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おうた子に髪なぶらるゝ暑さかな
園女(陸奥鵆)

句意は「ただでさえ暑いのに、おんぶしている子供が髪の毛をいじるものだから一層暑さを感じるよ」

子育てや台所仕事に追われ、少し気分がいらだっている母親の気持ちが素直に伝わってくる。一方で子供へのいとおしさも感じさせてくれるのがこの句のいいところ。
最近私の近辺では子を「おんぶ」している母親を見かけなくなった。「抱っこ」もたまには見るがほとんどはベビーカー。私などにはまだ実感のあるこの句も、これからは過去の生活習慣を残す貴重な句として生き残っていくのかもしれない。

実は園女の子供については辞典にも解説書のどこにも記述がない。過去に発表された園女の年譜で一番詳しいと思われる「斯波園女年譜」(『国文学研究16』野村富美子)にも記述はなかった。単に伝わっていないだけなのか。
園女には20代後半と推定される句に「衣更わざと隣の子をだきに」というのがある。掲出句も、もし隣の子ならかなり句のニュアンスが違ってくるかもしれないが、多分考えすぎであろう。

(文) 安居正浩
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