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風呂敷に落ちよつゝまむ鳴く雲雀
惟然(鳥の道)

「周防路を過ぐるとて」の前書きがある。

句意は「空に鳴いている雲雀よ。ここに落ちておいで。風呂敷に包んであげるから」
風呂敷に包むとは言っているが、この句には捕らえようという感じは一切ない。一緒に旅でもしようよという感じか。なんとも微笑ましく雲雀への愛情も一杯である。前書きにあるように周防路(今の山口県)の旅にいる作者。のんびり歩く惟然の姿が見える。
雲雀の一気におりる習性に目をつけた遊び心のある楽しい句にしあげた。

この句『惟然坊句集』では「風呂敷へ落ちよつゝまむ舞雲雀」とあるが、「落ちよ」と「舞」が邪魔な気がするので、私は掲出句の方が好きだ。
惟然はこじき坊主同然で恵まれた生活ではなかったが、心は自在であったらしい。

小動物へのあたたかい眼差しは、現代でも作品として鑑賞者の共感を得やすい。ただ多くの人に受け入れられるためには、惟然のように「風呂敷につつむ」といった個性的な詠みが必要になるだろう。

(文) 安居正浩
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