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夕顔や酔てかほ出す窓の穴
芭蕉(続猿蓑)

句意は「夕顔が咲いている。私は酔って窓の穴から顔を出しているよ」。
芭蕉にもこんなひょうきんな面があったかと驚かされた句。はかなげなイメージの夕顔と中七・下五の俗な取合せが面白い。芭蕉の元禄六年白雪宛書簡に上五が「夕顔に」で出ているせいか、顔をのぞかせて夕顔を見ているという解釈が一般的なようだ。ただ掲句は「夕顔や」で切れているので、もっと他のものを見ていたと思う方が楽しい。気持ちよく酔って、夕焼けの町の景色を見ていただけなのか、それとも家の前を通っていく美しい女人に目を奪われていたのか。想像は広がる。

この句を読んだ時、一瞬「窓」という言葉が江戸時代に有ったのかと思ったのだが、既に『万葉集』に「窓越に月おし照りてあしひきのあらし吹く夜は君をしそ思ふ」という歌があるのだそうだ(『窓のはなし』日向進著)。学ぶことは尽きない。                                              

(文) 安居正浩
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