四季に大きな関わりがあることに気がついた。そして、一つの景物からさまざまな表現があることを知ったのである。そこで私は、現在も昔も、私たちの生活に馴染みの深い「雨」について調べてみたいと考えたのである。
「雨」は調べていくうちに、奥深い情趣があることに気づいた。そして、「雨」のつく季語はたくさん存在し、季節によって表現の仕方が変わってくることがおもしろいと感じた。また、同じ「季語」でも、「春〜」や「秋の〜」などをつけることで、それぞれの季節の「雨」の印象に特色を与えているのである。
私はまだまだ日本文化についての知識は浅いが、この経験から、さらに日本文化に触れてみたいと感じるようになった。色とりどりの四季を持つ日本の文化を、これからも調べていきたいと感じている。そして、自分の引き出しをさらにずっと増やしていきたいと考えている。

 (注)漢字によっては、字体の違いで出てこないものもあり、資料とは異なる現在の字体を使っている漢字がいくつかあります。


先行論文一覧

『國文學―解釈と教材の研究―』「季語の行方」特集・俳句の争点ノート 宇多喜代子
學燈社 平成十三年七月号
『國文學―解釈と教材の研究―』《俳句レッスン》特集・俳句の争点ノート 坪内稔典
學燈社 平成十三年七月号
『俳句講座9 研究』 明治書院 昭和三四年
『俳句研究』「季語の断面? 氷・水」宮脇真彦 富士見書房 平成十三年十二月号

参考文献一覧

『俳文学大辞典』尾形仂・草間時彦・島津忠夫・大岡信・森川昭 角川書店 平成七年
『日本国語大辞典』第二巻 第三巻 第八巻 小学館 昭和五六年五月
『図説 大歳時記 春』角川書店 昭和三九年
『図説 大歳時記 夏』角川書店 昭和三九年
『図説 大歳時記 秋』角川書店 昭和三九年
『図説 大歳時記 冬』角川書店 昭和四〇年
『基本季語五〇〇選』山本健吉 講談社学術文庫 平成元年
『合本 俳句歳時記 第三版』角川書店 平成九年
『カラー図説 日本大歳時記 秋』講談社 昭和五六年
『カラー図説 日本大歳時記 冬』講談社 昭和五六年
『大歳時記 第一巻 句歌春夏』集英社 平成元年
『連句の世界』佐藤勝明・竹下義人・谷地快一・宮脇真彦 新典社 平成九年
『新日本古典文学大系 竹林抄』島津忠夫他 岩波書店 平成三年
『新日本古典文学大系 初期俳諧集』森川昭他 岩波書店 平成三年
『新日本古典文学大系 芭蕉七部集』白川悌三・上野洋三 岩波書店 平成二年
『新日本古典文学大系 元禄俳諧集』大内初夫他 岩波書店 平成六年
『新日本古典文学大系 江戸座点取俳諧集』鈴木勝忠他 岩波書店 平成五年
『日本俳書体系』勝峰晋風他編 日本俳書体系刊行会 大正十五年〜昭和三年
『校註俳文学体系』大鳳閣書房 昭和四年〜五年
『古典俳文学大系』集英社 昭和四六年〜四七年
『近世前期歳時記十三種本文集成並びに総合索引』尾形仂・小林祥次郎 勉誠社 
昭和五六年
『校注俳諧御傘』(正・索引篇)赤羽学 福武書店 昭和五五年〜五八年