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無き人の小袖も今や土用干
芭蕉(猿蓑)

前書きに「千子が身まかりけるをきゝて、みのゝ国より去來がもとへ、申つかはし侍ける」とある。

句意は「亡くなった人の小袖も今頃は虫干しされているのでしょうか。またお嘆きがひときわ深まったことと思います」

前書きにあるように、去来の妹千子(ちね)が早逝したことを聞いた芭蕉が、落胆しているであろう去来のことを気遣って送った句。芭蕉は去来と千子の『伊勢紀行』に跋文と句を贈ったことがある。
『去来抄』にはこの句について「その事をいとなむたゞ中に來れり」とあり、たまたま土用干の最中に句が届いたという。
芭蕉の細やかな心使いが感じられる句であり、去来はこの一句で一層芭蕉に心酔したに違いない。

(文) 安居正浩
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