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鷹一つ見付てうれしいらご崎
芭蕉(笈の小文)

句意は「気持ちよく海の広がる伊良湖岬で鷹を一羽見つけた。何と嬉しいことだ。」
句の「うれし」には最愛の弟子杜国に出会えたこと、翌年二人での旅が約束出来たこと、また西行が詠んだ鷹に会えたことなどの喜びが背景にあると思われるが、それがなくても単に「鷹」を見つけたうれしさとして読んでも素直ないい句である。
俳句の先輩から「うれしい」とか「悲しい」とか生の感情表現は出来るだけ避け、他の表現で気持ちを表すようにせよと教えられることが多い。しかしこの句を読むとうれしい時は「うれし」と素直に詠んだ方がいい場合があることを教えられる。言葉は使い方で生きる時も死ぬ時もある。「鷹一つ」の句を読んでそんなことを考えた。

(文) 安居正浩
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